松田軽太の「一人情シスのすゝめ」#18:悩める情シスこそ一度職場環境を振り返ってみよう

松田軽太の「一人情シスのすゝめ」、タイトルだけ見ると一人情シスを推奨しているように思われるかも知れませんが、思いはまったくの”逆”。様々な事情によりやむなく”一人情シスや専任情シス不在”という状況になってしまっても頑張っていらっしゃる皆様のお役に立つような記事をお届けしたいと思っております。

今回は、『悩める情シスさんの働く環境について』についてのお話です。

Twitterを見ていると情シス残酷物語のようなエピソードが流れてくることがあります。

たとえば、下記のmomoさん。
彼女が綴ったnoteのエピソードを読んだら、あまりのヒドい環境に驚きを禁じえませんでした。

これはもはや過酷は通り越して、残酷としか言いようがありません。

なぜ、このような理不尽な働き方を強要されなければならないのでしょうか?

 

他の情シスがどんな働き方をしてるのか知らない

情シス、一般的にその業務範囲は会社によって様々であり、往々にして仕事に忙殺されがちである。
そんな状況であるからこそ『自分の職場環境が異常であることに気がつけない』ということもあると思います。
特にお一人様な情シス状態であれば、他の職場との比較がすることができないので、今の環境を客観視できません。

たとえば、最近ではITベンダーから非IT系の事業会社の情シスに転職される人も増えていると言います。
近年、大企業ではDXが盛り上がりを見せており、ソフトウェアファーストな時代になりつつあるという認識も浸透しているのか、IT人材の需要が高まっています。
IPAの調査(IPA:デジタル時代のスキル変革等に関する調査報告)によれば、DXで成果が出ていないと自己認識している企業(事業会社)では、IT人材が「大幅に不足している」という回答が52.9%と人材不足感が強く現れていますが、一方で「採用したい人のスペックを明確にできない」という回答も33.5%と、DXで成果がでている企業に比べて多いことが分かっています。
このような背景もあり、今、IT人材が必要とされているのです。

ITベンダーからの転職であれば、いろんな会社への常駐派遣を経験されていたり、そもそも企業側の情シスと渡り合ってきたという人も多いでしょうから、他の職場と自分の職場の良い点、悪い点を比較することもできます。

しかし、多くの中小企業では「あー、そうそう。君、パソコンが得意だったな。ちょうど良いからウチの情シスをやってくれ」といった軽い感じで依頼されたりするのではないでしょうか?
総じてそういう会社でのIT部門の扱いは低くなりがちです。なぜなら「情シスの価値が分からないから」です。

 

世間の情シスを知るには

では、(お一人様な)情シスが自分の職場と他の職場を比較する方法はないのでしょうか?

このご時世、様々な方法が存在します。

  • ソーシャルメディア
  • セミナー/Webセミナー
  • 情シス関連団体

しかも、コロナ禍の影響もあり、情報収集のほとんどがネット上で完結します。

ソーシャルメディア

ソーシャルメディアには、FacebookやLinkdinなどもありますが、てっとり早いのはTwitterを活用することでしょう。
良いのか悪いのか、Twitterには孤独なひとり情シスがたくさんいて、社外の仲間を求めています。
前述したmomoさんもTwitterで発信したことで救われた…という部分も大きいでしょう。
良い方法ではありませんが、ひとりでいるよりは悩みを吐露することで、少し荷が軽くなるなら良いかも知れません。

しかしながら、ソーシャルメディアの利用には注意が必要です。営業情報や秘密情報の漏洩にならないよう十分に気をつけてください。

セミナー/Webセミナー

ここ最近、IT企業を中心に「情シス」の呼び名が変化しています。とある会社では「コーポレートエンジニア」、はたまた違う会社では「業務ハッカー」などと呼ばれていることも。
基幹システムがオンプレミスからクラウドを使うようになって、ハードウェア管理からソフトウェア管理に業務内容が変化してきたこともあるでしょう。

このような新世代「情シス」とも言われる人たちが集まり、セミナーを開催しています。
connpassやDoorKeeperなどのイベント告知サイトで「情シス」「コーポレートエンジニア」などのキーワードを入力すると見つけられると思います。
ここ最近はコロナ禍の影響か少しセミナーも少なめではありますが、コロナ禍以前はリアルイベントが多かったですが、今は大半がWebinarであり気軽に参加もできるのではないでしょうか。

情シス関連団体

情シス自体がこれまであまり注目される存在ではなかったこともあり、あまり多くはありませんが老舗ともいえる団体が二つあります。

PC・ネットワークの管理・活用を考える会(PCNW)

PC・ネットワークの管理・活用を考える会を略し、「PCNW」と呼ばれています。
日頃から社内のシステム管理に悩みを抱えている情報システム管理者の方を対象とした「情報収集・意見交換」の集いであり、「企業のIT部門の人材を成長させる」場となることを目的に活動を行っています。

年に数回、東京と大阪の二つの会場で、「クライアント管理勉強会」「ITトレンド勉強会」という異なるテーマの勉強会を実施しています。
コロナ禍により、最近はWebinar開催となっている為、以前に増して参加はしやすいと言えるでしょう。

