使える! 情シス三段用語辞典83「プロビジョニング」
常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。『情シスNavi.』では数々のIT用語を三段階で説明します。
一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明
取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?
一段目 ITの知識がある人向け 「プロビジョニング」の意味
「プロビジョニング」とは、環境構築の手段の一つで、事前にサーバーやストレージ、ネットワークなどのリソースを用意しておき、必要になった際にそれらを割り当てる仕組みのこと。クラウドサービスプロバイダなど、ユーザーからのリソース割り当て追加の要望にすぐに対応する必要があるシステムでよく使われる技術です。プロビジョニングの利点は、ユーザーの要求に応じて迅速に環境用意ができることです。Windows 10ではこのプロビジョニングの機能が提供されたことで、注目を集めています。
Windows 10といえば、Windows 7のサポートが2020年1月に終了するため、その後のメインOSとなるバージョンです。Windows 10の特徴としてメジャーアップデートが1年に2回行われるのは周知の事実ですが、Windows 10では環境構築補助のサービスの一つとして、プロビジョニングの機能を提供しています。このプロビジョニングには、OSの設定やアプリケーションのインストール設定が含まれており、端末の初期セットアップが簡易にできるようになっています。
Windows 10のプロビジョニングパッケージは、端末にプリインストールされているOSやアプリケーションに対し、必要な設定や変更を加えることで、短時間でのセットアップを可能にします。Windows ADK(Windows Assessment and Deployment Kit)に含まれるWindows構成デザイナーというツールを使ってプロビジョニングパッケージを作成し、それを展開することでキッティングを行います。
プロビジョニングパッケージでのインストールはUSBやSDカードなどのリムーバブルメディアを使用できるため、最初に管理用ネットワークに接続する必要もなければ、端末がオンラインである必要もありません。また展開操作も、起動時にパッケージを実行するだけと簡単なため、情シス以外の一般従業員でも実施可能であり、情シスの作業削減にもつながります。プロビジョニングパッケージでは、デバイス名、プロダクトキー、プリインストールアプリの削除、Wi-FiのSSID、Active Directory登録、アプリと証明書の追加などが設定できます。但し、アプリケーションは自動インストール対応のもののみ追加が可能であり、またアプリ追加のみ可能でアプリ自体の設定はできないなどの制限があることに注意が必要です。
尚、Windows 10のキッティング方法としてプロビジョニングの他には、クローニングがあります。こちらはマスターのOSイメージをもって新しい端末に配布し適用する形式であり、複数の端末へ一度にイメージ配信できることが利点です。こちらは事前にひな形のPCのハードディスクからマスターOSイメージをから作成する必要があり、それがWindows 10の高い更新頻度においては手間となりコストがかかります。
プロビジョニングのパッケージ作成もメジャーバージョンアップ時には作成し直しが必要ですが、ウィザードでできる分、マスターイメージよりも作成は容易です。但し、クローニングよりプロビジョニングの方がインストールにかかる時間が長いため、大量の端末を扱う必要のある大企業より、数十~数百台規模の中小企業向けの機能とされています。
二段目 ITが苦手な経営者向け
とある企業で、営業部長が情シスの居室にやってきて、情シス不老さんに話しかけた。
部長:実は出張に行ったときにうっかりPCを落としちゃってね、液晶が壊れたみたいなんだ。新しいのを貸してくれないか。
不老さん:いいですよ。貸与用PCがあるので持っていってください。
部長:すまんな。新しいPCはいつごろもらえるかな?
不老さん:空いているPCをクリーンインストールしてからお持ち致しますので、できあがったらご連絡します。
部長:そうか、では一緒にセットアップもしてくれるのかな? Officeとスケジュールツールに、あと営業部用のアプリが入っていたな。
不老さん:はい、セットアップも情シスで行います。営業部用のアプリもちゃんと入れますから大丈夫です!
部長:この時期は新入社員用のPCセットアップもあるだろうに、申し訳ない。
不老さん:大丈夫ですよ。今年はWindows 10のプロビジョニングで簡単にできるんですから。
部長:一つ教えて欲しいんだが、その「プロビジョニング」って何なの?
不老さん:Windows 10の機能で、新規PCにひな形のコピーができる機能ですよ。初期セットアップが終わった状態のPCをいくつも簡単に作れるんです。ほら、今も新人の分をやっていたんですけど、こうやってポチポチっと。
部長:へぇ!これでできるんだ!?
不老さん:はい。プロビジョニングの使い方は、こうやってプロビジョニングパッケージというセットアップのパッケージをダブルクリックで実行するだけなんです。プロダクトキーやネットワークの設定もできるし、プリインストールの要らないアプリは消してくれて、必要な社用ソフトを入れてくれます。
部長:簡単だな!これなら私でもできそうだ。
不老さん:ええ、できますよ。手順が単純なので、今後マニュアルを整理できたら社内公開してそれぞれでやってもらおうかと思っているくらいです。
部長:新しい機能なんだな。自分でやることになったら、わかりやすいマニュアルを頼むよ!
三段目 小学生向け
小学生の皆さんは、4月になったら進級・進学をして新しい教室に行くのを楽しみにしているでしょう。教室が変わると、お道具箱やロッカーなどの整理をして荷物の引っ越しをしなければなりませんね。荷物が多くて3学期の最後にあわててまとめる人もいるでしょうが、普段からまとめてあれば引っ越しも楽になります。
さて、パソコンもデータの引っ越しをすることがあります。新しいパソコンを買ったら、今まで使っていたパソコンと同じようにお気に入りのアプリを入れて、お気に入りの写真や曲を入れ直して、忘れちゃいけない大事なセキュリティ設定もして・・・とたくさんやることがあります。これは、けっこうめんどうくさいですね。遊ぶ時間もとられてしまいます。これがパソコン一つだけなら、まだがんばってやる気にもなりますが、もしパソコンが3台もあったらもうやりたくなくなるでしょう。ですが、会社というところは社員が何十人、何百人もいる会社もありますから、パソコンも何十台、何百台とあります。もし、数百台のパソコンを買い替えたら・・・と思うと目が回りそうです。でも、Windows 10なら会社で使えるようにする設定がとってもかんたんにできる機能があるのです。「プロビジョニング」といいます。
プロビジョニングとは、パソコンの中の大事な設定やアプリを事前にまとめておいて、引っ越ししやすくする機能です。新しいパソコンを買って最初の設定をするとき、あらかじめその会社で使うアプリや設定をプロビジョニングの機能に登録しておきます。これをプロビジョニングパッケージといいます。パッケージとは引っ越しの荷物のようなものなのです。その登録したプロビジョニングパッケージをUSBなどのメディアに入れ、新しいパソコンにつないでクリックすればいいのです。するとパッケージに登録した内容が新しいパソコンに自動的に入り、自分でアプリをインストールしたりいろいろな設定を入力したりすることなくすぐに使えるようになるのです。
さて、皆様のご理解は深まったでしょうか?
【執筆:編集Gp 星野 美緒】