国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)動向調査結果-IDC

IT専門調査会社 IDC Japanは、国内企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)動向調査結果を発表。
DXを推進している国内企業は、ビジネス戦略とDX戦略の両戦略の長期的・全体的な連携を強め、業務のあらゆる面においてデジタル技術を活用し変革を進めていることが明らかとなった。

IDCでは、2021年5月に、DXを実施している国内企業で、実際にDXに関わっているマネージャー以上の150人を対象に、DXの戦略、戦術、予算、KPI、課題、組織/文化、IT基盤などを調査している。
これは2019年、2020年に引き続き行われたものであり、調査結果の比較も行っている。

調査レポートによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、DXへの支出/投資は加速しているという結果である。
9割強の企業がDXへの支出/投資について「継続する」とし、うち7割弱の企業が「増加させる」として、平均で24.6%増と回答している。

2021年~2022年のDX支出/投資金額の変化

Note: n = 150
Source: IDC Japan, 8/2021

2021年の国内企業のDXへの取り組み状況については、「DXを企業戦略と全体的・長期的に連携させている企業(DX先進企業)」が前年同調査と比較して4.5ポイント増の56.0%となった。
DXに実際取り組んでいる企業にとって、ビジネス戦略とDX戦略を一致させることを「当然」とする企業が増えているといえる。

そして、そのDX先進企業とDX後進企業(DXを企業戦略と部分的、短期的に連携させている企業)との比較において、DXを実現する際の重要な組織文化の要件について確認したところ、差のある項目としてDX先進企業は「組織全体に渡る新規技術への親しみ」、「従業員にすべての権限を与える」(動機づけ要因)の回答率が高く、一方でDX後進企業は「適切な報酬」(満足度要因)が高い結果となっていた。
このことからDX先進企業は、「全従業員の現場/現物/現実に対するモチベーション」への意識が高いと推察されます。
また、「心理的安全性」への意識では、DX先進企業の約56%がその醸成に取り組んでおり、DX後進企業と比較して15ポイント高い結果になっている。心理的安全性は、既存事業の改革や新規事業の創出等のあらゆる側面で効果に期待のできる組織文化であるため、今後この比率が高まっていくとみており、これができない組織はその将来性を疑う必要があるだろう。

そしてDX推進上の課題としては以下の項目が上位に挙がっていた。

  • 必要なテクノロジーを持った人材の不足
  • リーダーシップの不足
  • 長期的なロードマップや計画が描けない
  • 保守的な組織文化

この結果は、いわゆる「DX人材」が不足しているといわれることにも関係しており、政府を含め業界をあげて対応し始めたところである。
参考までに経済産業省の委託を受けて調査を実施したみずほ情報総研によれば、今後IT市場が年率2~5%で伸びていき労働生産性が年率0.7%で上昇していった場合、2030年にDX人材が54.5万人不足するという調査結果となっている。

その一方で「変革を支援する適切なテクノロジーパートナーが不足」は低い結果となっている。
これらのことからDX推進上の本質的な課題は「社内のビジネスと組織文化に精通したテクノロジー人材の不足」と推察され、まさにDXが進んでいない企業の多くがこれに直面しているのではないだろうか。

DXをビジネスの変革と正しく捉え、「ビジネス戦略とDX戦略の一体化」を図る企業は増加している一方で、一部、「分離(デジタルのサイロ化)」の動きも見られている。
この二極化の動きは、今後、「デジタル資本格差(デジタル技術を活用し情報の価値創造を全体的でスパイラルに行う仕組みの差)」を広げると予測されている。

IDC Japan ITサービス リサーチマネージャーの山口 平八郎氏によれば「国内企業は、既存事業に余力がある今、全社が一丸となってデジタルを駆使し、様変わりする消費者、顧客企業、パートナー、エコシステム、自然環境、地政学的要因などの『外部環境の変化』に意識を向け、新しい現実を洞察し、次の柱となる事業を生み出さなければならない」と分析する。

 

今回の発表はIDCが発行した2021 年 国内企業のデジタルトランスフォーメーション動向調査 にその詳細が報告されている。
本調査レポートでは、上述した国内企業のDX動向調査のより詳しい結果を掲載している。


本レポートは、IDC Japan様のプレスリリースの内容を元に作成しております。

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