RPA国内利用動向調査2020-MM総研
1月27日、MM総研はRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)国内利用動向調査の結果を発表。
RPAは主にデスクワークなどで発生する定型作業を、パソコンの中にあるソフトウェア型のロボットが代行・自動化する技術であるが、国内で利用されている主なRPA17製品を対象に導入状況や浸透率、各種満足度、今後の利用意向などを分析した。
<サマリー>
■ 企業のRPA導入率は38%、大手企業に限定すると51%に到達
■ 大手企業の浸透率では、UiPathが1位
■ AI×RPAの組み合わせ利用が高度化・適用範囲の拡大が進む見通し
年商50億円以上の国内企業(全業種)を対象とし、情報システム部門、企画部門の担当者にオンラインでのアンケートを実施。1021件の有効回答を得た。
この記事の目次
■新たな指標「浸透率」を設定、現状をより適正に反映
MM総研では導入企業内でRPAがどの程度広く使われているかを測るため、新たに「浸透率」という指標を作成。浸透率はRPAを活用している部門数、PC台数、従業員数などで算出する。
前回調査時点(19年1月)で普及率は3割を超え、企業内に広く深く浸透するステージに移行し始めているとみられる。このため、導入社数シェアもしくは金額シェアにもとづいた従来指標「導入率」に加え、企業内でのRPA展開度合いを測る新たな指標の浸透率を設定、現状をより適正に反映させている。
■大手企業の導入率が50%超え
2019年11月時点でのRPA導入率(※2)は38%であった。2018年6月時点は22%であり、約1年半で16ポイント増加(グラフ1)。
導入率を企業規模別にみると、年商1,000億円以上の大手企業は51%、年商50億円以上から1,000億円未満の中堅・中小企業は25%となった。RPA導入率を業種別にみると、金融で59%と最も高い。金融以外の業種でも普及率も高く、業種に関わらず普及が進んでいる。前回調査(2019年1月)に比べて特に導入率が伸長した業種は、学校・医療福祉および流通であった。
グラフ1: RPA導入率推移
<データ出典:MM総研>
(※2)RPA導入率:社数ベース。回答企業全体(n=1,021)を分母、RPAを「利用している」と回答した企業を分子として計算。計算の関係上、構成比の合計は100%にならないことがある。
■大手企業ではUiPathが浸透率1位
大手企業ではすでに社数ベースの導入率が過半を超えた。今後のRPAツールの活用度合いを分析するため浸透率(※3)を比較した。大手企業における浸透率を見ると、UiPathが45%と最も高い浸透率となった(グラフ2)。ユーザー、パートナー企業へのサポートとAIなどの組み合わせや運用管理といったエンドツーエンドのソリューションが奏功していると分析する。UiPathに次いで、BizRobo!が40%、WinActorが38%となった。今後は浸透率を上げる取り組みが一層重要になるとみられる。
また、本調査結果において、社数シェアを比較すると、1位はWinActor、2位がBizRobo!、3位はUiPathとなった。
グラフ2:大手企業におけるRPAブランド別の浸透率
<データ出典:MM総研>
(※3)浸透率は企業内でのRPA展開度合を測る指標。部門数、PC台数、従業員数などで測定している。上グラフの浸透率は部門ベース。各RPA導入企業が設置している部門数を分母、RPAを利用している部門を分子として計算。
■企業はRPAを比較検討、今後は利用拡大が本格化
RPA導入企業(n=389)に対し、利用している製品数を聞いたところ2つ以上の製品を利用している企業が約半数を占めた(グラフ3)。複数利用している理由(複数回答)として、比較検討・テストが36%と最も高かった。この層は2018年度に導入した割合が高く、ライセンス切れとなる2019度~2020度内に結論を出す可能性が高い。ちなみに、導入企業のうち、既にRPAの切り替えを経験している企業は、1割にも満たないが、切り替えを準備・検討している企業は約3割程度存在する。
一方で、複数利用している理由として、互換性・使い分けが27%、安定稼働・リスク分散が17%となっている。既に比較検討を終え、複数利用を継続する層も存在するとみられる。
また、RPA導入企業に今後の利用方針を聞いたところ、「利用拡大に前向き」が80%となった。反対に、利用中止など後ろ向きな企業は2%にとどまった。この傾向は前回調査とも同様の結果であり、導入企業の業務自動化に対する期待は依然として高い。RPAの更なる高度化や適用範囲の拡大など、より深く使いこなすニーズは顕在化しており、特に大手企業でその傾向が強いことがわかる。
利用拡大にあたっては、人材、予算・コスト、組織間連携、業務プロセスなど多様な課題が存在するが、現時点ではRPA人材の不足が大きいようである。
グラフ3:RPA複数利用の状況
<データ出典:MM総研>
※「わからない」などの回答を除いた構成比を掲載
■AIとRPAのセットでの活用が進む
本調査では、前回に引き続きAIの導入率(※4)についても調べている。AI導入率は、2019年11月時点で36%(グラフ4)。
2018年6月時点では26%であったため、約1年半で10ポイント増となった。RPAほどではないが、着実な伸びを示している。
AI導入率をRPA導入段階別(①RPA導入企業、②準備・検討中企業、③未導入企業の3区分)比べると、①のRPA導入企業ではAI導入率が77%に達するが、②準備・検討中企業では12%、③未導入企業では9%にとどまった。RPAを活用する企業とそうではない企業で、AIをはじめとするデジタル活用の差が顕著に表れる結果となった。
RPA導入企業では、AI-OCRやチャットボットをはじめ、さらなる業務自動化にむけた追加投資も始まっている。実際に、導入企業の約半数は、RPA以外のシステムも新規で導入したと回答している。業務効率化に向けた活動が始まっていることの表れであろう。
グラフ4: RPA導入段階別のAI導入率
<データ出典:MM総研>
(※4)AI導入率…社数ベース。回答企業全体(n=1,021)を分母、PoCも含みAIを「利用している」と回答した企業を分子として計算。AIチャットボットやAI-OCRなどAIを含むソリューション・サービスを導入している企業も含まれる。計算の関係上、構成比の合計は100%にならないことがある。
<調査概要>
1. 調査対象 :年商50億円以上の国内企業
2. 回答件数 :1,021社 ※全業種を対象とし、情報システム部門、企画部門の担当者にアンケートを実施
3. 調査方法 :Webアンケート
4. 調査期間 :2019年11月5日~11月11日
<調査対象としたRPA(17製品)>
1)BizRobo!
2)WinActor
3)UiPath
4)BluePrism
5)Advanced Process Automation
6)Autoブラウザ名人
7)Automation Anywhere
8)PegaRPA
9)CELF
10)SynchRoid
11)FUJITSU Software Interdevelop Axelute
12)NEC Software Robot Solution
13)Nice Robotic Automation
14)Verint RPA
15)ipaS
16)RPA Express(WorkFusion)
17)Robo-Pat
(順不同)
<その他>
本調査では、国内で年商50億円の企業1,021社から回答を得た。MM総研では調査結果を企業規模別(年商別)、業種別、従業員数別、担当部門別(情報システム部門、企画部門)、RPA製品別、導入ステータス別(導入済み、検討中、未導入)、浸透率別、導入規模別(全社導入、一部部門での導入)などで分析している。
本レポートは、MM総研様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
ソース:https://www.m2ri.jp/news/detail.html?id=391