【誰も教えてくれない】情報システム部の予算確保とコスト削減について
事業の発展にはDX化への投資、導入システムの拡張など、必要に応じたアップデートが欠かせないです。しかし、経営者視点で最重要視する「コスト」と、情報システム部目線の「セキュリティ」、現場視点の「効率」はいつでも真向にぶち当たる課題です。情報システム部は直接利益を出しにくいからこそ、事業に貢献するに見合ったコストになっているか、費用や契約内容を定期的に見直す必要があります。
本記事では、直接的に学ぶ機会の少ない、情報システム部の予算確保とコスト削減についてお届けいたします。
この記事の目次
1.コストセンターとプロフィットセンター
企業における部署やチームの分類の仕方は様々存在します。まず真っ先にイメージしやすい分け方は役割による分類であり、その役割が部署・チーム名となることが一般的です。これはきちんと組織が機能するために必須な構造になります。複雑化させずに階層を多くしないことなどいくつかのポイントが存在します。
今回は、「コスト」に着目し『利益を獲得する能力=収益性』で部門を2つに分類する方法を紹介します。
コストセンター
コストセンターとは、単体では利益を生みにくく、人件費や設備費、材料費といったコストのみが計上される部門のことです。代表的な部署は、人事部や総務部、経理部、コールセンターなどの間接部門やバックオフィスがあげられます。なお、情報システム部やIT関連の部署もこちらに分類されます。
求められることは、企業全体の収益を高めるため、作業の効率化や労働力の削減を行い、「発生するコストを最小限に抑えること」です。
プロフィットセンター
プロフィットには「利益」「収益」などの意味があり直接的に売上を生み出す部門のことです。具体的には、営業部や販売部などがあり、業界・業種によっては製造部やマーケティング部、経営企画部などもプロフィットセンターに分類される場合があります。
プロフィットセンターの役割は売上を作ることです。プロフィットセンターでも人件費をはじめとしたコストは発生しますが、コスト削減以上に「利益を最大化すること」が求められます。
各部門をどちらに分類するかは企業によって異なるので一概には言えません。ただ、コストセンター・プロフィットセンターの考え方自体は変えられないものです。ご自身の所属する情報システム部は、どちらに分類されるのが目標で、現状の社内評価はどちらでしょうか。
2.予算確保のため、経営層の理解を得る
収益性の観点で部門を2つに分類する方法を紹介しましたが、コストセンターである情報システム部はどのように毎年予算を確保しているのでしょうか。
今回は一般的な中小企業の方法について触れ、その後情報システム部での予算確保の方法についてまとめます。
一般的な中小企業の予算確保について
自社の決算について把握できている方ばかりではないかと思います。おおよそ、下記のようなステップが想定されますのでご覧ください。
下記の図解にある「予算編成部門」は、財務部が担うことが多いです。財務部がない場合は、経営企画部や総務、経理部などが兼任している可能性があります。より小規模な企業では、経営者や役員自身が財務業務を直接担当することがあります。
情報システム部の予算確保について
企業全体の予算確保の次に、各部門での予算確保の流れについて一例の紹介です。まずは予算案確保のための情報収集を行います。※予算を充てるべき課題の抽出などは済んでいる前提
1:同業他社のITへの投資動向をウォッチ
そもそもシステムは実態が掴みにくく、コストの認識を経営層に正しくもってもらうのが困難であるということを担当者は理解しておくと良いでしょう。その上で、比較対象として競合他社や、同業で業界をリードしている企業のIT投資の情報はインパクトとして予算確保の見方となるケースが多いです。
