クラウド会計ソフトの利用状況調査(2021年4月末)-MM総研

企業では当たり前のように使っている会計ソフトではあるが、それなりに値段が張ることもあり、個人事業主が利用するには割高感もある。
(税理士に毎月依頼するようであれば実はペイできるという話もありますが)
小規模企業者、俗に言う「零細企業」においてもこれは当てはまるかも知れない。

MM総研では個人事業主のクラウド会計ソフトの利用状況を調査しており、情シスの皆さんとも共有しておきたい。

個人事業主のクラウド利用率は26%、前年からの伸びは過去最高に

MM総研は個人事業主を対象にWebアンケート調査を実施。2021年4月末時点のクラウド会計ソフトの利用状況をまとめている。
本調査では2020年(令和2年)分の確定申告を実施した個人事業主(21,810事業者)を対象としている。

調査結果によれば会計ソフトを利用している個人事業主は35.3%であった。
その内、インターネット経由で会計ソフトの機能を利用するクラウド会計ソフトの利用率は26.3%で、前回調査(2020年4月)の21.3%から5.0ポイント増加している(データ1・2)
クラウド利用率の伸びとしては過去最高であり、前回調査で初めて20%に到達したが、そこからさらにクラウド利用が加速している格好だ(データ3)

クラウド会計ソフト市場は、その利便性の高さが広く認知され始め、市場の裾野を着実に広げているが、この市場拡大を後押しするのが政府による行政手続きのデジタル化であると言えよう。
特に、今回の確定申告から青色申告特別控除が65万円から55万円に減額されたが、インターネットで電子申告するなら65万円の控除が適用される。会計ソフト事業者もこの電子申告のメリットを積極的に訴求し、クラウド会計ソフトの拡販とサポートの強化に取り組んだ。
今後も行政手続きのデジタル化が進む見通しであり、クラウド会計ソフト市場の拡大には大きな追い風となるだろう。

クラウド会計ソフトの事業者別シェアでは大手3社による寡占状況が続いている。「弥生」が57.0%、次いで「freee」が20.6%、「マネーフォワード」が14.8%で、上位3社で92.4%を占めている(データ4)

【データ1】会計ソフトの利用率と利用形態


※クラウド会計ソフトとは、インターネット経由で会計ソフトの機能を利用できるソフトのこと。パソコンに会計ソフトをインストールしたもの、会計データのみをインターネット上に保管するソフトは含まない。
<出典:MM総研>

 

クラウド利用率は26.3%に拡大、前年比5ポイント増は過去最高の伸び

多くの個人事業主は1月~12月の1年間の「所得」を確定させ、翌年2月から3月にかけて税務署に「申告」する、いわゆる「確定申告」を行う。サラリーマンであっても給与所得以外の収入がある人は行っていることと思う。
新型コロナウイルスの影響により、今年の申告期限日は当初の3月15日から4月15日に変更された。そのため第9回目となる今回の調査(2021年4月調査)では、2021年2月から4月にかけて確定申告を実施した個人事業主 (21,810事業者)を対象としている。

上記に該当する個人事業主を対象にWebアンケート調査を実施したところ、「会計ソフトを利用している」との回答は35.3%(7,695事業者)となった(データ1)
この会計ソフト利用者に、利用している会計ソフトを確認したところ、パソコンにインストールして利用するPCインストール型の会計ソフト(※会計データのみをクラウド上で保管するものを含む)が61.1%を占めている。
クラウド会計ソフトを利用している個人事業主は26.3%で、2020年4月調査時の21.3%から5.0ポイントの増加(データ2)となった。
クラウド利用率の伸びとしては、これまでの調査の中で最も大きな伸びを示している(データ3)

