日本企業のクラウド・コンピューティングに関する調査結果-ガートナー

ガートナー ジャパン株式会社 (以下ガートナー) は、日本企業におけるクラウド・コンピューティングに関する2021年の調査結果を発表している。
この調査は、日本の企業や組織がITに関して抱えるさまざまなニーズや課題を分析するために毎年行われているものである。
2021年調査では、日本でのクラウド・コンピューティングの利用は次のステージに進んだことが明らかになったと言えよう。

クラウド・コンピューティングは普及・拡大フェーズに

ガートナーが2021年4月に実施した調査の結果、日本におけるクラウド・コンピューティングの利用率の平均 (*) は、2020年調査から4ポイント増の22%となった。 (図1参照)

図1. 日本におけるクラウド・コンピューティングの利用状況

出典:Gartner (2021年6月)*クラウドの項目の平均:この平均値は、単純にSaaS、PaaS、IaaSといった各クラウドの項目の利用率の合計を項目数で割ったもの。よって、これは実際の利用率ではないため、あくまでもトレンドを見る際の参考値として捉える必要がある。

 

クラウド・サービス別に見ると、2021年調査ではSaaSが2020年調査から8ポイント増の39%となっている。この背景には、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の影響によるWeb会議などのテレワーク/リモートワークソリューションの利用拡大などがあると考えられる。アナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントの亦賀 忠明氏は次のように述べています。「今回の結果には、この1年で生じたさまざまな要因が影響していると考えられます。Amazon Web Services、Microsoft Azure、Google Cloudといったハイパースケーラーからは、マイグレーションやクラウド・ネイティブの活用など、クラウドに関するさまざまなアピールがなされました。日本政府は、政府共通プラットフォームへのAmazon Web Services (AWS) の採用を発表し、ユーザー企業がクラウドを『自分で運転』する機運も、『内製化』というキーワードの露出が増えるに従って高まりました。それを受けて、国内の大手ベンダーや多くのシステム・インテグレーターもこれまで以上にクラウドに積極的になっていることが、先行ユーザーだけでなく、広く日本全体のクラウドの推進を後押ししている大きな要因になっているとみられます」

 

外部クラウドとオンプレミスへの投資意欲は共に拡大

この調査では、外部クラウドとオンプレミスのどちらにより多く投資すると考えているかも尋ねている。
外部クラウドへの投資意向については、これから1~2年かけて外部クラウドの利用を増やすとの回答が2021年調査では過去最高の55%であった。
しかしながら併せて、オンプレミスへの投資意欲も拡大しているのが興味深い。

前での亦賀氏はこの傾向について次のように述べています。「過去の調査では、外部クラウドへの投資意向と実際のクラウドの利用状況が相関しているとはいえない結果でした。しかし今回、ようやく投資意向と実際の利用状況が同じ傾向を示しました。これは、日本企業が『頭で分かっても体が動かない』状態から、『頭で分かって体も動く』状態へと変化したことの表れと言えます。こうした変化はこの10年で見ても大きなものであり、クラウドが次のステージへと進んだ、すなわち、様子見・試行導入フェーズから普及・拡大フェーズに入ったと捉えるべきです。インフラストラクチャ/オペレーション (I&O) のリーダーは、クラウド戦略の策定と推進を加速させる必要があります」

 

クラウドに対するマネジメント層の理解度向上が大きなチャレンジに

更に調査では、企業や組織がクラウドのスキルを身に付けるためにどの程度投資しているかについても尋ねている。
現場でクラウドのスキルを高めようとする動きは年々強まっており、2021年調査において、「クラウドのスキルを重要と認識しており、積極投資している」という回答は、2020年調査から9ポイント増の34%に達している。

また、クラウドに対する上司の理解度については、「理解しておらず困っている」という回答が4割近くに上り、「理解しているとは言えない」という回答と合わせると、7割の企業では、マネジメント層の理解度の問題が生じている実態が浮き彫りになっている。 (図2参照)

一部の企業ではオンプレミス回帰という声も聞こえるが、IT人材不足という課題を考慮するとインフラを維持管理するという部分はクラウドに任せてしまった方が、情報システム部門が他のことに集中できるといえよう。

図2. クラウドに対する上司の理解度と課題

出典:Gartner (2021年6月)

2021年に入り、「クラウドや人工知能 (AI) のスキルを (IT部門を中心とする) 管理職の評価基準に加えることについてどう思うか」という質問が複数の企業からガートナーに寄せられているといい、このような状況は「スキルの獲得は管理職には関係ない」とはもはや言っていられない状況を示唆している。
仮に現場の従業員がスキルを身に付けたとしても、管理職がクラウドをまったく理解していなければ、現場への適切かつ明確なディレクションをすることも、現場の活動を評価することもできない。また、現場の従業員が今抱えている課題として、管理職への説明に時間がかかることが挙げられますが、それでは時代が求める変化対応のスピードには付いていけません。少なくともクラウド(SaaS)という概念は理解し、”当て勘”くらいは働くようになっている必要があるでしょう。

更に亦賀は次のように述べています。「時代が変わったと認識し、すべての管理職がクラウドのスキルを身に付けるための時間と機会をつくることがI&Oリーダーには求められます。これは、社長やCIOなどの役員クラスの管理職についても当てはまります。クラウドが当たり前になる時代においては、『クラウドは自分には分からない』という状態ではその役割が務まりません。I&Oリーダーは、クラウドを時代が要請する新たなリテラシーと捉え、『本物のクラウド』のスキルを獲得し、クラウドを自分で運転し、さらには駆使できるようにすべく、行動を加速させる必要があります」

ここにきてIPA/DSS/JDLAが共同で”Di-Lite”を提唱するなど、「デジタル」の全体像を理解できるようにし、最新の専門的なリテラシーを総合的に学ぶなど、クラウドを使う側にもスキルが求められるのです。

 

関連する内容は、ガートナーのレポート「日本におけるクラウド・コンピューティングの状況:2021年-行動を加速すべき時が来た」で詳細を見ることができる。


Gartnerについて

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本レポートは、ガートナージャパン様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
ソース:https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20210614

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