まずは、相見積もりなどと同様に比較できる情報収集を徹底しておこない、経営層の納得度に寄与できそうな数字や実例を確保しましょう。
2:他のITへの投資動向に関する調査をウォッチ
具体的に、一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会の「企業IT動向調査報告書 2024」は企業のIT部門を対象にアンケート調査とインタビュー調査を行い、企業におけるIT投資、IT利用の現状と経年変化を明らかにするための分析結果がまとめられています。
自社でデータを賄うのには限度があるので、色々な調査報告に目を通し、貴社にあったデータを探してみることをお勧めします。
3:セキュリティ事故のケーススタディを共有
今起きてない、たらればであるとセキュリティに関するリスクを正しく認識できていない、軽視されがちです。事故が起きずに防げているのはなぜか、このまま現状維持でも、持続可能な経営活動ができるのか否か、しっかりと自社の診断をおこない、状況の報告と、必要な対応について説明が必要です。セキュリティ事故のケーススタディから経営層に必要なセキュリティ対策について理解し、自社で起きた際のシュミレーションをいただくことは重要です。
日々使用しているシステムへの関心と当事者意識をもっていただくように、働きかける方法を工夫しましょう。
4:想定される懸念とその損害額のリスクと可能性を提示
上記の「2:セキュリティ事故のケーススタディを共有」の延長線上として、具体的な数値での損害を共通認識として持つことは大切です。リスクを言葉にするだけではなく、セキュリティ事故が起きた際に発生する損害額やコスト以外に想定される企業ダメージを数字として報告すると、その想定にそった対策について一歩踏み込んで検討ができ、対策に関する内容の費用対効果が経営層視点でどうかフィードバックに発展できるでしょう。
数値で興味が遠ざかるようであれば問題ですが、むしろ情報システム部に必要な予算についてより関心を持ってもらえる可能性が期待できます。
3.予算確保後、費用対効果を定期的に報告
1:レポートは4半期に1回が望ましい
12月決算の場合、4半期は1期(1月~3月)、2期(4月~6月)、3期(7月~9月)、4期(10月~12月)となります。どのタイミングでレポートをまとめるかは各社の繁忙期や状況によって異なりますが、4半期毎に状況をまとめて報告ができると望ましいです。
難しい場合は、半期に1回は提出できるようにし、予算確保で終わりではなく、きちんと予算に見合った効果がでているか、また効果が出るための行動がとれているかは部署内のみで完結させる情報ではありません。
きちんと、誰でも見れる場所に報告し、クリーンで誠実な行動がとれていることを報告しましょう。この行動により、次回の予算確保の難易度が左右されるといっても過言ではありません。
2:実際に改善した点をレポートにまとめて報告(情報システム部以外のコメントも載せる)
レポートを作成する際に、どうしても情報システム部内で完結させてしまいがちですが、予算の効果が部署以外にも効果が出ていることや、第三者目線でのコメントはレポートに厚みを持たせます。ひと手間を惜しまず、他部署で連携しているメンバーや、他部署の上長クラスに一言でもコメントをいただくように工夫することをお勧めします。
3:プロフィットセンターの生産性、正確性の向上に貢献できている文脈を載せる
一つ前の内容と似通っていますが、情報システム部がコストセンターであるので、どれだけプロフィットセンターが売上にコミットするためのサポートができているかを掲載することは、会社全体としての重要度の指数を図る上で外せない要素です。
他部署の中でも特に、プロフィットセンターに分類される部署の評価をしっかり掲載し、もちろん日々のサポートも連携よく行うようにしましょう。
4.コスト削減、取り組みやすいpoint4選
削減しやすい費用は、人件費・採用コスト・IT機器費!
