【DOCOMO Open House 2018レポート】後編:5Gだけじゃない、未来はすぐそこに

5Gは、メリットよりもキーワードが先行している印象も受ける。しかし、DOCOMO Open House 2018では、先述のトヨタブース然り、各所に5Gを実際に体験できるデモが複数用意されていて、その魅力を肌で感じることができた。後半は、5G関連のネットワークから、AI、IoT各エリアを紹介する。

ネットワーク高度化への取り組み

今年2月にドコモほか、AT &T(米)、中国移動(中)、Deutsche Telekom(独)、Orange(仏)といった世界の有力キャリアの合意のもと設立された「ORAN ALLIANCE」。その概要が展示されていた。異なるベンダ間での相互接続により、迅速かつ低コストで自由度の高いネットワークを実現するグローバルスケールの5Gエコシステムを構築。また、5Gをはじめとする次世代無線通信ネットワークの拡張性をより高く、よりオープンでインテリジェントに構築していくという。
今後の5G基地局の展開においては、既存LTE装置の一部のカード交換やソフトウェアアップグレードにより5G環境に対応。既存装置の活用から、経済的・効率的にネットワークを構築していくという。

5Gに向けて、進化を遂げるアンテナ

・ドコモ×AGC×エリクソン

5Gで実現が期待されるモノとして、コネクテッドカーは大きな注目を集める。そのコネクテッドカー用のガラスアンテナが展示されていた。5Gの採用周波数として期待が集まる28GHzだが、電波の衰退が大きく、遠くまで届きづらい。ドコモとAGCが開発したガラスアンテナは28GHzに世界で初めて対応。エリクソンとの協力のもと、5Gコネクテッドカーに搭載した実証実験では、クルマの意匠性を損なわず安定した通信を行うことができ、最大11Gbpsの通信に成功したそうだ。
また、会場には将来的に5Gへの対応も見込む「窓を基地局化するガラスアンテナ」や「マンホール型基地局」の展示もあった。このように5Gの存在は、基地局の様相すら変えていく。

【AI】「ドコモAIエージェント」のソリューションが大集合

AIエリアは5Gの次に広大だった。なかでもドコモの音声を使ったサービス提供基盤「ドコモAIエージェントAPI」のブースは、21社のパートナー企業のさまざまなソリューションが一堂に介した。


イーフローは、「音声対応サービス」として、鉄道の発券機、居酒屋の注文、あるいは博物館の自動展示説明、ドアホン対応などに活用できるソリューションを展示していた。AI音声サービスというと、効率化・省人化だが、たとえば美術館での導入では、客がガイドイヤホンから定型文の説明を受けるのではなく、知りたい内容を知りたいだけ聞けるなど、顧客満足度の向上にも活用できる。また、「ドアホン対応サービス」もユニークだ。宅内機であらかじめ設定しておいた来客以外を自動対応で”お断り”してくれる。デモは一般住宅の設定だったが、用途は広く、飛び込み営業のシャットダウンやホテルなどの自動対応にも期待が持てる。原理的な検証のフェーズから製品化(事業化)へのハードルは大きいと思うが、どう乗り越えていくのか、引き続き注目したい。

次に目を引いたCAMEL「移住支援チャットボット」は、地方への移住者向けのソリューションだ。すでに岡山県和気町の自治体HPに導入されており、問い合わせによる職員の負担を軽減する一方、移住希望者からは相談しやすいと好評で、相談は導入前の1.5倍となり、移住者も増加しているという。

さらにビジネスソリューションでは、NTTデータが「音声認識×RPA」を展示していた。ドコモAIエージェントAPIとWinActorによる働き方改革ソリューションで、ユーザーの音声を認識したAIエージェントがロボットに指示してくれる。アプリへの音声から、「会議予約」「会議進行」「資料の印刷・送付」などが可能になり、生産性の低い雑多な業務のためにPCに向かう必要がない。スマホから音声で仕事を進める、そんな働き方も珍しくなくなるかもしれない。

