【国際ドローン展】ドローンで高齢社会を支える三河屋に MIKAWAYA21

  • 2016/4/28
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2016/04/28

MIKAWAYA21のブース

MIKAWAYA21のブース

MIKAWAYA21のブースでは、「ドローンによる宅配サービス」を展示していた。これは同社が手がける「まごころサポート」にドローンを組み込み、省力化を図るというものだ。

既存サービスにドローンを導入

MIKAWAYA21は、全国の新聞販売店を拠点にして、重い荷物の運搬や庭そうじ、買い物代行などを30分500円で行うサービス「まごころサポート」を展開。若い人が少ない過疎地やシニア層から支持されてきた。

「(まごころサポートは)リピート率がとても高いのです。そのため、このサービスだけで、月に200件も受注しているお店もあるくらいです」。鯉渕美穂社長兼COOは、サービス手ごたえについて、こう語る。

MIKAWAYA21の行うサービスは「限界集落」と呼ばれる地域では特にニーズが高いといえる。総務省の調査によると、住民の半数以上が65歳以上の高齢者というこの高齢化集落は、過疎地といわれる約6万5千の集落のうち、1万を超えているからだ。一方で、サービスの母体となっているのは新聞配達所では、あまりに件数が増えてしまうと、本業に支障が出てしまう。そこで着目したのがドローンだった。

「テクノロジーのパワーを使えないか。たとえば買い物代行であれば、ドローンでもできるのではないかと思いました」と、鯉渕社長は説明する。

鯉渕美穂・MIKAWAYA21社長兼COO

鯉渕美穂・MIKAWAYA21社長兼COO

ドローンで何かをしよう、というのではなく、ドローンを組み込むことで既存事業の効率化を図ったのだ。

運用の工夫でリスクを回避する

同社では、すでに徳島県内で「ドローンによる宅配サービス」の実証実験を行っている。新聞販売所から荷物を載せたドローンを飛び立たせ、直線距離で500メートルほど先の畑に着陸させる。徒歩だと10分ほどかかる場所まで、4分程度で到達している。つづら折になった道を行くより、はるかに短時間で届けることができる。

「将来的には、顧客の位置とルートを指定しておいて、自律飛行できるようにしたいと思っています」と鯉渕社長は言う。

これが実現すれば、機能的にはボタン1つで離陸・飛行して、目的地に着地ことができるようになるだろう。一方でドローン宅配が普及すれば、事故や墜落のリスクも増す。この点について、鯉渕社長は次のような考えを示す。

「住民の方が最も気にされるのがそこです。しかし、水路の上など、リスクの少ない航路を設定したり、時間帯によって航路を変えたりするなど運用の工夫次第で、リスクの回避は十分にできると考えています」。

自治体と分担できれば、サービスは成立する

一方で、ドローン宅配を独立したビジネスで展開するつもりはないと鯉渕社長は言う。

「私たちのビジョンはあくまでも、シニアが安心して暮らせる世界を実現することです。そのために『まごころサポート』というサービスがあり、そのツールとしてドローンがあるという位置づけで考えています」。

そのため、サービスに使う機体にも特にこだわりはない。ドローンはハードもソフトも発展途上で、次々に優れたものが登場しているのが現状だ。サービスを開始する際、最適な機体を選べばよいと考えている。

一方で気になるのは、機体の購入・維持管理に関わるコストだ。同社ではドローン宅配そのものの料金を「配送1回あたり500円程度」と考えているという。これはコスト的には見合うものではない。そのため地元自治体とドローンの共有を摸索していると鯉渕社長は言う。

「このドローンにサーモカメラを積めば、災害時の救援活動に使えます。そこで災害用機材として自治体に購入していただき、宅配の収入を維持管理費に充てるというような分担ができると考えています」(鯉渕社長)。

このサービスが求められる地域は、同時に台風などで小規模な災害が起こりやすい場所でもあるという。こうした災害現場は報道されないことが多い。しかし、日常的に発生している。そんな時に、災害救助活動のサポートとして、ドローンが役立つはずだと鯉渕社長は力を込める。

ドローンが生み出す新たなコミュニケーション

同社では、このドローンの宅配サービスについて2018年をメドに、一部地域で固定ルートの配送を始めることを計画している。

サービス開始まで2年は長い気もするが、地域を選定して地元住民と自治体の理解を得た上で、運用ルールを構築していくには、それくらいの時間が必要だと鯉渕社長は見ている。一方で、サービスが将来的に過疎地などでのコミュニケーションに役立つことを期待している。

「ドローンがコミュニケーションツールになるといいなと思っています。『煮物をたくさん作ったから、○○さんに分けてあげよう』と、ドローンを使ってお裾分けをする。こうしてお互いの関係性が深まれば、安心して暮らせる町に自然となっていくと思います」。

昭和の時代、勝手口から元気にやって来る三河屋さんは、家々をつなぐ橋渡しの役目も果たしていた。MIKAWAYA21は“21世紀の三河屋さん”になれるだろうか。

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