2022年CIOとテクノロジ・エグゼクティブ・サーベイ-ガートナー
ガートナーは世界のCIO約2,000人を対象にした調査「CIOとテクノロジ・エグゼクティブ・サーベイ」の結果を発表。
ビジネス・コンポーザビリティとは何か? 次の取り組みへのヒントを探してみるのはどうだろうか。
この記事の目次
2022年に企業はビジネス・コンポーザビリティの採用を迫られる
Gartnerの調査では、企業が2022年以降のディスラプションの中で成功を収めるためには、ビジネス・コンポーザビリティを採用すべきであることが明らかになっている。この調査は、世界のCIOとテクノロジ・エグゼクティブを対象に毎年実施しているものである。参考までにこの調査に回答した日本からの回答者数は約200人であった。
ビジネス・コンポーザビリティとは、ビジネス・ニーズの変化に合わせて組織が迅速に革新・適応できるようにするマインドセットおよびテクノロジ、一連のビジネス運営能力を指す。その土台となるのは、ビジネスへの大志の実現に必要な規模とスピード感を達成するために、主要原則であるモジュール化をビジネス資産に適用することです。
アナリストでバイス プレジデントのモニカ・シンハ (Monika Sinha) 氏は、次のように述べている。
「ビジネス・コンポーザビリティは、不安定な状況に対処するための手段です。ビジネス・コンポーザビリティが高い企業のCIOの63%は、過去12カ月のビジネス・パフォーマンスが同業者や競合他社よりも優れていたと回答しています。そうした企業は、テクノロジを活用して新たなバリュー・ストリーム (価値の流れ) を追求する能力にも長けています」
AI、クラウド、セキュリティ・テクノロジへの投資がビジネス・コンポーザビリティをサポート
人工知能 (AI) と分散クラウドの2つは、ビジネス・コンポーザビリティが高い企業の大多数が既に導入しているか、2022年に導入を予定している主要なテクノロジである。これらのテクノロジがビジネス・コンポーザビリティを推進するのは、テクノロジ能力のモジュール化を可能にするからだ。
サイバーセキュリティと情報セキュリティは、2022年に投資が計画されている最大のテクノロジ領域であり、全回答者の66%は関連投資が前年比で増加すると見込んでいる。これに続いたのは、ビジネス・インテリジェンス/データ・アナリティクス (51%)、クラウド・プラットフォーム (48%) であった。
前出のシンハ氏はセキュリティの重要性について次のように述べている。
「ビジネス環境が一層厳しさを増している中、サイバーセキュリティへの投資は引き続き必要です。ビジネス・コンポーザビリティが高い企業は、サイバーセキュリティ・インシデントから迅速に復旧でき、さらにはその影響を最小限に抑えられる可能性があります」
ビジネス・コンポーザビリティが高い企業はITを有効に活用している
ビジネス・コンポーザビリティが高い企業では、ビジネス・コンポーザビリティが中程度または低い企業よりも2022年の売上高とIT予算が大幅に増加する見込みという。ビジネス・コンポーザビリティが高い企業のCIOとテクノロジ・エグゼクティブは、2022年の売上高とIT予算の平均伸び率をそれぞれ7.7%、4.2%と予測しているが、ビジネス・コンポーザビリティが低い企業ではそれぞれ3.4%、3.1%にとどまっていた。
この差についてシンハ氏は次のように述べています。
「ビジネス・コンポーザビリティが高い企業のほとんどは、継続的かつ反復的に戦略的プランニングと予算編成を行っており、変化に容易に適応しています。投資が大幅に不足している領域がほかになければ、CIOはコンポーザビリティに投資することが可能です。コンポーザブルな手法による設計ができるIT開発者とビジネス・アーキテクトを有する場合は、これが特に当てはまります」
世界のIT予算は過去10年以上で最も急速に増加すると見込まれており、2022年のIT予算総額の伸び率は、全回答者平均で3.6%となっている。
ビジネス・コンポーザビリティの3つの領域
当面は、不安定な状況が続くことになりますが、これがビジネスの推進要因にもなります。
このような状況の中でも、ビジネス・コンポーザビリティの3つの領域、すなわちコンポーザブル・シンキング、コンポーザブル・ビジネス・アーキテクチャ、コンポーザブル・テクノロジを進化させることができるのは、CIOなのです。
コンポーザブル・シンキング
コンポーザビリティが高い企業でリーダーシップを発揮しているCIOは、顧客ニーズから財務モデルに至るまで、ビジネス状況は変化することが多いと認識しており、新たな状況に対応して改革するアクションを最も素早く実行できるチームに権限を付与している。
例えば、コンポーザビリティが高い企業の半数以上は、高い信頼に基づいた組織文化を促進し、従業員による自律的な意思決定を奨励している。
その割合は、コンポーザビリティが中程度の企業の2倍、コンポーザビリティが低い企業の6倍に上っています。
