【国際ドローン展】完成度の高い機体で圧倒的存在感 プロドローン

2016/04/27

プロドローンブース

プロドローンのブース

開発から設計、製作、すべてを社内で完結できることがプロドローンの強みだ。顧客ニーズに沿った「一点物」の製作が多いというが、それは高度な技術力の裏付けでもある。また実際の運用で出た課題については、すぐに開発へとフィードバックされる体制が整っており、それが強力でハイスピードな開発のパワーを生み出している。実際、ブースでは完成度の高いドローンを展示。圧倒的な存在感を示していた。

個性豊かなドローンの数々

プロドローンは日本のドローンメーカー。設立は2015年1月と非常に若い会社だ。しかし、その母体は数十年にわたりRCヘリコプター製作に関わっており、ノウハウを十分に蓄積している。このノウハウに加え、高い技術力が同社の強みだ。ドローンメーカーにとって、現在、「物流」と「検査」が旬なテーマになっている。プロドローンでも、そうしたニーズに答えたソリューションを提供している。

 

橋点検用のドローン

橋点検用のドローン

例えば、構造物検査。橋脚のコンクリートにひび割れがないかをチェックするドローンシステムは、すでに他社でも手がけている。しかし、橋の裏側を正確に測定できるドローンはなかった。そこで、開発したのが、「橋の裏に張り付き、移動しながら測定できるドローン」。このドローンは一般的な機体とは異なるフォルムだが、顧客の要求に応えた回答だ。

PD4-AW

PD4-AW

一方、ブースでは着水可能なドローン「PD4-AW」も展示。この機体は小型カメラを搭載しており、水の上に浮かびながら水中撮影を行うことができる。雨天の飛行も可能だ。

PD6B-DC

PD6B-DC

ユニークなものとしては「PD6B-DC」がある。これは「ドローンキャッチャー」という、その名の通りドローンを捕獲するためのドローンだ。地上の監視システムによってエリア内に侵入したドローンを感知したら、それをトリガーにして飛び立ち、ネットを射出してドローンをからめ捕獲する。実用化は間近だという。

ノウハウの蓄積が高速な開発パワーを生み出す

市原和雄・プロドローン常務

市原和雄・プロドローン常務

「我々は『高速回転開発』をスローガンにしています。お客様のニーズに合わせて製品を提供する。実際に運用すると、さまざまな課題が見えてくる。それを設計開発にフィードバックするパイプを太くして、より早く製品に反映されるようにしています」と市原和雄常務は強調する。

プロドローンでは、こうしてより優れたものが次々と生み出し、何度でも磨き上げて、短期間で完成度の高いドローンに仕上げていく。そのため、「プロドローンに相談すれば、なんとかしてくれる」。そう考えて同社を訪れる顧客も少なくないという。

「当社副社長の菅木(菅木紀代一副社長)は、ヘリコプター業界で長く活躍してきて、非常に高い技術とノウハウを持っています。だから、夢物語を現実にするという点では、我々の持っている技術力は世界でもトップクラスにあると自負しています」と市原常務は胸を張る。

また、「ドローンは自動車と同じで、原理も仕組みも簡単です。しかし、『しっかり動いてしっかり止まる』ということは意外と難しい。それが実現できるのは、目に見えないところに(我々の)膨大なノウハウが詰まっているからです」と話す。

秋田県で搬送の実証試験を実施

プロドローンは、2016年に秋田県仙北市で「ドローンによる学校図書輸送」の実証試験を行った。実証試験は仙北市市内の小中学校の蔵書を検索し、貸し借りできるシステムの本の搬送にドローンを使うというものだ。

具体的には、全天候型ドローンに搬送用ボックスと自律飛行可能なオートパイロット機能を装備。そして、このドローンに3冊の図書(総重量は約1kg)を積み、市内の小学校から1.2キロ離れた中学校までを約10分で結ぶ。試験の結果は上々だった。

「実証試験の時には『夢は乗せているけれど、利益は乗せてない』なんて、自分たちでジョークを言っていましたでも、これで利益さえ見込める形にすれば、すぐにでもビジネスとして成立する。それは、一連の物流の動きをこの実験で作れたからです」(市原常務)。

この試験で得られたノウハウ、技術的なフィードバックはとても大きかったと市原常務は言う。その先には「空飛ぶ宅配便」の構想がある。その中核となる機体が、今回、コンセプトモデルとして出展された「PD6B-D DELIX1」だ。

宅配便が空を飛ぶ

PD6B-D DELIX1

PD6B-D DELIX1

「空飛ぶ軽トラみたいなドローンを作りたい」。こうした発想から生まれたのが、この「PD6B-D DELIX1」のコンセプトモックアップだ。

PD6B-D DELIX1は、ボディ内部に最大30キロの荷物を詰めたコンテナを格納できる想定で作られている。コンテナを外すと8つのローターを機体内に収納可能で、複数台を積み重ねて格納することができる。まさに“空飛ぶ宅配便”と呼べるが、実用化に向けては法的整備や地元の理解も必要になる。

「法的な整備については、官民交えての協議会が立ち上がっています。各省庁とも非常に前向きで力が入っており不安はありません」と市原常務は実用化に向けて自信を見せる。

また、地元の理解という点では、「都市部よりも地方のほうが、受け入れられやすい」と市原常務は感じている。都市部は人が多く、支持する意見もあるが、反対意見も強い。だからドローンが普及するまでは、地方で経験を重ねたほうがよいと感じているという。

オフィスや家庭で、ドローンが飛び交う未来

プロドローンにとって、今後の課題は、「機体の安定性と信頼性をさらに高めること」と市原常務は話す。一方で、ほかの企業との協業が有効だという。例えば、「橋の裏側をチェックするドローン」は、パナソニックとの共同開発によるものだ。

「大きいメーカーはエンドユーザーにリーチするチャンネルが多く、ニーズをたくさん吸い上げています。そうした企業と組むことは、我々にとって大きなメリットがあります。開発主体のメーカーは、どうしても営業力が希薄です。こうした動きは今後も進めていきたいと思っています」と、市原常務は説明する。

また、今後については「街中を、ごく普通にドローンが飛び交っている。家庭でもオフィスでも。お昼になると、ドローンがお弁当を届けてくれるような、そんな世界にしたいと思っています」と話した。


プロドローン


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