GIGAスクール構想に関する2万人意識調査~保護者・児童生徒編~-MM総研

ICT市場調査コンサルティングのMM総研(略称MMRI)は、2021年8月時点で国内の小中学校の児童・生徒とその保護者を対象にGIGAスクール構想に関する意識調査を実施。その結果、児童・生徒1万人、その保護者1万人、合計2万人から回答を得ている。(※1)
GIGAスクール構想を受けて2020年度から急速に配備が進んだ「児童・生徒1人1台端末」構想やクラウド活用などの現状を分析している。

 

2021年8月時点で端末配布済みで利用を開始した児童・生徒は63%

児童・生徒に対し学校での端末配布と利用状況について尋ねたところ、「配られており、利用している」が63%という回答結果となった(データ1)。
文部科学省の調べによると、2021年3月末で9割以上の教育委員会が端末納品を終えていると回答しているが(※2)、短期間のうちに利用開始している実態が明らかとなった。

【データ1】端末配布と利用の状況(n=10,000、回答者は児童・生徒)


※調査対象の児童・生徒1万人については、その保護者が同席のもとWebアンケートに回答してもらっている。
<出典:MM総研>

 

保護者の89%、児童・生徒の88%が学校でのICT活用に「賛成」

小中学校での1人1台端末をはじめとするICT環境の活用について、大多数の保護者と児童生徒はともに賛成であった(データ2)。

保護者の場合、回答者の89%が授業での生徒1人1台端末(パソコン・タブレット)とクラウドなどICT活用に賛成と答えた。子供の学年に寄らず同様の回答傾向がみられた。
賛成理由の上位には「将来的に必要とされる一般的なITスキルを習得させたい」「プログラミング等高度なITスキルを習得させたい」といった子供のITスキル向上や、休校時でも学習が継続できる安心感(コロナ対応など)などがあげられた。

児童・生徒の回答でも「授業で端末を使いたい」が88%を占めた。特に、端末を使うことが「楽しい・面白い」という意見や、「インターネットを使える」「すぐに調べられる」といった声が多く聞かれた。

一方で、「端末を授業で使いたくない」との意見は12%。理由は「使い方がわからない」「(操作などが)難しい・慣れない」という習熟度によるものが多い。

また、端末の持ち帰りについても、保護者の81%が賛成、児童・生徒の74%が賛成する結果となった。

【データ2】学校教育における端末やクラウドなどICT活用の賛否


<出典:MM総研>

 

利用シーンは授業から広がりを見せるが持ち帰り率に課題残る

現時点の端末利用シーンは「授業での利用」が最も多く、全回答者の57%を占めた(データ3)。配布済み回答者を分母とすると90%以上が授業での活用を開始していることがわかる。

端末の利用頻度を尋ねると「毎日授業で利用している」と回答した児童・生徒は12%(配布済みを分母とすると19%、以下同じ)で、「1週間に2~3回程度」との回答が27%(43%)と最も多い結果となった。

授業以外の利用シーンでは「家に持ち帰って使う」は28%(44%)、部活や委員会活動など「授業以外のことに学校で使う」が13%(21%)であった。
持ち帰り学習での活用は授業利用の半数に留まっているが、コロナ対策などを意識した学びの機会の確保の観点からも、今後授業以外での活用率の向上が課題となると考えられる。

【データ3】シーン別の利用有無・頻度(各n=10,000、回答者は児童・生徒)


<出典:MM総研>

 

端末利用頻度の高い小中学生ほどデジタル学習の楽しさを“実感”か

児童・生徒の利用頻度と活用意向をクロス集計分析すると、「利用頻度が高い」ことと、「端末活用意向」に関係があることがわかった(データ4)
端末をすでに利用している児童生徒の頻度(毎日、それ以外)と活用意向(4段階尺度)毎の分布を見ると、毎日利用する層はそれ以外の層と比べて、「とても使いたい」との回答比率が1.75倍となっている。持ち帰り学習の実施者内で比較しても同様の傾向となっている。

【データ4】端末の利用頻度と活用意向


<出典:MM総研>

さらに、端末を利用したい理由を自由回答形式で尋ね、「毎日利用している」と答えた児童生徒の理由となるキーワードを抽出した(データ5)。
すると、授業では「楽しい(から)」がトップに、持ち帰り学習では「調べる、調べ」がトップとなった。GIGAスクール構想の狙いのひとつに、情報活用能力の向上があるが、GIGAスクール端末が「調べる」ための学習等で積極的に活用されていることが明らかとなった。

抽出したキーワードの文脈を見ると、授業に対しては「面白い」「わかる」や、ノートをとらず先生の説明や授業に「集中できる」などの回答がみられた。また、パソコンは「キーボードタイピングが面白い」や、「操作が楽しい」「好き」「これからの時代に必要」などの意見がみられた。持ち帰り学習の4位となった「ゲーム感覚の学習」では、ゲーム感覚で宿題ができる、プログラミングでゲームを作りたいといった意見がみられた。

萩生田光一文部科学大臣はGIGAスクール構想を推進するうえで、ICT端末環境の整備を「目的ではなく手段」としたが、ICT環境を積極活用しはじめた小中学生から「授業が楽しい」という意見が上位に挙がったことは評価できよう。
あわせてインターネットの最も典型的な活用法である「調べる」が授業、持ち帰り学習ともに上位にあがったこともGIGAスクールの成果といえよう。

教育ツールの技術革新を通じ、学びの質と機会を向上することがGIGAスクール構想の目玉のひとつ。政府自治体、教員、ICT事業者は子供の活用意欲や習熟を高める活動に活かすことが重要である。
教育現場は、OS事業者が提供する教員研修などを通じて、デジタルへの理解やスキル向上とともに活用事例を共有していくことが大切であり、結果として、これらが技術革新を通じた教育改革の大きな推進力となろう。

【データ5】端末を活用する理由 抽出語Top10(毎日活用する児童生徒)


<出典:MM総研>

 

<サマリー>
■ GIGAスクール学習端末を利用開始した小中学生は2021年8月時点で63%に達し、急速に浸透している実態が明らかに
■ 保護者の89%、児童・生徒(小中学生)の88%が端末活用に「賛成」
■ 自宅などへの「持ち帰り学習」実施率は28%、課外活動などの活用は13%に留まる
■ 端末利用頻度の高い小中学生ほどデジタル学習の楽しさを“実感”か
■ 教育現場はOS事業者の研修等を積極活用し学びの質向上が重要になろう

※1 調査概要

  1. 調査対象:全国の小中学生およびその保護者
  2. 回収件数:小中学生:10,000人、保護者10,000人
  3. 調査方法:Webアンケート
  4. 調査期間:2021年8月2日~2021年8月6日

※2 文部科学省「GIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備(端末)の進捗状況について」


■MM総研について
株式会社MM総研は、ICT分野専門の市場調査コンサルティング会社。
日本におけるデジタル産業の健全な発展と市場拡大を支援することを目的として1996年に設立し、四半世紀にわたって経験と実績を重ねている。
ICT市場の現状と先行きを的確に把握する調査データに加えて、新製品・新サービスを開発するためのコンサルティングサービスも提供する。


本レポートは、MM総研様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
ソース:https://www.m2ri.jp/release/detail.html?id=503

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