予算確保や確保後に行うべき報告について一例を紹介しました。最後にコストの削減の視点で4つポイントを説明しますので、できる内容から対応して確保した予算の適切な運用についてしっかり注力していきましょう。
1:DX化による業務効率化の最終的なコストカット(現状維持との比較)
DX化=コストがかかるという印象は根強いですが、中長期で考えた際に現状のままで運用した場合と、DX化を推進し新たなシステムを導入した際とどちらが安全でかつ持続可能な運用が可能でしょうか。この答えは、企業の状況ごとに全く異なるので一概には言えませんが、古いシステムを使い続けることはいつか大きな支障を引き起こすリスクが、日々懸念を大きくしていることと同義であることを理解し選択することが必要です。
まだ使えるうちに、しっかりと適切な環境構築を検討することをお勧めします。
2:離職防止へアプローチ、活躍できる人材育成へコミット
コストの部分でネックとなるのが「人」に関する内容です。新卒採用コストを例に出してみると、2019年度の新卒採用1人当たりの平均採用コストは93万6,000円でした。2018年度の新卒採用の平均コストは71万5,000円であり、31%の増加となったことがわかっています。(株式会社リクルートが運営する就職みらい研究所による調査)離職があれば、採用活動をして人を充足する必要があるので、この部分のコストが発生しないようにすることは重要です。
離職防止のためのアプローチや、日々一人ひとりが活躍できるような人材育成などにしっかり取り組むことが、コスト削減への外せない要素の一つになります。
出典:株式会社リクルート「就職白書2020」
3:固定費と変動費の見直し
経営の視点を持つことは、コストを考える上で外せない要素です。その上で、経営者が内製と外注を判断する上で重要と捉えるのが「固定費と変動費」です。
それぞれ具体例を上げると、下記の通りです。
固定費・・・オフィス賃貸料、従業員の給与、保険料、設備の減価償却費 等
変動費・・・車両燃料費、販売手数料、外注費、仕入原価 等
どちらも各企業の状況や、戦略のベクトルによって選択するものは変わってきます。変動費と固定費を分ける理由については割愛しますが、経費削減効果が双方で異なり、それぞれ管理することで利益の予測を可能にすることは頭の片隅に留めておけるとよいでしょう。
では、情報システム部のコスト削減についてどのように固定費と変動費を見直すかについてですが、ここでは「固定費を減らし、変動費へシフトする」方法を提示します。コストセンターである情報システム部では、プロフィットセンターよりもいつでも柔軟に最小の費用で運用ができる体制でいることが求められます。理由は第一章の「1.コストセンターとプロフィットセンター」の通り、内製で費用を使える優先順位が下位にあたるためです。
とはいえ、継続的に最小の費用で運用するのは現実的ではなく、予算が確保でき、攻めのプロジェクトなどが出来る際タイミングでは、しっかり必要な人手を確保することは大切です。ただ、この際に内製で選択すると、従業員を雇用し、基本は長く勤務する契約となるため、また将来的に最小の費用での運用を求められた際に困ってしまいます。
そのような際に、変動費としてアウトソーシングや外注で人手を一時的に補填することで、プロジェクトの遂行と将来的な最小での運用の実現が可能となるのです。
4:IT機器費の削減のため、クラウドサービス(サーバ)への移行
オンプレミスではバックアップのシステムやストレージの設計など複雑な対応を必要としますが、クラウド化によってこれらの対応が必要なくなることや、各クラウドのデータセンター自体でセキュリティの仕組みが含まれてきつつあるので、その分の作業時間が浮き、他の業務に充てることが可能です。
5.まとめ
勤続年数が長くなるにつれ、プレイヤーからマネージャーに役割が変化し、担当される業務も多岐にわたります。昨今の中小企業では人材不足の影響も重なり「プレイングマネジャー」が当たり前に多くいらっしゃいますが、前任のマネージャーや上長からはなかなか教えてもらえない、予算確保の仕組みや経営層の視点、そして対極的なコスト削減のためのアイデアについて焦点をあてまとめてみました。
予算確保の時期に行う内容もあれば、定期報告を行う重要性、また日々の経営層から見られる情報システム部を冷静に理解し、どのような日々の実績の積み重ねや工夫が必要かイメージいただければ幸いです。
システム関連の開発やアップデートに関してのご依頼は、情シスナビの運営会社である「株式会社HumAIn」へお気軽にご相談ください。予算組みで必要な資料や、コストに関する点でも精一杯サポートいたします!また情報システム部の至上命題の一つであるセキュリティに関してもご相談承ります。
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