【日経 XTECH EXPO 2018】~その4~ 働き方改革、ブロックチェーン、IoT、建設テック・・・、あらゆる分野に巻き起こるDXのうねり
- 2018/10/23
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今回は、”その3”からの「働き方改革2018」に加え、「FinTech&ブロックチェーン2018」「IoT Japan2018」「建設テック」各ブースの製品をレポートする。
前半で紹介したように、働き方改革2018ではDaaSの活況が見られたが、そのほかにもさまざまな製品が展示されていたので紹介しておきたい。また、「FinTech&ブロックチェーン2018」では、ブロックチェーンを活用したサービスが複数登場。ようやくといったところだろう。そして、「IoT Japan2018」。今年6月からIoT税制がスタートを切ったのもあり、こちらも注目株だ。また、「建設テック2018」も興味深い。IoT同様、まだ本格的な普及段階には至っていないが果たしてどのような製品があるのだろうか?
この記事の目次
【働き方改革2018】テレワークツール、グループチャット、モニター、仮想社内サービス!? 明日の働き方を変える製品続々
【テレワークツール】テレワークを支える包括的ツール群「働き方改革支援ソリューション」−NTTテクノクロス
官民を挙げて推進している「テレワーク・デイズ」の特別協力団体としても知られるNTTテクノクロス。同社が展示していたのが、テレワークソリューションのツール群だ。
「magicConnect」はいつでもどこでも社内のPC環境を手元の端末に呼び出せ、作業できるツール。接続は専用USBまたは端末認証型で行う。手元端末と社内PC間は暗号化通信路となり、セキュアな環境が自動で構築される。また、社内PCやサーバー上にある情報ファイルを持ち出せない「ファイル転送禁止機能」やハードウェア固有情報や電子証明書を組み合わせた「多要素認証」により不正接続を防止する。
このmagicConnect を筆頭に、社内の電話番号をひとまとめにできメールやSNSなど複数の機能を持つアプリ「ProgOffice」、資料共有も手軽に行えるWeb会議ツール「meetingplaza」、セキュアな環境が整備されたビジネスチャット「TopicRoom」、タスク管理アプリ「Flat Task」がある。ソリューションは企業もとより、官公庁にも導入実績があるという。今後、テレワークの普及が進むにあたって、安心な国産ツールを活用したいというユーザーも一層増えてきそうだ。
【グループチャット】あらゆる企業の働き方をしっかりとサポートする「ChatWork」−チャットワーク
シンプルかつチャット初導入でも扱いやすく、API連携も豊富なことから絶大な人気を誇る、国産グループチャットツールの雄「ChatWork」。導入企業は現在182,000社に上るそうで、同社ソリューション&マーケティング本部マーケティング部コミュニティマネージャー・藤井香苗氏は、「チャットに馴染みのない企業さまにもご活用いただけるようなツールをめざしています」と話す。
すでに広く浸透しているツールであることから機能紹介は割愛するが、注目すべき点が「社員のアカウント管理」だ。有料プランでは、ユーザー社員の退職と同時に、管理側でアカウントを削除できる機能を標準搭載。情シスが担当するアカウント管理を効率化してくれるのはありがたい。
【モニター】ノートPC +モニタでの生産性向上「EIZOモニター」−EIZO
テレワークやサテライトではもっぱらノートPCのニーズが高い。だが、ノートPCはデスクトップに比べ画面が小さいことから、アクセスできる情報量が少ないがゆえ、かえって非効率になり得るという。そのソリューションが「EIZOモニター」だ。
EIZOモニターを外付けモニターとして活用することで、たとえばノートではエクセル、モニターではWeb会議など自在に切り分けができる。モデルによって2台同時接続もでき、資料の突き合わせも可能だ。電源供給できる点も魅力的で、煩わしいノートのバッテリーコードも不要となる。また、EIZOモニターはスタンド昇降幅が大きいのも大きな特徴であり、モニターの下にすっぽりとノートが収まり、省スペースにも難なく対応する。さらに、ラインアップには、ミーティングに最適なMicrosoft wireless Display Adapterなどに対応したケーブルレスモデルもある。
同社企画部マーケティングコミュニケーション課主事・秋葉啓介氏は、「本体から電源ケーブルに至るまで、すべてホワイトで統一している点にもこだわりがあります。圧迫感がなくなり、オフィスが明るく開放的に感じるんです。この特徴からご検討いただく企業さまも多くいらっしゃいます」と話す。
【クラウド】通勤を禁止で「通禁」? ユニークな仕事場システム「通禁オフィス」−ダイナックス
テレワークの一歩先をいくかもしれないサービスに出会った。ダイナックスの「通禁オフィス」だ。AWS上に構築されたプラットフォームから、生産管理やスケジュール管理、連絡通知、顧客管理、会議室、申請・承認管理、スタッフ管理、プロジェクト管理など、企業で行われているあらゆる業務をリモートで行える。つまり、”通禁オフィスを使えば会社に行く必要がなくなる”というのである。
なんとも斬新なサービスだが、あらゆるモノ・コトのデータ化が進むのが現代。もしかすれば、会社という物理的な存在もいずれ仮想化していくのかもしれない。
【FinTech &ブロックチェーン2018】さまざまな分野のブロックチェーンサービスが登場! 普及の鍵は好事例の出現か?
