国内電子サインソフトウェアの市場動向(2021)-IDC

IT専門調査会社 IDC Japanは、国内電子サインソフトウェアの市場動向を発表している。

IDCでは電子サインソフトウェア/サービスを、IDCがソフトウェア機能市場として定義するドキュメントアプリケーションの中のサブマーケットの一つと捉え、「電子文書に関して安全、正確かつ法的な契約/同意手続きを行うソフトウェアおよびクラウドサービス」と定義している。

リモートワークなど新しい生活様式における新しい働き方の大きな問題として「紙での管理」が挙げられる。稟議などはその最たるものではないだろうか。
PDFを駆使するという方法もあるが、電子証明サービスの利用などを考えると電子サインソフトウェア/サービスの導入の方が手軽という場合もある。
この電子サインソフトウェア/サービス市場はDXにも関係し、どうすすむのだろうか。

2020年初頭に生じた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大を契機としたリモートワークの必要性の高まりや、押印のための出社問題を契機とした電子サインに関連した電子署名法などに関する政府見解が相次いで公表され、2020年における国内電子サイン市場は急拡大している。

IDC Japanでは2020年10月に『2020年 国内電子サイン市場動向: COVID-19を契機に拡大する利用気運』を発行し、国内電子サイン市場の動向調査を実施しているが、このレポート発行以降も2020年12月の内閣府による地方公共団体の行政手続きにおける押印見直しマニュアルの公表、2021年1月の労働者派遣契約の電子化解禁及び地方自治法施行規則の改正による利用可能な電子サイン種類の拡大、5月のデジタル改革関連法案の成立/同9月の施行、など電子サインの適用範囲拡大のための利用環境整備が進行している。

2021年2月にIDCが実施したユーザー調査によると、社内外の用途において、自社システム/クラウドサービスを合算した電子サインの利用状況は31.5%程度の企業が利用している状況であり、2020年7月の調査と比較し、利用率が1.9ポイント上昇している。
また、100人~999人規模の中堅企業において前回調査と比較して7.0ポイント利用率が上昇しており、大企業中心に利用されてきた電子サインが中堅企業にも拡大しつつある、と推察される。

国内における電子サインの利用状況(従業員規模別)


Source: IDC Japan, 12/2021

また、業種別でみると、金融/公共/サービス(不動産を含む)で利用率が相対的に低い状況であるが、2021年9月1日に施行された「デジタル改革関連法案」の施行や各省庁における書面交付/押印の見直しによって、今後電子サインの利用が浸透していくとIDCでは予測している。

その一方で、同調査における電子サイン利用における課題として最も多かったのが「法的にどこまで有効か不明瞭」という回答であった。
2020年、2021年に法的整備や見解公表を含めた電子サイン利用の環境は整ったものの、ユーザー企業における認知が十分に進んでいない状況や、電子サインによって成立した文書の証拠力に関しては、ユーザー企業の判断に委ねられる面が多く、契約によってどの種類の電子サインを用いるか、利用時に用いる当人認証にどのような手法を用いるか、本人確認を行うか否か、などの選択においてユーザー企業が参考にできるユースケースの蓄積が少ないことも要因にあるとIDCではみている。

現在、日本国内においては複数の電子サイン/ソリューションを提供するベンダーが市場参入しており、今後も参入事業者の拡大やアプリケーションソフトウェアへの電子サイン機能の組み込みなどが期待されている。

こうした市場背景によって、IDCでは電子サインを検討中のユーザー企業及びそれを支援するITサプライヤーに向けて、国内における電子サイン関連法の動向、ユーザーの利用動向の他、電子サインとの連携ソリューションの1つであるeKYC(electronic Know Your Customer/本人確認手続きを電子的に行う仕組みの総称)の概要について調査・分析し、調査レポートとしている。

IDC Japan ソフトウェア&セキュリティ マーケットアナリストの太田 早紀氏はこの国内の電子サインの動きについて、以下のように分析している。

「今後電子サインを前提とした契約様式が国内で定着するために、ITサプライヤーは電子サインの適用可能範囲及び利用シーンに即した標準ユースケースの提示、他業種への波及効果が期待できる公共/金融における電子サインの利用拡大、電子サイン導入を起点としたデジタルトランスフォーメーション(DX)推進に関するコンサルティングを積極的に行うべきである」


■編集後記

業務遂行において物理的な場所に縛られる大きな要因は”紙の書類”であるといっても過言ではない。
日本には印鑑文化が根付いており、これはこれで大切にしたいものであるが、こと業務においては実物の印章が管理されているために押印の為に会社に行くという作業が必要であった。
これが電子ファイルの中で完結できれば、紙の書類からおさらばできる。
PDFを使えば、紙の書類同様に押印も可能だが、電子認証サービスの契約や設定など、設定の手間やコストがそれなりにかかる。
その点、電子サインソフトウェア/サービスであれば、そこそこリーズナブルと思える価格で利用できる環境が構築されている。

アンケートの結果にもあるように「法的にどこまで有効か不明瞭」という部分については、法律事務所を背景に持つサービスを利用するなどすれば、その不安は多少解消できるのではないだろうか。(弁護士が合法と考える内容がサービスで提供されていると信じたい)
今後、クライアントが使っている電子サインクラウドサービスでサインした契約書が自社で使う電子サインクラウドサービスとAPIで連携するようなことができるのであれば、より気兼ねなく使われるようになるのかもしれない。

DigitaizationはDXではないが、クラウドファーストな働き方の第一歩は”ペーパーレス化”でもあるので、契約書の”脱紙宣言”をしてみるのはどうだろうか。


本レポートは、IDC Japan様のプレスリリースの内容を元に作成しております。

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