日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2020年-ガートナー
ガートナー ジャパンは、「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2020年」を発表。
ガートナーのハイプ・サイクルでは、インフラストラクチャのテクノロジのうち、特に未来志向型と捉えられるものや、トレンドとなっている注目すべき重要なキーワードを取り上げています (図1参照)。
図1. 日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2020年
ガートナーのハイプ・サイクルは、テクノロジやサービス、関連する概念、手法など (以下、キーワード) の認知度、成熟度や採用状況、および各キーワードが実際のビジネス課題の解決や新たな機会の開拓にどの程度関連する可能性があるかを視覚的に示したものである。
アナリストでバイス プレジデントの鈴木 雅喜氏は次のように述べています。「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の影響により、社会を取り巻くデジタル化のトレンドがさらに加速する中、企業のビジネスにとって重要なインフラ関連テクノロジは、未来へ向けて大きな変化の時を迎えています。2020年版の本ハイプ・サイクルに含まれるキーワードについては、デジタル化を推進するすべての企業が重視する必要があります。CIOやイノベーションのリーダーは、本ハイプ・サイクルを活用して注目すべきテクノロジを認識し、適用時期の検討を開始しなければなりません」
2020年版の本ハイプ・サイクルには、「ヒューマン・オーグメンテーション」を新たに追加しています。2019年版で「過度な期待」のピーク期に入った「5G」はさらにポジションを進め、2020年版では頂点に位置付けられています。2019年版で幻滅期の谷に向かっていた「モノのインターネット」「量子コンピュータ」「DevOps」「人工知能」「スマートロボット」「ブロックチェーン」「拡張現実 (AR)」は、2020年版でも同様に谷底へ下降し続けています。一方、同じく幻滅期にある「ロボティック・プロセス・オートメーション」と「デジタル・ヘルス」は谷底を脱し、本格的な普及期に移り始めました。
「過度な期待」のピーク期に位置する「5G」
COVID-19のパンデミックを受け世界各国でビジネスが停滞していることから、2020年に予定されていた5Gの標準化や開発関連の動向にも影響が及び、検証などが遅れているケースが見られるという。その一方で、5Gを介したリモートからの各種作業の支援などに対する期待が膨らんでおり、移動体通信事業者やサービス設備を提供するベンダーが既にさまざまな検証を実施している。現在は、標準化が待たれる機能を含め、商用化に向けた準備がさらに進むフェーズに入っている。5Gには、携帯電話やスマートフォンに向けた単なる通信サービスではなく、自動車や工場、店舗、家電製品など多様なモノのデジタル化をスコープに入れたテクノロジとして開発されている背景があるため、IoT (モノのインターネット) やAI (人工知能) の導入を加速させ、デジタル化を大きく促進する可能性も秘めているのである。
COVID-19の拡大に伴い、普及が進む「ロボティック・プロセス・オートメーション」と「デジタル・ヘルス」
2020年現在、日本のロボティック・プロセス・オートメーション (RPA) 市場の成長と大規模化により参入ベンダーが増え、ベンダー間の競争も激化しています。また、一部にはRPAの継続利用を見直す企業が見られるものの、多くの企業はRPAの実態を理解し、過剰な期待を抱くことなく、RPAや関連隣接領域のベンダーやテクノロジの動向を注視しながら、同テクノロジの適用範囲の拡大について現実的な取り組みを始めています。さらには、COVID-19の影響を受けた業務コスト削減やリモートワーク実現のための施策として、RPAによる業務自動化をいっそう加速させる動きが見られるため、適用領域は予想以上のスピードで拡大する可能性があります。市場のRPAに対する現実的な理解が深まったことで、同テクノロジは幻滅期の底を打って本格的な普及を目指し始めています。
ガートナーは、ヘルスケア業界におけるデジタル化のトレンドを「デジタル・ヘルス」と総称している。2020年には、COVID-19の拡大に伴い、多くの医療機関がオンライン診療を開始。また多数の自治体において、COVID-19に関する質問に自動で回答するチャットボットの導入が進んでいる。デジタル・ヘルスはさまざまな分野で改めて注目を集めており、2020年から2021年にかけ、COVID-19対策として、また新たな投資対象として大きなテーマになるとガートナーはみている。
前述の鈴木氏は「社会と企業のビジネスを変えるテクノロジの力が今後さらに強まり、既存の仕組みを次々に破壊していく可能性があります。企業では、変化にうまく対応できる体制の構築が必須となり、社内においては、テクノロジの活用を担うすべての人と組織がギアチェンジをした上で変化に備えていかねばなりません」と述べている。
ガートナーのサービスをご利用のお客様は、ガートナー・レポート「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2020年」(INF-20-107) において、詳細をご覧いただけます。
本レポートは、ガートナージャパン様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
https://www.gartner.com/jp/newsroom/press-releases/pr-20200910