【Japan IT Week 秋 2018】レポ後編〜加速・拡大するRPAシーズ&ニーズ、ロボットが“当たり前”になれるか?〜

レポート後編は、「クラウドコンピューティングEXPO」に加え、「モバイル活用展」、「AI・業務自動化展」を紹介する。特に今回、AI・業務自動化展のブースは多くの来場者で賑わっていた。そこで、AI・業務自動化展では、昨今話題の尽きない「RPA」もたっぷりとお届けする。

この記事の目次

【クラウドコンピューティングEXPO②】

SIM不要の「世界スマホ」からUSBデバイス制御、データセンター、業務ソリューションなどなどラインアップ充実!

【Ryobi-IDC】2020年に3施設目の新データセンターが誕生−両備システムズ

本格的なクラウド時代に入り、あらゆるものが所有から利用のフェーズに入った。データセンターも同様で、近年、そのニーズは拡大している。また、首都直下地震の危惧からBCPとして地方型データセンターにも注目が集まっている。両備システムズは、現在稼働中のデータセンター「Ryobi-IDC」と2020年の設置を予定する新センターを展示した。

Ryobi-IDCはいずれも岡山県に設置されているが、先日、豪雨被害があったものの、同県は地震や台風などの自然災害が少ない県として知られる。そして、日本でもっとも懸念されるのは地震であるが、岡山には活断層がなく、震度6弱の地震が発生する確率は今後30年以内では3〜6%、震度6以上では0.1未満とされている。
また、岡山の電力を一手に賄う中国電力は電力供給に十分な余力を持ち、原発も最も近い島根原発からは100㎞以上も離れている。加えて、岡山市は海岸線から遠く離れ、かつ強固な地盤で津波や液状化のリスクもないそうである。このデータセンターに最適な立地に加え、免震構造/2系統受電および自発72時間以上連続稼働の「堅牢なファシリティ」、経験豊富なスタッフやオプションサービスの充実による「柔軟かつ安定した運用」、24時間・365日の監視やセキュリティ対策による「安全な監視環境」をRyobi-IDCの強みとしている。

Ryobi-IDC

【UnitBase】情シスもユーザーも今よりずっと楽になるWebデータベース−ジャストシステム

今、IT製品/サービスのトレンドは“誰でも使える”ことにある。誰でも、とはもちろんユーザー部門であり、情シスの手を借りずともシステム開発できるものに人気が集まる。こう書くと情シスの存在意義が薄れるようにも感じるが、結果、業務効率化はもちろん、ユーザーと情シスの連携も深まるのではないか。そう感じさせてくれるのが、ジャストシステムの「UnitBase」である。

Webブラウザだけで使えるデータベースであり、ノンプログラミングで開発できDBスキルや知識は一切不要。連携機能も、Excel/メール/AD/CSVファイル連携、決済データベース機能など標準仕様で豊富な機能を搭載している。開発・変更も簡単で選択肢もいろいろ。ここから、たとえば情シスとユーザー部門が、「双方にちょうどよいシステムを共同開発」したり、システム開発に長けている情シスが「ユーザー部門の“DBメイカー”を育成」したりもできるだろう。また、管理を情シスが行い開発はユーザー部門に任せる環境づくりも、などなど、さまざまな期待できそうだ。

UnitBase

【kintoneソリューション構築支援】kintoneをより身近に感じられ、業務に生かせるソリューション−システムズナカシマ

システムズナカシマはサイボウズの「kintone」を開発基盤としたソリューションを展示していた。

営業支援や人事&採用、工事管理、人脈相関図などさまざまなテンプレートが用意されており、kintoneの汎用性から、ユーザーは業務環境に合わせカスタムも自在に行えるという。kintonは、カスタマイズの自由度が高く柔軟なシステムである一方、目標が明確ではないと扱いきれないユーザーもいるかもしれない。その道標となるソリューションだといえる。

システムズナカシマ

【Cloud Plug】GCPとさまざまなサービスとつなげ、資産有効活用から新しい価値を創出−エニシアス

開発者が開発しやすい環境が整備されており、Googleの先端技術も機能として活用できるパブリッククラウド「GCP(Google Cloud Platform)」。仮想マシンの起動速度の素早さや選択VMの自由度の高さ、コストが分単位であることでも人気を集めている。