【データ2】会計ソフトの利用形態


<出典:MM総研>

【データ3】会計ソフトに占めるクラウド会計ソフトの利用率の推移


<出典:MM総研>

一方、「会計ソフトを利用していない」と回答した個人事業主は56.9%(12,420事業者)となった(データ1)
この非利用者に会計ソフトの代わりに利用しているものを確認したところ、「市販の帳簿やノートなどへの手書き」が41.7%、「エクセルなどの表計算ソフトに入力」が35.3%で多く、次いで「税理士や会計事務所への外部委託」が19.1%となっている。

 

トップシェアは「弥生」の57.0%、2位には「freee」が続く

クラウド会計ソフトを利用している個人事業主に、実際に利用しているクラウド会計ソフトを回答してもらったところ、事業者別では「弥生」が57.0%で最も多く、「freee」が20.6%、次いで「マネーフォワード」が14.8%となった(データ4)

トップシェアの「弥生」は前年微増となる57.0%を獲得。調査開始以来、トップシェアを維持しており、個人事業主から安定した評価を獲得している。2位の「freee」は20.6%で、前回調査から0.5ポイント減となったが、ほぼ前年並みのシェアを維持。「マネーフォワード」は2020年4月調査時の16.8%から2.0ポイント減となる14.8%となり、2年連続のシェア低下となった。

【データ4】クラウド会計ソフトの事業者別シェアの推移


<出典:MM総研>

2021年4月調査の上位3社の合計シェアは92.4%。個人事業主におけるクラウド会計ソフト市場は半数以上を占める「弥生」が市場をけん引し、さらに「freee」、「マネーフォワード」などのベンチャー系事業者が加わった上位3社による寡占状態が続いている。
クラウド後発の「弥生」ではあるが、長年培われたその知名度は大きいことが伺える。

 

行政手続きのデジタル化がクラウド利用のメリットを明確化

会計ソフト利用者に占めるクラウド利用率は年々上昇し、今回調査では26.3%にまで拡大している。
前回調査時の21.3%から5ポイント増加しているが、これはクラウド利用率の伸びとしては過去最高の結果となっている。
ここ数年でクラウド会計ソフト市場は、その利便性の高さが広く認知され始め、市場の裾野を着実に広げている。
そして、この市場拡大を後押しするのが政府による行政手続きのデジタル化である。

政府では2019年に成立した「デジタル手続法」に基づき、2024年度中に行政手続きの9割を電子化する方針を掲げ、様々な施策を打ち出している。税務面では今回の青色申告特別控除の制度変更もその一環である。
従来の紙をベースとした申告では、青色申告特別控除の金額が65万円から55万円に減額されるが、インターネット経由で確定申告書を提出する(e-Tax利用)か、もしくは電子帳簿保存に対応したソフトを導入すれば65万円控除の優遇措置を受けられることとなった。
この税制改正は個人事業主に対し、デジタル化のメリットをより明確にしたといえる。
会計ソフト事業者もこの点を積極的に訴求し、電子申告に対応したクラウド会計ソフトの拡販を強化した。こうした一連の動きもあり、クラウド利用率の拡大につながったと見られている。

行政手続きのデジタル化は事業規模の大小にかかわらず、全ての個人事業主にとって対応を迫られるテーマとなっている。
今回の調査結果でも、会計ソフトそのものを利用していない層が全体の56.9%と過半を占めたが、こうした層が今後、会計ソフトの導入に動くことも想定される。
その為、会計ソフト事業者は、期間限定の無料キャンペーンなどを通じ、会計ソフト利用の敷居を下げる取り組みを継続的に行っている。
今回のコロナ禍でも公的支援制度の活用に関する情報提供など、個人事業主を積極的に支援するなかで会計ソフトの利便性の高さを訴求している。こうした取り組みの積み重ねが今後も新規顧客の開拓につながっていくことであろう。

 


■調査概要

1.調査対象:個人事業主/令和2年(2020年)分の確定申告実施者
2.回答件数:21,180件
3.調査方法:Webアンケート
4.調査時期:2021年4月20日~27日

 

■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社。日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀近くにわたって経験と実績を重ねている。
ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供している。


本レポートは、MM総研様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
ソース:https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=490

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