数年前から、さまざまな業界でブロックチェーンを応用する実証実験が行われてきたが、サービス化においては停滞していた。しかしFinTech &ブロックチェーン2018では、数は少ないものの、ブロクチェーン活用のサービスが複数展示されていた。
【システム開発】社内仮想通貨も開発可能! 「仮想通貨×システム開発」−アイコール
オルトプラスが提供する「communitio」の記事でも触れたが、社内福利厚生にブロックチェーン技術が使われ始めている。新しいインセンティブとしての付与や社内コミュニケーション促進などに活用できる社内仮想通貨(トークン *イーサリアム規格にも対応)の発行や流通プラットフォームの提供、用途に応じたスマートコントラクト開発、ICO支援、ブロックチェーンビジネス支援などを提供する。
また、今回ソーシャルゲームメーカーのArcとともに開発したというブロックチェーンゲーム「ウォレットバトラー」の展示もあった。イーサリアムのプラットフォーム上に構築されたゲームであり、ゲーム上のキャラクターやアイテムがユーザーの固定資産となる。つまり、ゲーム自体が終了しても、別ゲームやサードパーティとの連携も行える。また、ゲームにはトークン売買の機能もあり、ユーザーが収益を得ることも可能だ。
【業務ソリューション】ブロックチェーン×AI業務ソリューション「beepシリーズ」−beepnow systems
beepnow systemsは、ブロックチェーンとAIを組み合わせた業務ソリューション「beepシリーズ」を展示。ブロックチェーンがメインの製品では、社内仮想通貨の発行や社員の行動をブロックチェーンで記録し人事評価につなげる「beep人事」、ブロックチェーンの高い機密性を活用し、契約書や顧客情報などセキュリティが求められるデータやプライベートメッセージなどを安全に送受信できるチャットアプリ「beepトーク」がある。
・beepnow systems
【ポイントサービス】ブロックチェーン×ビーコンで時間を価値にする「Time Innovation」−タイムイノベーション
タイムイノベーションはシンガポールに本社を構える新進気鋭のブロックチェーンベンチャーだ。同社のTime Innovationは、ビーコンを活用してユーザーの滞在時間をポイント化するというもの。つまり、ユーザーは、Time Innovation加盟店に長く滞在することでポイントを得られ、貯まれば加盟店の特典と交換ができる。
また、ブロックチェーン上に保存されたユーザーの滞在時間データを加盟店が収集することで効率的なマーケティングも行えたり、リピーターなど上客の厚遇も可能だ。集まったデータはビッグデータとして外販するビジネスも検討しているという。
滞在が売上に貢献するビジネスモデルなどでは少し面白いアプローチが考えられるのではなかろうか。
【IoT Japan2018】フルMVNOや電池不要センサーユニットなど、進化を続けるIoT環境
IoT Japan2018には、ソラコムの巨大なブースが出現。数々のパートナー企業がソラコムのIoTプラットフォーム対応のIoTサービスを展示しており、多くの来場者の興味を引いていた。また、IIJが日本で初となるドコモネットワーク利用の「フルMVNOサービス」を展示していたのも非常に興味深い。
【センサー】電池不要でセンシング&データ送信が可能な「振動発電IoTユニット」−アトムシステム
スマホをゲートウェイ化させた、ユニークなIoT製品で知られるアトムシステム。今回は同ゲートウェイほか、5.2㎜×9㎜の極小基盤に、加速度センサーや湿度センサーなど計7種のセンサー、BLEモジュール、ARM MCUを搭載したIoTセンサーモジュール「μPRISM」に加え、「電池一切不要」のセンサーユニット「振動発電IoTユニット」の展示もあった。
同製品は振動により駆動し電池不要でセンシング&データ送信を行うもの。スイッチ型カウンターと三軸加速度センサーの2タイプがある。センサーの電池寿命はIoTの大きな課題のひとつであり、規模が大きければ大きいほどリスクとなる。聞くところによれば、そのために電池管理部隊を新設した企業もあるそうだ。