このGCPで、「データ分析」「システム/データ移行」「クラウド監視」「災害対策」などの支援を行うソリューションが「Cloud Plug」だ。はじめてのクラウド化や、オンプレミスとのハイブリッド環境にも対応し、GCPと既存システムとの連携からカスタマイズ、機能開発までサポートしてくれる。クラウドインフラ市場では現在、AWSの独占が続いているが、GCPの成長率は高い。その成長をCloud Plugのようなソリューションが支えていくことだろう。

Cloud Plug

【ONLINE Screen View】“超”同期で社内PCを遠隔操作−santec

社内PCをどこからでも遠隔操作できるリモートデスクトップツールが「ONLINE Screen View」だ。

まず驚くべきは、そのレスポンス。画面の差分情報を高圧縮して転送しているそうで、社内PCと手元デバイスのタイムラグはまったく感じられない。ネット環境があれば、PCのOSは問わず、タブレットでもスマホでも利用可能で、ビューロックや端末認証、リモート画面ロック、利用者権限設定など、セキュア環境も充実。また、santecサブリーダーソリューションビジネスユニット営業グループ・山下高宏氏によると、好評を集めているのが「リモートプリンタ機能」なのだそうだ。アクセスした書類を手元にあるプリンターから印刷できる機能で、万が一の書類忘れにも対応してくれる。

さらに、見逃せないのが圧倒的なコストパフォーマンスだ。1台あたりの年間コストはなんと12,000円。テレワークの導入にまさに打ってつけのサービスだといえる。

ONLINE Screen View

【モバイル活用展】

surface新シリーズ、名刺管理分野に新サービス登場!
情シスとしては、一旦閑話休題の話題だが、モバイル活用展も見ていて楽しい。気になったものを2つほど。

【Surface】pro6もgoも。国内ビジネス市場に食い込むか−マイクロソフト

筆者にとって、Surfaceは好感触のデバイスブランドだ。ヘビーユーザとはいえないが、“いつもそこにあって”安心するデバイスだからだ。数年間、SurfacePro3荒く稼働させているが、なんとか耐えてくれている。新ラインアップは、これからのリモート、テレワークデバイスとしても魅力的だと思う。

国内の2in1シェアはわからないが、ノート主力が以前と続くなか、フルOSはやはり頼もしい。

Sureface

【ホットプロフィール】名刺管理をもっとビジネスよりに−ハンモック

名刺管理ソリューションは、無料サービスの”Eight”をきっかけにここ数年注目を集めてきた。そして、データ化されたことで営業支援などビジネス活用もすぐに広まった。とはいえ、多分に成長領域を残すこの業界に、あらたな刺客が登場した。それがハンモックの「ホットプロフィール」だ。

ホットプロフィールは、名刺の情報が生む価値を最大化させる機能を豊富に持つ。名刺管理では、データ化はもとより、「GPS顧客検索」「セキュリティ対策」、アカウントセールスでは「来訪企業および個人の情報解析」。マーケティングでは「One2Oneメール」「ターゲティングメール」、「ホットリード自動発見/通知」。SFAでは「活動報告」「商談管理」「タスク管理」などなど充実。低コストで導入可能ながら、一枚の名刺を具体的なSFAやMA素材として活用できる。今後、名刺管理ソリューションは戦国時代に突入するかもしれない。

ホットプロフィール

【AI・業務自動化展】

AIの広がりと、拡大続けるRPA市場

AI・業務自動化展は熱気であふれていた。モニタでプレゼンを行なう企業も複数見られ、各所で人だかりができていた。一巡して感じたのは、サービスの手探り感や来場者の様子見が薄れたことだ。ベンダは明確なソリューションを提示し、ユーザーもじっくりと説明に耳を傾けている。

