日本における ポストモダン ERP のハイプ・サイクル-ガートナー

7日、ガートナージャパンは、「日本におけるポストモダンERPのハイプ・サイクル」の最新版を発表。
同社によれば、現在、国内のERP市場は、新たな変革期を迎えている。1990年代以降に一般的であったオンプレミスのモノリシック(一枚岩的) なERPスイートによるさまざまな業務機能の統合と集約化、つまりERPによるアプリケーションの「近代化」が一段落し、その次を担うERPへの進化が顕著になっているという。

同社では、従来の密結合型のERPスイートがカバーしている広範な業務機能をいったん分解した上で、クラウド・アプリケーションを含む複数のアプリケーション群を疎結合で連携するスタイルを採用した新たなERP像を「ポストモダンERP」と呼んでいる。
本ハイプ・サイクルでは、日本の関連市場に大きな影響を及ぼすと考えられる主要なキーワード(テクノロジ、サービス、方法論、プラクティス、コンセプトなど) について取り上げ、それぞれの期待度および成熟度(時間の経過) の関係を相対的に位置付けている。

ガートナーのハイプ・サイクルは、横軸に「時間の経過」、縦軸に「市場からの期待度」を置く2次元の波形曲線で表される。新しいテクノロジ、サービス、方法論などが登場してから市場に受け入れられるまでは、総じて同じ経過をたどる。まず、市場に登場した直後は期待が急上昇する(黎明期)が、期待に見合う成果を伴わないまま過熱気味にもてはやされ(「過度な期待」のピーク期)、熱狂が冷めると期待が一気に幻滅に変わり(幻滅期)、それを乗り越えて改めて市場への浸透が進むことで(啓蒙活動期)、成熟したテクノロジとして市場に認知されるに至るという(生産性の安定期)。
ハイプ・サイクルは、これら5つの段階で市場の成熟化の過程を示し、各キーワードはそれぞれの成熟度に従い、ハイプ・サイクル上に位置付けられている。ドットの形状や色は、最後の成熟段階である「生産性の安定期」に至るまでに要する期間を表している。
企業のCIOやITリーダーは、本ハイプ・サイクルを活用することによって、適切なテクノロジを最適なタイミングで採用することができる。
ERPの導入、更新、刷新を計画している企業は、本ハイプ・サイクルで紹介しているテクノロジやコンセプトが将来的に主流の採用に至る可能性を踏まえ、これらをあらかじめ評価し、自社のERP戦略に織り込む必要があるといえる(図1参照)。

ポストモダンERPが求められる背景には、ERPベンダーによるロックインや、重厚長大なERPスイートの運用における過度な負担を回避する意図だけでなく、デジタル・ビジネスや働き方改革に代表される昨今の新たなビジネス・ニーズや就労環境への対応がある。過剰なカスタマイズを伴うオンプレミスのモノリシックなERPでは、保守コストがかさむことに加え、展開や変更に多くの時間を要するため、もはやビジネスの求めるスピードに追随できなくなっている状態である。
そこで、クラウド、人工知能(AI)、インメモリ、モノのインターネット(IoT) といった新興テクノロジをERP戦略に取り入れ、複数のアプリケーションが緩やかに連携する形へと発展させることで、変化し続けるビジネス要件に対応しようという動きが目立つようになってきた。

ポストモダンERPは、クラウド・アプリケーションを活用し、コアERPに不足する機能を、複数のアプリケーションから「適材適所」で補完する。これにより、コアERPのカスタマイズを抑えつつ、俊敏性や柔軟性の向上を図ることが可能になる。
現在、主要なERPベンダーは、ERPの機能の多くをパブリック・クラウドERPとしても提供するようになっており、人事や財務といった、いわゆる管理系の業務領域では、パブリック・クラウドERPに対する期待がピークに達している。こうしたクラウド化の進展による、オンプレミスとクラウド間、クラウド同士のアプリケーション統合を実現する関連テクノロジの重要性が高まっている。
また、クラウド・アプリケーションを短期展開する際のアジャイル手法の活用や、ERPのデータ/機能を活用して顧客やエンドユーザーのニーズに応える新たなソリューションを生み出す手法であるデザイン・シンキングも、企業の新たな関心事といえよう。

ガートナーのアナリストで、バイスプレジデントの本好宏次氏は次のように述べている。「本ハイプ・サイクルに取り上げたテクノロジやコンセプトの多くは、黎明期から『過度な期待』のピーク期に位置付けられている。これらは全般的に成熟度が低いため、関連する取り組みが進展するにつれ、試行錯誤や失敗がもたらす幻滅をいかに乗り越えていけるかが、ERPの導入・展開に関わるベンダーとユーザー企業双方の課題になると思われます。デジタル・ビジネス時代の競争力は、AI、予測分析、IoTといったデジタル・テクノロジを取り込みつつ、さまざまなアプリケーションが適材適所で緩やかに連携するポストモダンERP環境をどう構築するかに懸かっている。企業のCIOやITリーダーには、この点を念頭に置きながら、長期的なERP戦略を立案し、推進することが求められます。」

 

ERPも自身がクラウド化することでこれまでの垂直統合モデルから、クラウドサービスを横ぐしで連携するAPI連携の進展により、変化せざるを得ないのではないだろうか。


本レポートは、ガートナー ジャパン様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
ソース:https://www.gartner.co.jp/press/pdf/pr20190207-01.pdf

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