【DOCOMO Open House 2018レポート】前編:5G×テックで社会が、ビジネスが、生活が変わる
2018年12月6~7日の二日間、東京ビッグサイトにて「DOCOMO 5G Open House 2018」が開催された。
同展覧会はNTTドコモの研究開発を紹介する「R&D Open House」として2009年にスタート。第5世代移動通信システム「5G」のプレリリースを来年に、商用化を2020年に控え、今回より研究開発に限定せず、さまざまなビジネスソリューションを展示する。会場には、NTTドコモの5Gオープンパートナープログラムの活動などを展示する「5G Solution」、NTTドコモと幅広いパートナー企業との協創でめざす5Gサービス実現に向けたトライアル事例・デモを展示する「5G Experience」はじめ、「AI」「IoT」「デバイス・UI/UX」「ネットワーク」など、計15のテーマが設けられ、200社以上の最新テクノロジーが一堂に介した。
そのほんの一部ではあるが、DOCOMO Open House 2018が映し出す”5G×テクノロジー”の今、そして未来。その魅力をレポートする。
この記事の目次
5G技術検証環境をクラウド経由で提供「ドコモ5Gオープンクラウド」
「5G Solution」エリアでは、「ドコモ5Gオープンクラウド」を活用した「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」参加パートナー企業のソリューションが展示されていた。
まず、ドコモ5Gオープンクラウドの概要から触れておこう。
ドコモ5Gオープンクラウドは、5Gの基地局や移動局が設置され、「4K映像伝送システム」や「高精細VRシステム」などが用意された技術検証環境「ドコモ5GオープンラボTM」とクラウド基盤を直結させたプラットフォームだ。ドコモの持つ画像認識やAIエージェントなどの技術も提供されており、サポート企業の技術との融合によるあらたなソリューション創出の場でもある。これにより、パートナー企業は、クラウド経由で広帯域・大容量・低遅延といった5Gの技術検証を手軽に行いながら、時代に価値のあるサービスを模索できる。
会場では、ドコモ5GオープンラボTMの再現による5G環境が構築されており、リコーによる「5G下での、画像認識AIとマシン制御技術によるデバイスの有効性の実証」や、永和システムマネジメントによる「ARを活用した遠隔地からの作業支援の実証」といった実証実験も公開されていた。
一方の展示では、NTTテクノクロスは、画像認識を活用し、カメラに映った人物の性別や年代、人数などに合わせ映像を表示するデジタルサイネージを。ワコムは、XR空間で3Dデザインの共有・共同制作作業を遠隔拠点間で実現するシステムを展示していた。
加えて、トレンドマイクロはNFV/クラウド環境上にネットワークセキュリティ機能を実装させ、IoTデバイス毎に必要なタイミングで必要なだけセキュリティを適用可能な「TM VNFS」を5G環境で機能させる取り組みを。ソニーは、5Gの高速大容量・低遅延を生かし、外出先でもアップロードした映像をリアルタイムで編集でき、配信できる簡易中継ソリューションを展示していた。
ほかにも数多くの展示があり、見どころが非常に多い。現在、ドコモ5Gオープンパートナープログラムのパートナー企業は1900社にも上るそうだ。
さらに、ドコモによるユニークかつ魅力的な5G普及への取り組みもあった。「クラウドリバース課金」は、いわゆる”ギガ死”を回避させる課金システムだ。特定のサイトの閲覧時に消費する通信料を、ユーザーではなくコンテンツ提供者側に振り分け、負担少なく5Gを利用できる環境の実現に寄与するという。
テレポーテーション、手足になるロボット、名医を生み出す遠隔診療・・・、めくるめく5Gの世界
「5G Experience」エリアでは、来たる未来に向け開発が進むサービスの展示がずらりと並んでいる。
・ドコモ×ANA
ANAの壮大なアバタープロジェクトとして知られる「ANA AVATAR VISION」のプラットフォームとなる「avatar in」。展示では、コンテンツの一つ「IoA仮想テレポーテーション」を使ったデモが紹介されていた。
ANA、凸版印刷、ドコモの共同開発によるIoA仮想テレポーテーションは、遠隔地と分身ロボットをつなぐ技術だ。分身ロボットは、ユーザーの「目」として機能し、その場の映像を5Gがリアルタイムに伝送する。実現すれば、忙しい人や高齢などで遠くに行けない人でも、まるで”瞬間移動”してその場にいるかのように、景色や水族館や美術館の鑑賞ツアーが楽しめるようになる。また、教育の現場にも有効で、机上では得られないリアルな学びを与えられると期待されている。
・ドコモ×トヨタ
続いて、トヨタのブースにあったデモ展示もインパクトが大きかった。遠隔地からの5Gによる制御に成功したトヨタ開発のヒューマノイドロボット「T-HR3」が紹介されるとともに、5Gの特性を感じられるデモ展示が行われていた。
ロボットの制御を支える「力感応型操縦システム」の二つのモジュールは、5Gでつながり、一方のレバーを持ち上げれば同時に隣にあるレバーは自動で下がる。自動のレバーの先のみバネの反動を受けるようになっているが、その押し返されるタイミングで、バネのないはずの手動レバーにも反動を感じる。つまり、遠隔地で生じた外力を肌で感じられるのだ。誤差はまったくなく、力加減の伝わり方も非常にきめ細い。奇妙な感覚を覚えたが、”今ここにないもの”の形や重さをありありと感じられる。それが、5G時代では当たり前になっているかもしれない。情報の伝達やモノの扱いにおける距離の壁をなくす。それが、高速・低遅延といった特性を持つ5Gのイノベーションだといえるだろう。
・ドコモ×東京女子医大
そして、5Gは「医療の現場も変える」。5Gの大容量高速通信を生かした遠隔高度医療「モバイルSCOT」もまさに未来の医療スタイルを感じさせるものだった。
SCOTは、東京女子医大が開発する医療ネットワークシステムの名。さまざまな医療機器をネットワーク化・可視化することで、医療機器のデータや術中画像、患者の生体情報をひとまとめに管理でき、かつ遠隔地の術中サポートも行え、安全・高度な医療を実現する。このネットワークを5Gが支え、移動中でも従来の手術室と変わらない診療環境の実現をめざすのがモバイルSCOTだ。
超高速通信の5G環境が実現すれば、救急車のなかでもネットワークが構築でき、的確な診断・処置を行えるようになる。また、大きな期待を集めるのが「モバイル戦略デスク」だという。経験豊富な医師が遠隔地からいつでもどこでも手術を監視でき、適切な指示も行えることで、経験による治療品質の差を是正することが可能になる。また、医師不足対策やスキルの高品質化・平準化にも寄与するという。
後編に続く−
【執筆:編集Gp 坂本 嶺】