シンハ氏は次のように述べている。
「ビジネス・コンポーザビリティが経済全体にわたって一様に高くない理由は、ビジネス・シンキングを見直す必要があるからです。従来のビジネス・シンキングでは変化をリスクと捉えますが、コンポーザブル・シンキングは、加速する変化のリスクを操り、新たなビジネス価値を創出するための手段です」
コンポーザブル・ビジネス・アーキテクチャ
工業化時代のビジネスは、安定性と、予測可能で緩やかな変化を前提に設計されている。デジタル時代のビジネス・アーキテクチャは、不確実性と継続的変化を念頭に置いて設計する必要があるといえる。
コンポーザブル・エンタプライズは、効率を高めるためではなく、適応力を向上させるために最適化を行う。システムおよびプロセス、従業員は、あらかじめ決められた1つのユースケースや目的に対応するものではなくなっているのだ。
シンハ氏は次のように述べている。
「デジタル・ビジネス・イニシアティブは、ビジネス・リーダーがこれを単なるITプロジェクトの1つと捉えてIT部門任せにし、その実装結果に対する説明責任を回避してしまうと失敗します。一方、コンポーザビリティの高い企業は、大半のCIOがここ数年実現しようとしてきた変化を反映して、デジタル成果に対する分散型の説明責任を受け入れ、ビジネス部門とIT部門が融合した多分野混成チームを形成してビジネス成果を推進しています」
コンポーザブル・テクノロジ
今回の調査では、コンポーザビリティが高い企業のCIOとテクノロジ・エグゼクティブが積極的に推進しているのは、反復型のテクノロジ開発、システム/スタッフ間でのデータ共有、継続的なチーム横断型コラボレーションのサポート、データ/アナリティクス/アプリケーションの統合能力の構築であることが明らかになった。
シンハ氏は次のように述べている。
「ビジネスの運営にはテクノロジが必要ですが、コンポーザブル・ビジネスを展開するためにはテクノロジ自体もコンポーザブルでなければなりません。新しいシステムやパートナーとの迅速な統合を支えるインフラストラクチャから、アイデアの交換をサポートするワークプレース・テクノロジに至るまで、コンポーザビリティをテクノロジ・スタック全体に拡張することが求められます」
「コンポーザビリティが中程度または低い企業のCIOは、ビジネス・コンポーザビリティの3つの領域を理解して組織の俊敏性を高め、自社のビジネス環境の急速な変化に対処できるよう万全の体制を整えなくてはなりません。これは段階的なプロセスですが、2022年以降に向けて不可欠なものです」
備考:ビジネス・コンポーザビリティが高い企業とは
Gartnerの2022年CIOとテクノロジ・エグゼクティブ・サーベイでは、世界85カ国のあらゆる主要業種に属する2,387人のCIOとテクノロジ・エグゼクティブから回答を得ている (うち日本からの回答者数は212人)。回答したCIOとテクノロジ・エグゼクティブが所属する企業の売上高/公的機関の予算の総額はおよそ9兆米ドルであり、IT支出総額は1,980億米ドルに達している。
今回の調査では、コンポーザブル・ビジネスの3つの領域の活用度に応じて、回答者であるCIOが属する企業を3つのビジネス・コンポーザビリティ・レベル (「低い」「中程度」「高い」) に分類している。
より詳細を知るには、「The 2022 CIO and Technology Executive Agenda: Master Business Composability to Succeed in Uncertain Times」で確認することが可能だ。
Gartnerは来る11月16~18日に、「Gartner IT Symposium/Xpo 2021」をバーチャル (オンライン) で開催する。
Gartner IT Symposium/Xpo 2021では、CIOがどのように逆境に対処するか、また事業を継続していくためのデジタル・ビジネス戦略立案ツール/テクニックをどのように見つけていくかについて、さらなる分析を紹介する。
このコンファレンスに参加することにより、ビジネス課題の解決とオペレーションの効率化を目的としたIT活用法についての知見を得られるであろう。
また、この記事に関連した内容は、前出のシンハ氏が「2022年のCIOとテクノロジ・エグゼクティブのアジェンダ:ビジネス・コンポーザビリティを使いこなす」(11月16日、14:25~14:55) と題した講演で解説する予定である。
本記事は、ガートナー・ジャパン様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20211108
尚、プレスリリースの元となる資料は、ガートナー・ジャパン様が同社の海外で発信したプレスリリースを編集し、和訳したものになります。
資料の原文を含めGartnerが英文で発表したリリースは、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/en/newsroom/