国内法人におけるAI導入実態調査-MM総研
ⅠCT市場調査コンサルティングのMM総研は、国内企業にWebアンケートを実施し、2020年5月末時点のAI(人工知能)の導入実態をまとめた。IT導入の決裁権者や選定に関与する担当者7,487社の分析結果の概要を公開する。
なお、AIソリューションとは、深層学習や機械学習を伴った画像認識、音声認識、データ予測等の法人向けシステム、ソフトウエア、クラウドサービスの全般を指している。
<サマリー>
■ AI導入済み企業ではAI投資が拡大傾向、2022年度にはIT投資全体の2割に
■ 物流作業・管理の最適化、研究開発力の強化、設計・工程削減などで導入進む
■ 今後の注目は新規ビジネス創出や顧客接点の強化等への活用
調査結果によると7,487社のうち、何らかのAIソリューションを導入している企業(以下、AI導入済み企業)は15.1%(1,135社)、検討企業は15.7%(1,177社)となり、両者を合わせると30.8%(2,312社)となった。AI導入済み企業のIT投資全体に占めるAIソリューションの比率(以下、AI投資比率)は、2019年度は14.2%だった。2020年度以降の計画も合わせて聞いたところ、AI投資は平均約2ポイントずつ増え、2022年度にはほぼ2割となる見込みである(データ1)。
AI導入済み企業では、IT投資におけるAI投資の比率が着実に高まる傾向にあることが明らかとなった。
【データ1】
◆AIの適用業務に課題優先度とのミスマッチ
調査の結果、AIソリューションの適用分野については、課題優先度とのミスマッチが見られたという。
7,487社に対して現在抱えている業務課題を聞いたところ、「新規顧客の獲得」(24.8%)、「販売、営業、マーケティングの強化」(21.6%)、「新しいビジネスの創出」(21.0%)がトップ3であった。しかし、業務課題に感じている回答が多い業務ほどAIの導入が進んでおらず、AI導入率はいずれも1割程度に留まっている。
業務課題別のAI導入状況を見ると、「物流作業・管理の最適化」を課題として挙げた企業の27.7%がAIを導入しており最多だった。続いて「研究開発力の強化」のAI導入率は26.8%、「設計・工程削減」が26.7%となった(データ2)。
コスト削減や業務効率化などバックオフィス的領域へのAI導入が先行し、新規ビジネスの創出や顧客接点の強化などのフロント領域へのAI導入は緒についたばかりという実態が見えてくる。
【データ2】
◆AIベンダー上位にMicrosoftとNTTコミュニケーションズ
業務課題の上位となった「新規顧客の獲得」「販売、営業、マーケティングの強化」「新しいビジネスの創出」の3項目で利用しているAIベンダーを確認したところ、僅差ながらMicrosoftの利用率が高い結果となった(データ3)。
AI導入済み企業のAI選定時の重視ポイントは、「費用」「システム・サービス移行業務の容易さ」「既存システム・サービスとの親和性」が上位だった。Microsoftは、Microsoft Azure上でボットサービスや学習済みAI、カスタムAIなど様々なAIサービスを提供しており、導入企業の目的に応じて使い分けたいというニーズに、Microsoftは品揃えの豊富さで応えていると言える。
また、NTTコミュニケーションズは人材強化のためのAIソリューションを提供するほか、自然言語解析AIエンジン「COTOHA(コトハ)」を活用したコンタクトセンターなどの業務を支援するメニューも整えていることから、そうした点が評価されたものと見られる。
【データ3】
◆「導入効果が分からない」、AI導入に立ちはだかる壁
AIを導入する際に障壁だと感じる点、または導入しない理由は、「導入効果が分からない」(19.0%)が筆頭に上がった(データ4)。業務課題の上位となった「新規顧客の獲得」「販売、営業、マーケティングの強化」「新しいビジネスの創出」の投資対効果が見えにくい分野の導入には二の足を踏んでいることがうかがえる。
企業のAI導入はいまだ啓蒙段階にあると言える。AIベンダーには、導入企業の業務を的確に理解し、課題解決につながるAIソリューションを開発・提案することが求められている。
【データ4】
■調査概要
1. 調査対象:自社ビジネスにおいてAIソリューションを導入または検討している企業
―経営者、経営企画、情報システム、マーケティング・顧客管理、生産、
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進部門担当者
―ITソリューションの導入にあたり決裁や選定に関与する担当者
2. 回答件数:予備調査7,487社、本調査2,000社
3. 調査方法:Webアンケート
4. 調査期間:2020年5月28日~31日
※本調査の詳細については、市場分析レポートとして近日中に発売予定
本レポートは、MM総研様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
ソース:https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=440