松田軽太の「一人情シスのすゝめ」#2:「脱Excel」に役立つWEBデータベースたち(前編)
松田軽太の「ひとり情シスのすゝめ」は、ひとり情シスを推奨しているのではなく、様々な事情によりやむなく”ひとり情シス/ゼロ情シス”という状況になってしまっても頑張っていらっしゃる皆様のお役に立つような記事をお届けいたします。今回は「脱Excel」に役立つWEBデータベースのご紹介です。
こんにちは! 松田軽太です。
前回「脱Excel」の方法としてWeb DBを紹介しましたが、今回はその続きになります。
Excelといえば。会社のパソコンに必ず入っていて、誰もがノート代わりに使っていますよね?そんな身近なExcelなのですが、Excelでの運用することのデメリットも見えはじめてきたのではないでしょうか。
そもそも脱Excelってなんなの?
様々な用途に使用できる便利なExcelですが、あえて欠点と挙げるとすれば「情報を共有する」部分でしょうか。あれだけ何でもかんでもこなせるスーパー便利なソフトですが、ファイル単位で管理されている為、開いてみないとその中身は確認できませんでした。また、昔は誰かがExcelを開いて入力していると他の人は入力できないといったこともあり、Office365では共同編集という機能も増えています。このように情報共有という部分は残念ながら非常に弱いのが現実です。
またExcelはCampusノートのようにライトに使う分には何も問題がありませんが、今まで見たこともないようなマニアックな関数を使われたり、マクロ記録で書かれた定型処理は、パソコンが変わっただけで動かなくなったりします。
敷居の低さと奥の深さがExcelの魅力かもしれませんが、複雑に作り込まれたExcelは作った人以外は使いこなせないことになり、例えば、人事異動で作業者が変わってしまうと途端に「このExcel、どうやって使うの?」と戸惑うことになったりします。複数のブックからの参照やマクロを使って複雑に作り込まれたExcelがガッツリと業務に組み込まれていて「Excelでの作業ありき」になっている職場では、仕事が引き継げないという事態になるので深刻です。
「特定の誰かにしか使いこなせない」ということを「属人化」と言います。(参考:【情シス豆知識】属人化をやめよう!)
人に仕事がこびりついてしまうことですね。実は多くの会社がこの問題で悩んでいると聞きます。
それが「脱Excel」という言葉を生み出したのです。
困ったExcel”あるある”
Excelを使っていると、誰しも一度はこんな経験をして冷や汗をかいたことがあるんじゃないでしょうか?
・複雑な関数の使い方が分からない
・マクロが動かない/途中で異常終了する
・マクロ記録のVBAコードが読めない
・長年、継ぎ足ししたExcelが巨大化して、ファイルを開くのに5分かかる
・うっかり関数を消してしまった!
・列を増やしたら、今まで動いていたマクロが動かなくなった
こういったトラブルを解決する策の一つにWebデータベースを導入するという選択肢もあるのです。
Webデータベースはネット上にある情報をみんなで参照することで、情報の一元化と共に、利用効率があがるというメリットがあります。
そこで今、気になるWebデータベースを紹介いたします。
脱Excelの筆頭! サイボウズ社『kintone』
<画像出展:kintone HP>
「脱Excel」というとkintoneという名前がよく挙がるのではないでしょうか。これもWebデータベースの一つであり、サイボウズ株式会社が提供する業務アプリ構築クラウドサービスのことです。もちろんパソコンだけでなく、スマホからも使うことができます。
データベースと聞くと身近なものだとマイクロソフト社のAccessを思い浮かべるかもしれませんが、世の中にはAccessと聞くだけで「無理」とか、「何度かチャレンジしたけど自分には難しすぎて使い方が分からなかった」と敬遠されていた方も多いのではないでしょうか?
しかしながら、このkintoneのコンセプトは「誰でも簡単に使える」です。誰でも簡単に使え、自前で業務ツール構築ができるように、多くのサンプルアプリを用意するだけでなく、エクセル/CSVインポート、さらにはパーツ化されたアプリをドラッグ&ドロップで配置するだけでDBの構築を可能としています。
<画像出展:kintone HP>
実際、画面設計においても誰でも使えるくらいに分かりやすい構成になっています。
そうした気配りもkintoneが支持される大きな理由の一つかもしれません。
また、マウス操作で直感的に自社に合ったシステムが作成できる他、豊富なAPIを通じて他システムとの連携も可能としています。
また従来であればJavaScriptなどを使用したカスタマイズが必要となり、やりたくても出来なかった細かいカスタマイズをプログラムを書かずに実現することができる“gusuku Customine(アールスリーインスティテュート)”などのサポート環境があることもkintoneの魅力といえます。
<画像出展:gusuku Customine HPより>
従来のシステム開発にはプログラミングができる社内開発体制(社内SE)か、システムインテグレータ(SIer)への依頼が不可欠でした。しかしながら、kintoneのサービス開始によって、プログラミングスキルに左右されず「業務システムを自分で作る」ということが可能になったのは大きな変化といえます。
kintoneは2011年からサービスが開始されたまだまだ若いサービスです。
しかしながら、カスタマイズが容易で「痒い所に手が届く」サービスだからなのか、既に導入企業は1万社を超えています。導入数が多いということは「自分でも使えるんじゃないか」と感じるところがあるからでしょう。
それでも、自分で作ることにはわからないことも不安もあるでしょう。最近の流行りですが、kintoneでも“kintone hive”と呼ばれるユーザー参加型のイベントも多く開催されています。
Tips:What’s kintone hive?(キントーンハイブとは?)
日頃から業務の中でkintoneを活用しているユーザーが一堂に会し、業務改善プロジェクト成功の秘訣や活用のコツをそれぞれの視点で解説。
これまでに100社以上の企業が登壇し、貴重なノウハウやアイデアを交換するリアルイベント。
kintone利用者であればどなたでもご参加可能。
こうした場で成功ユーザーの事例を聞くことで「あ!このネタ、会社で使ってみよう」というアイディアが沸いたりします。
サイボウズ社は「日本の企業の働き方改革を支援する」ということを使命としています。そのためのツールがサイボウズofficeというグループウェアであり、kintoneなのです。
URL https://kintone.cybozu.co.jp
まとめ
kintoneのヒットをきっかけに沢山のWebデータベースサービスが提供されています。Excelの良さは個人レベルでの作業では今後も変わらず大いに貢献することでしょう。しかしながら、これからはより一層のグループワークが求められます。働き方改革などもあり、テレワーク/リモートワークなどその場にいない状態でも効率を落とさないグループワークをする為にはExcelでは足りないところもあるのです。
Excel運用を続けてきて、急に別のシステムに乗り換えるのが運用面でのリスクになる可能性もあります。そんな際には、インターフェースがExcelライクなサービスを使って、利用者の心のハードルを下げることも必要でしょう。
後編はkintone以外のWebデータサービスについて、ご紹介いたします。
※本記事は松田軽太様了承のもと「松田軽太のブロぐる」の記事をベースに再編集しております。
松田軽太(まつだ・けいた)
とある企業に勤務する現役情シス。会社の中では「何をしているのかナゾな職場」でもある情シス業務についてのTipsや基礎知識などを紹介する。
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