さて、今回多数の展示が見られたRPAに入る前に、いくつかAI製品を挙げておこう。

AIがメールの内容を自動判別、不満足サインを見逃さないーAI sales

まずは、AI Salesの「AIクレームチェッカー」だ。顧客と営業間でのやり取りを分析し、メール内容がクレームに発展するか否かをスコアリングしてくれるシステムだという。AIはリーガテック事業からスタートし、AIやビッグデータ解析に多くの実績を持つFRONTEO(旧UBIC)のAIを搭載している。

予期せぬ顧客からのクレーム、失注、解約のもととなる“不満足サイン”をAIが検知し知らせてくれるそうで、紹介事例では解約件数が半数以上に激減した事例もあるという。人材育成ツールとしても大きく活用できそうな印象を受けた。

・AIクレームチェッカー

「AI×ソリューション」新たなAI活用を考えるーNaFLA

設備分野へのソリューションも展示していたNaFLA(Nakashima Future Laboratory)のAI製品も興味深い。

「AI×図面」は、元請けからTIFFなどの画像形式で提供される図面をAIが分析。物体検知を行い、従来人の目で確認・集計を行なっていた、図面上の機器部材の種類や識別、集計を行い、作業効率を大幅に向上させてくれる製品だ。

NaFLA

次はAIや業務自動化関連で注目されているチャットボットとRPA 。会場には数多くのチャットボットサービスやRPAサービスが展示。働き方改革を背景に”ブーム”到来といったところか。

ITコンサルタントが考えた”情シス”チャットボットーハイブリィド

『情シスNavi.』の運用元であるハイブリィドも出展し、製品紹介を行っていた。ハイブリィドはITコンサルティングを通じて感じていた様々な企業における”情シス”課題を解決すべく、この開発を行ったという。

「IT-Manager SD」は、各種問合せへの対応を自動化してくれ、且つ、問合せ内容をデータとして一元管理・可視化する。単純な問い合わせ代行だけではなく、生産性を阻むボトルネックを把握でき、改善の貢献度合いなども計測できるところは、コンサルティングのノウハウか。
また、情シス業務の足かせになりがちなPC貸与申請などの「各種申請業務」もチャットボット上で簡単に行える機能も搭載している。
「IT-Manager SD」のAIおよび自然言語処理の開発は、産学連携によるもの。山口大学・間普慎吾准教授(大学院創成科学研究科 工学系学域知能方法工学分野整体情報システム工学研究室)と機能検討・実装を行ない開発に至っている。

・IT-Manager SD

【WinActor】シェアトップの国産RPAツール−NTT Data

RPAの代名詞となった感もあるWinActor。非常にシンプルな操作性、かつシナリオ作成もプログラミング知識不要で容易。Excelやブラウザ、業務システムなど、WindowsPCから操作可能なさまざまなアプリに対応している。

加えて、メリットとして大きいのが「純国産の完全日本語対応」だろう。ITにあまり馴染みのない企業でも、モチベーションを維持し業務の自動化にチャレンジできるのは、初導入にとって大きな魅力だ。また、すでにWinActorで成果を挙げ導入拡大を考える企業向けに、シナリオの集中管理やロボットのガバナンス確保に活用できる管理統制ロボ「WinDirector」の紹介もあった。

WinActor

加えて、WinActorブースでは、「RPA研修」を複数展示していた。Blieshipの「RPA BOOT CAMP」では、現場で実際に使われている業務アプリやシステムを研修題材に活用し、実業務に活かせるWinDirectorのシナリオ作成スキルを学べる。また、ヒューマンソリシアの「RPA導入支援トレーニング」では、シナリオ作成中・上級者がより実践的なスキルを磨けるほか、まったくRPAに馴染みのない初級者のための研修も提供する。

RPA BOOT CAMP

RPA導入支援トレーニング

【Biztex cobit】日本初のクラウドRPAを提供−BizteX

2015設立のITベンチャー・BizteXは国内市場に先駆けて発表した、SaaS型RPAを展示。従来のサーバインストール不要で即日RPAを導入できる。クラウドのメリットを生かした、低コストかつロボット稼働に応じた従量課金制も魅力だ。また、SaaS型であることからユーザーの声を反映したスピーディな機能改善や新機能の活用も期待できる。

