小中学校のGIGAスクール端末の利活用動向調査(2021年10月)-MM総研
ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI)は、「全国高校5000校一斉調査」と合わせて2021年10月末時点の「小中学校のGIGAスクール端末の利活用動向調査」と題する調査結果についてもまとめ、発表している。
この調査は、市区町村が設置する教育委員会1,740団体に電話アンケートを実施し、2020年度に小中学生に1人1台整備したGIGAスクール端末の活用状況について尋ね、1,136団体(65%)から回答を得ている。今回は各自治体の教育委員会で、学校の教員などに対して利活用を推進する「指導主事」を主要なヒアリング対象者としている。
結果としてGIGAスクール端末を毎日利用する生徒は2割に留まっており、教員の利活用支援や授業時の通信環境に課題があることが明らかになった。
この記事の目次
授業で1人1台端末を「毎日利用している」生徒は20%
調査結果によると、授業でのGIGAスクール端末の利用頻度について、全校生徒が「毎日活用している」と回答した自治体は307団体で、生徒数ベースでみると、回答を得た自治体の生徒約521万人のうち約102万人(構成比20%)と推測される(データ1)。最も多い回答は、「週に2~3回程度」で40%を占めている。
一方、教育委員会が授業での利用頻度を「把握していない」とする回答が37%にのぼり、利用状況の把握が進んでいないことがうかがえる。
自治体は、端末整備と並行してOS事業者が提供するクラウド導入が進んでいる。
デジタル活用向上を目的とした情報収集のため、端末へのログイン状況をクラウドで自動的に把握するといった機能の利用促進や環境整備を進めていく必要がある。
【データ1】授業における1人1台端末の利用頻度(生徒数ベース、※1)
※1 生徒数ベースの利用頻度は、回答を得た1,136自治体の生徒数(5,206,297人)を分母、各回答をした自治体の生徒数を分子として集計している。
<出典:MM総研>
教員研修の継続実施率は54%にとどまり、自治体の教員支援体制に課題
授業で毎日利用している生徒が20%に留まっていることから、利活用度合いの向上に課題があると想定される。
そこで端末の利用頻度向上に向けた課題の有無を聞くと、「課題あり」が63%、「課題なし」が37%という結果となった(データ2)。
具体的な課題としては「教員のICTスキルに課題がある」が41%、次いで「教員の意識に課題がある」が13%となった。
しかし、今回の調査ではICT活用研修を継続的に実施できている自治体は54%に留まり、まったく実施できていない(検討中、まだ考えていない、必要ない等)と回答する自治体も1割弱あった(データ3)。
民間事業者などが提供する対面・オンラインでの研修や、校務でのデジタル活用など、総合的な対策が必要と考えられる。授業時の端末運用など、困りごとに対応する「ICT支援員」の活用も重要だろう。
MM総研が2021年7月に実施した教育委員会への調査(※2)では、ICT支援員を利用している自治体は59%に留まっている。
※2 MM総研「小中学校GIGAスクール構想に関する基礎自治体調査(2021年7月時点)」
【データ2】授業における1人1台端末の利用頻度向上にむけた課題認識(自治体数ベース)
<出典:MM総研>
【データ3】教員向けの研修実施状況(自治体数ベース)
<出典:MM総研>
通信環境が1人1台端末接続に耐えられない自治体が44%も、改善予算を確保できず
通信環境の整備でも課題が残る結果となっている。授業などでGIGAスクール端末を一斉にインターネット接続する際の通信環境に「課題あり」とする回答が44%となっている(データ4)。
なかでも「特定の人数を超えて一斉に端末を利用すると接続できない、接続しにくくなる」との回答が68%を占めた。
今後さらに授業で端末やインターネット、クラウドの活用を進めるには、安定した通信環境の構築が必要となろう。しかし、こうした課題解決のために予算を確保できている自治体は9%に留まり、予算化を計画している自治体が15%、残る7割以上の自治体は予算化のめどすら立っていない現状が浮き彫りになった(データ5)。
通信環境の改善には、利活用現場とICT整備担当の情報連携が必要と考えられる。しかし、双方の課題認識には温度差があることが伺える。
データ4に示すように今回の指導主事への調査結果と、2021年7月に実施したICT整備担当者を対象にした調査結果(※2)を突合し、分析している。
すると、現場で利活用を推進する指導主事は「課題あり」と考えているが、ICT整備担当者が課題を認識していないという自治体が20%存在する(データ6)。
こうした温度差を無くし、現場の声を環境整備・改善につなげていく取り組みも必要となろう。
【データ4】1人1台端末をすべてインターネット接続していく上での課題認識
<出典:MM総研>
【データ5】学校のインターネット接続環境を改善するための予算の確保状況
<出典:MM総研>
【データ6】1人1台端末をすべてインターネット接続していく上での課題認識
(指導主事とICT整備担当者の認識に相違)
<出典:MM総研>
尚、この調査結果の詳細については、市場分析レポートとして発売される。詳細についてはMM総研までお問合せいただきたい。
■調査概要
- 調査対象:市区町村に設置された教育委員会 1,740団体
- 回答件数:1,136団体(65%)
- 調査方法:電話アンケート
- 調査期間:2021年10月
■編集後記
小学校はまだしも、中学校では部活顧問などの役割も担わなければならず、時間的にも余裕がないのが学校の先生。今時PCやスマホを触ったことがない先生はいないであろうが、ことITインフラや授業支援アプリケーションの活用ともなれば、また話は別であろう。学生時代にでもネットワークやクラウドの管理コンソールなどに触れてきていれば、まだなんとかできるのかもしれないが、それこそ”ボッチ情シス”と同じかもしれない。
また公立であっても、全国で統一されたシステムを使用するわけではないので、JAWSやJBUGのようなユーザー会もできにくいのかもしれない。
頼みの綱はICT支援員の活用であるが、企業にも浸透しつつあるIT BPOを利用するなど、GIGAスクールのことだけでなく、学校のITインフラやシステムを含めて、先生の負担が減るような施策を各教育委員会は考えるべきではないだろうか。
本レポートは、MM総研様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
ソース:https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=517