また、”かゆいところに手が届く”音声対話ソリューションとしては、ドコモの「高機能SDK」もある。ユーザーのデバイス/アプリに組み込むだけで、ドコモAIエージェントAPIとの対話ほか、オリジナルのキーワードウェイクアップの設定も可能。また、エコーキャンセリング/ノイズキャンセリング技術搭載により、雑音の多い屋外での音声認識。事前の認識モデル作成により通信不可の環境でも音声認識が可能だ。この辺りは情シスとしても要チェックである。

 

【IoT】業界の未来をつくり、現状の課題を解決するIoTソリューションとサービス

IoTエリアでは、建設業界と農業のソリューション、スマートシティに向けた展示が目を引いた。

・建設IoTプラットフォーム「LANDLOG」

ドコモは昨今、コマツやSAPジャパン、オプティムと共同で合弁会社「株式会社LANDLOG」を設立した。同社40社以上を数えるパートナー企業とともに、建築業界の生産性向上をテーマにしたオープンプラットフォームの創造を行なっているという。5Gブースにコマツの遠隔操縦システムが展示されていたが、建設業界における効率化・自動化は、人材不足が逼迫化した業界を考えても大テーマだ。LANDLOGでは、クラウド、API、AI、ドローンなど、さまざまなテクノロジーを包括的に活用し、建設業界のイノベーションとあらたな時代の働き方の創出めざす。


・農業アシストロボ「Agbee」

人材不足は、農業においても深刻な問題だ。中西金属工業×KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)のプロジェクト農業アシストロボ「Agbee」は、ロボが生産者を追従し運搬アシストするだけでなく、土壌に埋め込んだセンサーやロボ搭載の重量センサーが畑の状態や収穫量を計測し、将来の収穫量予測も行う。また、ドコモの5Gによって、複数Agbeeの同時制御やコス高精細ライブ映像による農地状況把握を遠隔で行えるようになるという。こういったシステムが普及すれば、少人数での広大な農地の管理はもとより、副業・兼業としての農業の可能性も広がるのではないだろうか。

・IoTスマートホーム「未来の家」

横浜市、ドコモ、and factoryの3社でスタートし、さまざまな企業が参画し進めるプロジェクトが「未来の家」だ。ドコモ開発の「IoTアクセス制御エンジン」がプラットフォームとして機能し、さまざまなメーカーのIoTデバイスを制御管理。スマホ1台で、居住者はドアロックや空調、照明、テレビなどを制御でき、かつ家そのものが快適な室内環境に調整を行うという。また、居住者のヘルススコアも管理してくれ、将来的にはAIが生活状態を把握し健康的な生活への気づきを促すという。さしずめ”考える家”だが、現実のものとなれば、生活者に便利な居住環境を与えるだけでなく、高齢者の一人住まいの懸念などにも大きく寄与することだろう。

 

【取材後記】2020年は、誰にとっても5G元年となるかどうか?

5Gにより、産業、通信インフラ、ビジネス、サービスあらゆるものが大きく変化していくことが、DOCOMO Open House 2018ではありありと感じられた。だが、2020年以降、我々にとって5Gは身近な通信移動方式となり得るだろうか?

懸念としては、やはり料金体系だ。最高20Gbpsと、現行のLTEの100倍以上の通信速度を考えれば、とうぜん料金も跳ね上がる。我々に身近なところでいけば、5Gの大容量高速通信により進展が期待されるDaaSの普及、つまりスムーズなテレワーク整備が可能になると推測されるが、高コストでは普及は難しい。これは、近年高すぎるといわれ、政府の是正が入った携帯料金問題を見ても明らかだ。

だが朗報もある。ドコモは2018年7月に5Gの100GBプランを現行の10GBプランと同等程度の料金での提供を検討していると発表している。これを考えれば、個人でもスモールサービスでも5Gの恩恵を受けられるかもしれない。このコストバランスが5Gの未来をつくる肝となりそうだ。

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】


https://josysnavi.jp/er_docomo-open-house-2018_1st

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