GIGAスクール構想実現に向けたICT環境整備調査-MM総研

ICT市場調査コンサルティングのMM総研は、2020年11月24日から2021年1月27日にかけて「GIGAスクール構想実現に向けたICT環境整備調査」を実施し、その結果をまとめている。
全国1,741すべての自治体を調査対象とし、電話ヒアリングなどを通じて1,512の回答を得た(一部回答を含む)。また調査では、配備する端末の状況、校内無線LAN環境や学校外に接続するインターネット回線の整備状況など34項目について尋ねている。

サマリー
■公立小中学校に配布された「GIGAスクール構想」パソコンで、Google Chrome OS搭載パソコンが43.8%でトップシェア
■自治体の91.2%が校内無線LANを新たに整備、70.1%が学校からインターネットへの接続環境を高速化
■7割の自治体がG SuiteかMicrosft365を活用予定、教育現場でのクラウド活用が進む

 

 

公立小中学校1人1台環境でChrome OSがトップシェアに

調査結果から、端末の調達台数などを回答した1,478自治体が、GIGAスクール構想で調達する端末総数は、748万7402台となった。OS別ではGoogle Chrome OSが327万8110台で最多となり、43.8%のシェアを獲得した(データ1)
1人1台化で普通教室からの無線アクセス整備が必須だが、今回GIGAスクール構想で校内の無線LAN環境を整備した自治体は91.2%(データ2)、また、各学校からインターネットに接続する通信環境を整備、高速化した自治体は70.1%となった(データ3)
個別最適化や協働学習といったGIGAスクール構想がめざす学びにはクラウド活用が重要だが、今回の端末配備に合わせてGoogle、Microsoftが無償で提供しているクラウドサービスのいずれかを利用予定であると回答した自治体は全体の84.7%に達していることも分かった(データ4)


【データ出典:MM総研】

 

1人1台化を考慮した端末選択と校内の無線環境整備が進む

OS、メーカー名(一部未定含む)、台数などについて回答を得た1,478自治体が、小中学校と特別支援学校の児童生徒と教師用に748万7402台の端末を調達済み、もしくは調達中であることが明らかとなった。同自治体の児童生徒数は800万7893人で対人口90%以上の端末を調達していることとなる。
自治体毎にOSの分布を見ると、最も台数の多いGoogle Chrome OSを搭載したChromebookは、特に人口密度の高い都市部での採用が多かった。MM総研が2020年10月に実施したOS評価調査でクラウド活用、配備、運用管理、コスト、セキュリティで好評価だったことを裏付けるように大量展開が必要となる自治体の支持が集まったと分析している。
Microsoft Windowsは逆に地方部の採用が多いという傾向となり、iPadOSは小学校低学年や特別支援学級、特別支援学校などキーボードレスでの入力活用を想定するケースでの採用が多い傾向にある。

児童生徒と教師の1人1台化に伴い、普通教室のネットワーク環境整備にもGIGAスクール予算が活用されているが、2020年度に入り校内無線LAN環境を整備した自治体は91.2%という結果となった(データ2)。他の選択肢としてすべての端末にLTE通信機能を搭載し、携帯電話回線から接続する方法もある。ただ、毎月の通信費用負担は自治体が負担するため、熊本市、調布市など一部の自治体を除き今回の整備では多くの自治体が採用を見送ったもようだ。


【データ出典:MM総研】

 

7割の自治体がインターネット接続を強化、8割以上がクラウド活用へ

次にGIGAスクール構想で調達する端末が校外のインターネットに接続するために新たに通信環境を整備したかを尋ねたところ70.1%の自治体が整備したと回答した(データ3)
70.1%の自治体が、ネット回線を整備したが、更にその内訳を尋ねると「各学校に光回線などを敷設し、インターネットに直接接続する」が新規環境整備の68.9%という結果となっている。逆算すると約半数の自治体が、自ら整備してきた既設のネットワークとは別に、新たな光回線等を用いて直接インターネットに接続する環境を整えつつある。「LTE接続を主力とする」という回答は70.1%の新規環境整備内で1割以下という回答となった。


【データ出典:MM総研】

今回のGIGAスクール構想では、端末とパッケージでGoogle、Microsoftがクラウドサービスを無償で提供している。
主なサービスとしては、端末・アプリ・利用者の一元管理ツール、児童の協働学習支援、教職員向けの研修など多岐にわたっている。
クラウド活用の状況について尋ねるとGoogleの「G Suite for Education」が54.4%、「Microsoft365」が38.4%となり、「どちらも利用しない」は14.8%に留まった(データ4)


【データ出典:MM総研】

 

MM総研執行役員研究部長の中村成希氏によれば、「全国の公立小中学校では2021年4月以降1人1台環境が整うこととなるが、安定的なICT活用や円滑な授業運営など多くの課題が残っており、ベンダーやユーザーコミュニティでの活用サポートが重要となろう。GIGAスクール構想は、端末が配備されて終わりではなく、若い世代の情報リテラシー強化と教育改革が目的であり、日本のデジタル活用の成否を占う重要なプロジェクトとして引き続き注視する必要がある」と述べている。

 

各学校の現場には”情シス”がいるわけでもなく、そのような環境でも数多くの端末をどう管理していくのか、セキュリティ対策を含め課題も多く残っている。

 


■調査概要

1.調査対象:全国自治体1,741の教育委員会(1,740委員会)
2.回答件数:1,512件
3.調査方法:電話による聞き取り、一部e-mailによる調査票の送付・回収を併用
4.調査時期:2020年11月24日~2021年1月27日
5.回答自治体1,512の小中学生数817万人、端末数回答自治体1,478の小中学生数 800万7893人
6.端末の定義:調査対象は、令和2年度以降にGIGAスクール構想のための予算で1人1台化を目的に調達した端末で児童生徒用のほか、予備機や教員の授業用PCも含まれる。

※未回収自治体は、282自治体(教育委員会)で、約140万人の児童生徒数となる。


■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社。
日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねている。ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供する。


本レポートは、MM総研様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
ソース:https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=475

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