Biztex cobit

【Auto Mateクラウド】Auto Mateをクラウドで提供−Zation

RPA×クラウドの胎動が始まっている。ZationはアメリカのITベンダ・HelpSystemsのRPA「Auto Mate」をクラウドで利用できるサービスを展示していた。Auto Mateは、コアなRPAとしての評価があり、メールやブラウザやオフィス製品などの自動化はもとより、個別に構築される基幹システムや特殊な外部システムの自動化にも対応する豊富な機能を搭載している。今回クラウド型となったことで、導入/ランニングコストの低減でき、かつBCP対策としても検討できる。

Auto Mateクラウド

【MACRO MAN】導入完全無料のRPA登場!−エーアイエル

「Excel女子」など、ユニークな人材派遣サービスで知られるエーアイエルは「導入完全無料」という驚きのRPA「MACROMAN」を展示していた。導入に加え、ロボットを何台つくってもタダだ。

エーアイエルRPA推進チームコンサルタント・若菜季佳氏によれば、MACROMANはもともと自社の業務課題から生まれたという。「以前までは、求人の応募者データをExcelで集中管理していました。複数の求人サイトからデータを手作業で転記しており、毎日1時間半ほどの業務が発生していました。それがMACROMANを活用すれば3分ほど。このメリットを、幅広い企業さまにまず実感していただけるよう、導入を完全無料としました。弊社は人財ソリューションを主事業としていますので、導入後のサポートやスポット/フル常駐など、複数のRPAサポートプランをご検討いただくサービスモデルにしております。」

MACROMAN

【RPA導入ソリューション】メジャーRPAの導入サポートサービス−systena

これまででわかるように、さまざまなRPAが登場している。今後課題となる「どのRPAを選ぶか」といった企業の悩みに対して、システナはメジャーRPAの導入サポートを展示していた。同社は、金融、製造、通信、商社/小売など、さまざまな業界にRPAの導入支援実績を持つ。取り扱うRPAは「WinActor」「BizRobo」「Automation Anywher」。個別最適が欠かせないRPAゆえ、導入支援ニーズは今後一層増えていくことだろう。

システナ

【RPA導入支援コンサルティング】効率的にRPAを全社展開させるための包括的コンサル−イグニッション・ポイント

メジャーRPAのひとつ「Uipath」との協業でも知られるイグニッション・ポイントは、これまでに培ったノウハウを生かしたRPA導入支援コンサルティングを展示していた。「対象業務の選定」「PoC」から、「開発・保守運用ルール設定」「RPA開発支援」「部門推進・運用体制構築支援」「人材育成支援」など包括的なサポートを提供する。

同社・並木香保里氏によれば、業務自動化もとより、昨今、RPAは「女性のスキルアップ」としても注目を集めているという。“RPA女子”なる言葉もあるそうだ。

イグニッション・ポイント

【DX Suite】導入・運用に知識不要。誰もが導入できるAI-OCR−AI inside

RPAではないが、RPAと組み合わせることで高いシナジー効果を期待できる「AI-OCR」もここでひとつ。

AI-OCRの牽引役といわれるAI inseideの「DX Suite」は、手書きの大量書類を高精度で仕分けデータ化する。昨今、NTT DATAとパートナーシップを組み、WinActor×DX Suiteのサービスも提供された。DX Suiteはクラウド、ハイブリッド、オンプレミスそれぞれに対応し汎用性が高く、事前のチューニングや学習も不要だ。

DX Suite

【取材後記】

世界のテクノロジの潮流と日本が抱える働き方の課題。そういったものをない混ぜして、開催されたJapan IT Week秋。本格的なクラウド時代に突入しつつあり、先端テクノロジは普及予兆のフェーズに。また、今後はサービス価値とユーザーのリテラシが激しく問われることになる。

日本は今、激動の時代に突入している。2020年も然ることながら、来年には平成が終わりを告げ、70歳への定年引き上げなども検討されてはいるが、労働人口減は今後も深刻度を増す。この時代のなかで、有用なIT、賢いユーザーとは果たしてなにか? 情シスNavi.では、そこをテーマとし引き続き追っていく。平成最後となる「Japan IT Week春2019」が今から楽しみである。

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】

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