【国際ドローン展】既存システム+ドローンで可能性を広げる NEC

2016/04/27

NECのブース

NECのブース

PCや通信機器のイメージが強いNEC。一方で、ドローンを使ったビジネスにも精力的だ。同社が現在注力しているのは、自社の特徴と強みを活かした、ドローンを活用した各種システム。顧客の要求に合わせたハードとソフトを開発し、最適なシステムとして構築することで、単体では得られない総合的な価値を提供する。

西沢俊広・NEC パブリックSC統括本部新事業推進部マネージャ

西沢俊広・NEC パブリックSC統括本部新事業推進部マネージャ

今回のドローン展で顕著だが、ドローンメーカー各社は機体だけではなく、「ソリューションの提供」に軸足を移している。NECでもドローンとソフトやシステムなどと組み合わせた提案を行っている。

具体的には、ドローンが空撮や検査などで取得したデータを解析するソフトウェア、最適な機体を手軽に導入できるリースシステム、操縦者の知識と技能向上のためのトレーニングプログラム、万が一の際に役立つドローン保険をパッケージ、あるいは必要なものを合わせて提供という形だ。

あまり知られてはいないかもしれないが、NECは航空関連事業も長く手がけている。同社にとって航空力学を踏まえた機体設計や評価、地上からの管制システムなど、航空事業で蓄積したノウハウを投入するには、ドローンは最適の分野といえる。

大きなニーズが見込める「打音検査システム」

今、NECが力を入れているのがドローンを使って構造物の検査を行う「打音検査システム」だ。橋梁やトンネルなど、構造物の検査には「打音検査」という方法が広く用いられている。これは検査対象を小さなハンマーで叩き、その音によって亀裂や劣化、コンクリートの剥離などをチェックする検査方法だ。

打音検査システム

打音検査システム

ただ、叩いた音だけで判断するのだから、経験を積んだベテランでなくてはできない仕事だ。人間の手と耳を使って行う作業のため、高い場所では足場を組んで作業を行うことになる。これをドローンでやってしまおうというのがこのシステムだ。

まず、垂直方向に屈曲する関節を持ったアームを、ドローンに取りつける。アーム内部には打音検査用のハンマーがセットされている。さらにアームの先端にはマイク、目視点検用のカメラが取りつけられている。点検員は打音の音響データと画像データをチェックして、異常がないかを確認する。

ドローンに打音検査用のハンマーなどが搭載されたアームをセットして検査を行う。

ドローンに打音検査用のハンマーなどが搭載されたアームをセットして検査を行う。

「打音点検ができるドローンというのは、まだほかにはありません。弊社ではハードだけではなく、地上からの機体の制御とデータの収集・記録までを含めたソリューションとして提供することを目指しています」と西沢マネージャは胸を張る。

システムは内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の委託事業として開発に取り組んでいる。機体を製作する自律制御システム研究所や産業技術総合研究所、首都高速道路技術センターと共同作業で推進している。5年計画で進められているこのプロジェクトは、すでにシステムの評価段階に入っており「2019年からの社会実装を目指している」(西沢マネージャ)という。

ドローンの可能性はまだまだ広がる

「すでにあるシステムの中にドローンを組み込み、全体を1つのシステムとしてご提案する。それが弊社ならではの強みだと考えています」と西沢マネージャは説明する。空撮、農薬散布、荷物の運搬……。現状では、それ以外のドローンの用途はなかなか思いつかない。だが「既存のシステムにドローンを組み込む」というNECのような発想を持つことは、ドローンの可能性を大きく広げることになるかもしれない。

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