<画像はμPRISM>
【通信】IoTネットワークの主要通信事業者を担うか? 「フルMVNO」−IIJ
IoTでもMVNOの活用が注目されているが、これまでは加入者管理機能、SIMカードを大手キャリアに依存していたことから、さまざまな制約があった。しかし、IIJのフルMVNOは、「基地局以外の設備のコントロール」が可能だという。たとえば、SIMカードの有効・無効だ。従来は、通信したい時のみSIMを使用するといったことはできなかったが、それが可能になった。フルMVNOでは、SIMの状態を「アクティブ(開通)」または「サスペンド(中断)」に自在に設定できる。つまり、通信コストを大きく抑えられるのだ。加えて、これらのメリットから今後、SIM組込みIoTデバイスの登場に拍車がかかることも期待できる。
また、フルMVNOでは大手キャリアに独立して加入者管理を行えたり、海外事業者との接続も可能になるという。
この分野で先行するSORACOMに直接的なライバルとなるサービスが登場することで、更に価格競争が起きることをユーザーとしては期待したい。
【建設テック2018】現場でのIT活用を促進させるソリューション多数
建機などはIoT化が進んでいるものの、建設現場のIT化はまだまだこれからという印象だ。しかし、それゆえに、ビジネスチャンスも眠っている。ブースには現場向けのソリューションが多く展示されていた。
【現場監督向けアプリ】現場のワークスタイルを変えた“本当に使える野帳”「eYACHO」−MetamoJi
MetamoJiは、「MetamoJiNote」など個人向けのノートアプリでも知られるが、実は建設現場の現場監督に大きなシェアを持つアプリも提供している。それが「eYACHO」だ。
まず、現場監督に必須の検査報告書や現場巡視記録など複数のテンプレートが用意されており、紙やペンを持ち歩く必要がない。加えて、タブレットのカメラで撮影した工事画像やPDFの図面を取り込んでその上に記入も可能。さらに、動画の掲載機能や複数人で同時編集や情報共有が行える「Share機能」、ToDO機能などもある。
同アプリはゼネコン大手・大林組が大体的に導入・活用しており、「今までのワークスタイルが大きく変わった」と多くの現場監督から好評を得ているという。
ノートが電子化されたという印象をうけたが、帳票や過去の文章スタイルにこだわりのある会社には重宝されそうに感じた。
【クラウド】レガシー業界にも波及目前か? 契約を簡単にしてくれる「クラウドサイン」−弁護士ドットコム
契約業務をWeb上で完結させられる手軽さから人気を集めるWeb完結型クラウド契約サービス「クラウドサイン」。契約書送受信者ともに数フローで合意締結を完了できる。送信書類の開封などのステータス確認機能や情報漏えいリスクを回避する「アクセスコード機能」、社内システムや外部クラウドサービスと連携できる「API連携機能」など機能も豊富で、業務の効率化と従来の無駄なペーパーワークを削減してくれる。
同サービスが建設テック2018で展示されていたこと自体がユニークだが、おそらくペーパーワークに悩まされがちなレガシー業界にこそ大きなインパクトがあるとの考え方からであろう。
サービス自体は立ち上がったばかりで、実際、締結済み契約の削除機能がない為に、お試しで作成するサンプルの契約を削除することができないなど、機能の面ではまだまだ足りていないことも多いように感じるが、完全ペーパーレス電子契約サービスという前人未踏の領域に一歩踏み出したことには敬意を表したい。
【取材後記】先進性を謳うよりも、身近なサービスの登場が進む
ブロックチェーンなど、先進的な技術を活用したサービスも見られたが、日経 XTECH EXPO 2018ではどの分野も往々にして「ユーザーが手軽に導入でき、かつ本気で活用できる」製品が多く展示されていたように感じた。事実、先端技術と湧いたAIもスキルがなくても使えるサービスが続々と登場している。リテラシーやスキルに依存しないITサービス。これは、これからのトレンドになっていくのかもしれない。
【執筆:編集Gp 坂本 嶺】