PCNWでは情報システム管理者の日々の課題をテーマに取り上げ、講演者による事例を交えたお話や参加者が抱えている悩みを全員でディスカッションすることで、他社のシステム管理者と悩みを共有したり、解決策を探る、そんなことができる場です。
勉強会参加者にはベテラン管理者もいらっしゃり、”これから”という情シス初級者の方には心強い相談相手が見つかるかも知れません。

また、日々の情シス業務の範囲では、同業他社の状況や事例などを知ることはなかなか難しいと思われますが、勉強会を通じて、情報共有や意見交換を行うこともできるでしょう。

PCNW:https://www.pcnw.gr.jp/index.html

システム管理者の会

日本最大規模のシステム管理者のネットワークである「システム管理者の会」。
企業におけるITの整備が一巡したことで、企業内のITを支えるシステム部門は、コスト削減や効率化だけではなく、ITを使ってビジネスの可能性を広げる役割を担うようになっています。それ故にこれからのシステム管理者には、システムの安定稼働を守るだけではなく、常に新しい技術を学び続け、プロのエンジニアとして企業のビジネスを牽引していくことが求められています。

このシステム管理者の会では、この姿勢を『エンジニア魂』と呼び、エンジニア魂を持つエンジニアの皆様を応援していくことを、新たな指針として掲げています。

PCNWがお悩み解決的な実務ベースの問題解決に主軸を置いているのに対し、このシステム管理者の会ではシステム管理者(情シス)のポジションやキャリアへの道しるべを創造することを目標にしている。その為、システム管理者認定講座を開催し、情シスのスキルアップに尽力している。このシステム管理者認定講座ではヒューマンスキルの側面とテクニカルスキルの側面から、情シスに必要な知識や心構えを身につけてることができるでしょう。

システム管理者の会:https://www.sysadmingroup.jp/

 

このように少し毛色の違う団体ですが、好みに応じて一度覗いてみるのも良いのではないでしょうか?

 

その他の方法は…

その他の方法としてはやはり”本”ではないでしょうか。しかしながら、ただ本を読むのではなく、本の著者のソーシャルメディアを調べてみるのも良いと思います。(本を書くくらいですから、ソーシャルメディアを使っていないとは考えにくいので)
そこをきっかけにするのも一つの方法ではないでしょうか。

情シス(特にお一人様)について書かれた本は数多くはありませんが、非常に参考になる本もあります。

 

情シスの相談に乗ってくれる人を探す

Twitterには様々な情シスさんのつぶやきがある事はご紹介しましたが、以下の「あーちゃん」さんのアカウントもとても参考になると思います。

あーちゃん自身もITへの理解が全くない昭和マインドな企業でIT導入に奮闘した経験があるので、ひとりで苦労している情シス担当者の気持ちが理解できるのです。
あーちゃんはそんなひとりぼっちで困っているIT担当者向けに、boshuというサービスを通じて相談に乗ってくれます。
きっと親身になって悩みの解決方法を一緒に考えてくれることでしょう。

ちなみに あーちゃんの奮闘記はこちらで読むことができます。

ITに対する理解がある人材は貴重であることを認識する

中小企業で、不幸にして経営陣がITオンチしか居ない会社だった場合、情シスの地位は低いことが多いです。

だから「お前らは一銭も稼がないコストセンターだ!」とか「リース料と保守料を垂れ流す金食い虫だ!」と罵られます。これはもはや鉄板の台詞なので、もし、この台詞を言われたら「出た!鉄板!」くらいに思って聞き流すと良いでしょう。

確かにコストセンターなんですけどね、でも経理だって、管理部だって同じコストセンターなんです。実は管理職だって、実務をこなして稼いでくるプレイングマネージャーでなければ、コストセンターと考えて良いかも知れません。
システムを使わない企業など存在しないに等しい現代で、情シスがいなかったらどうなるか考えたらこんなこと言えないと思います。

何故なら、そういう悪口や悪態を日常的に聞いていると、いつしか「自分は無能で役に立たない人間なんだ…」と必要以上に卑下してしまうようになります。(人の心はそんなに強くないのです)

しかし、それは悲しいことです。
そして価値というのは、環境で変わるのです。

もし今の自分の扱いに疑問が湧いたのであれば、一度、Twitterで「#情シス」「#ひとり情シス」という言葉で検索してみると、自分の知らない世界を知るキッカケになると思います。

ネタ系であれば「#情シスを一行でイラつかせる選手権」を見ると「あー、自分の会社と一緒だ」と共感すると思います。

 

なにはともあれ、1人で悩まないことが大事です。
自分の心が壊れてしまう前に、一度外の世界を覗いてみましょう。

 

※本記事は松田軽太様許諾の元、「松田軽太のブロぐる」の記事をベースに再編集しております。


松田軽太(まつだ・けいた)

とある企業に勤務する現役情シス。会社の中では「何をしているのかナゾな職場」でもある情シス業務についてのTipsや基礎知識などを紹介する。

ブログ『松田軽太のブロぐる』を運営。

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