システム開発の請負と業務委託ってどう使い分けるのか?

システム開発を進める際、企業は「請負契約」と「業務委託契約」の2つの契約形態の選択を迫られることが多くなります。これらの契約形態は一見似ていますが、実際には責任の所在や作業の進め方、費用の発生するタイミングなどに大きな違いがあります。弊社でもご依頼いただくケースでは半々ぐらいの印象です。本記事では、請負契約と業務委託契約の特徴を比較しながら、どのように使い分けるべきかを解説していきます。

1. 請負契約の特徴

まず請負契約とは、受託者が一定の業務を完了し、その成果物を納品することに対して報酬が支払われる契約形態です。つまり、成果物が完成し、納品されるまでは全額の支払い義務が発生しない点が大きな特徴です。その反面、しっかり要求定義が出来ていないと、希望通りのものが出来ないケースもありますので、事前準備もしっかり行うことが重要です。

メリット:

  • 成果物に対する明確な責任:請負契約では、受託者が成果物を納品する義務を負うため、クライアント側にとっては「確実に完成されたものを手に入れられる」という安心感があります。
  • 予算のコントロールがしやすい:契約時点で予算が決定され、追加作業がなければその範囲内での費用が発生するため、費用予測がしやすいです。

デメリット:

  • クライアントの関与が制限される:受託者が作業を進めるため、開発途中でのクライアントの介入が難しい場合があります。そのため、要件定義や仕様のミスが後々大きなトラブルに発展する可能性があります。
  • 柔軟性の欠如:一度契約内容が決まると、後から仕様変更が生じた場合に追加料金が発生することが一般的です。特に、システム開発は長い期間になり、途中で業務が変わるなどをして、要件が変わりやすいので、この点は大きなリスクになります。

適した場面:

  • 仕様が明確に決まっているプロジェクトや、納期と予算が厳格に定められている場合。
  • 短期的なプロジェクトや単一の成果物(例:ウェブサイトやアプリケーション)の開発など。

2. 業務委託契約の特徴

一方、業務委託契約は、特定の業務を遂行することを依頼し、その過程や進捗に応じて報酬が支払われる契約形態です。請負契約とは異なり、成果物を納品する義務はなく、業務の遂行そのものが契約の目的となります。そのため、徐々に機能を開発したり、プロトタイプを作って仮説検証したりする場合は、業務委託での開発が向いているでしょう。

メリット:

  • 柔軟な対応が可能:業務委託では、契約途中での仕様変更や追加作業が容易に行えます。クライアントが開発に積極的に関わりたい場合、非常に有効です。特にシステムは作ってみないと分からないことも多いため、検証しながらアップデートしたい場合は、柔軟な契約の方がストレスなく進められます。
  • 専門知識の活用:専門的な知識を持つ外部パートナーに業務を委託することで、自社内では対応できない領域の作業をカバーできます。そのため、自社内の得意分野を広げたい場合にも、とても有効だと思います。

デメリット:

  • 成果物に対する責任が不明確:業務委託契約では「業務の遂行」が目的となるため、必ずしも成果物が納品されるわけではなく、最終的な責任には自社になるケースが多いです。マネジメントも自社で行いますので、そういったコストもかかってしまいます。
  • 費用が読みにくい:業務が進むごとに報酬が発生するため、プロジェクトが長引いたり仕様変更が頻発すると、最終的なコストが予測を超える可能性があります。空き時間が発生させず、契約した工数分のタスクを作る必要があるため、管理工数もある程度見込んでおく必要があります。

適した場面:

  • プロジェクトが長期的であり、仕様が流動的である場合。
  • クライアントが開発プロセスに深く関与したい場合や、専門的な技術力を持った開発パートナーが必要な場合。

3. 請負契約と業務委託契約の違い

ここまでで請負契約と業務委託契約のそれぞれの特徴を見てきましたが、具体的にどういった場面で使い分けるべきかを明確にするために、両者の違いを纏めてみました。

項目 請負契約 業務委託契約
成果物の納品義務 あり なし(業務の遂行が目的)
費用の発生タイミング 成果物の納品後 業務の進行に応じて支払いが発生
柔軟性 低い(契約内容に基づく) 高い(仕様変更やクライアントの関与が可能)
責任の所在 受託者が成果物に対して責任を負う 責任は分散される可能性がある
コストの予測 予測がしやすい 長期化や仕様変更でコストが膨らむ可能性がある

4. 契約形態の選択基準

では、実際にシステム開発を進める際に、どちらの契約形態を選ぶべきかについて考えてみます。選択の基準は大きく分けて以下のポイントに集約されます。

  • プロジェクトの規模と複雑さ:小規模で仕様が固まっているプロジェクトなら請負契約が適していますが、仕様が変わりやすく、柔軟な対応が求められるプロジェクトでは業務委託契約が有利です。
  • クライアントの関与度合い:クライアントが開発に積極的に関わりたい場合や、専門的なフィードバックを随時提供したい場合は、業務委託契約の方がスムーズに進行します。
  • 予算とスケジュールの制約:固定の予算内で成果物を確実に得たい場合は、請負契約を選ぶ方が予測可能性が高くなります。逆に、予算に余裕があり、柔軟な開発が求められる場合は業務委託契約が適しています。

5. 両者を組み合わせたアプローチ

最近では、請負契約と業務委託契約を組み合わせたハイブリッドな契約形態も見られるようになっています。例えば、初期の要件定義や設計フェーズは業務委託契約で進め、その後の開発フェーズでは請負契約に切り替えるといった方法です。これにより、柔軟性と成果物の保証をバランスよく実現することが可能です。またラボ契約などは業務委託契約の一種ですが、都度開発工数が変化できるので、プロジェクトの状況に合わせたアプローチが出来るので、仕様と予算の柔軟性を取ることができます。

6. 結論

システム開発において、請負契約と業務委託契約はどちらも有効な選択肢ですが、それぞれにメリットとデメリットがあります。プロジェクトの性質やクライアントの関与度、予算の制約などを考慮し、最適な契約形態を選ぶことが、事業の成功に大きく影響します。

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