使える! 情シス三段用語辞典81「LTSC(LTSB)」

常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。『情シスNavi.』では数々のIT用語を三段階で説明します。

一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明

取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?

一段目 ITの知識がある人向け LTSC(LTSB)

Windows 10を導入する上で、LTSC(Long-Time Servicing Channel)/ LTSB(Long Term Service Branch)の説明の前に“サービス チャネル”とは何かを知っておきましょう。サービス チャネルは、ユーザーを機能更新プログラムおよび品質更新プログラムの展開グループに分割する方法です。 これによりMicrosoft社より提供されるWindows Updateをコントロールして端末運用が行えます。
LTSCついてさらに詳しく知りたい方は「Windows 10 LTSBとは?メリットやデメリット、活用方法を解説」をご確認ください。

今でこそLTSCと呼ばれていますが、旧称はLTSB:Long Term Service Branchと呼ばれ、2017年から現在のLTSC:Long-Time Servicing Channel という名称に変更されました。
また、Windows10では、数年ごとに発生する大規模なアップデートから、年に2回リリースされる「機能更新プログラム」によって提供されることになりました。(但し、セキュリティ修正については、毎月「品質更新プログラム」がリリースされます。)

Windowsの展開に必要な作業レベルとタイミングのイメージ

<データ出典:Microsoft

それぞれの更新に含まれる変更点は従来よりも小さく、従来のような大幅な差異が感じられなくなります。その反面、半年に一度の更新(半期チャネル)は情シスの負担を大きなものにします。工場や医療機器の制御、ATMの運用、基幹業務システムなどミッションクリティカルな用途では、より頻度の低い機能更新サイクルが必求められます。

前述のようにWindows 10では、使用目的に応じた機能更新プログラム適用の周期(サービスチャネル)で、グループ分けをしています。

サービスチャネル名 対応エディション 概要 主な利用者例
Windows Insider Preview 事前検証用
正式リリース前のプログラムを試せる
・IT管理者
・ソフトウェア開発者
Semi-Annual Channel

Targeted(SACT)

・Home
・Pro
・Education
・Enterprise
自動的に最新の機能更新プログラムを適用 ・Windows Homeユーザー
・企業内のパイロット展開対象ユーザー
Semi-Annual
Channel (SAC)
・Pro
・Education
・Enterprise
検証済み(安定稼働)が前提の更新
SACTリリースから4ヵ月後に機能更新プログラムを適用
・企業内の一般ユーザー
Long-Term Servicing
Channel (LTSC)
・Enterprise LTSC 機能更新プログラムは適用されない ・特定業務用端末使用ユーザー

 

この中で、半期チャネルでの更新を望まない場合に用意されたのが、LTSCになります。これはWindows 10 Enterpriseの別エディションのため、使用するにはWindows 10 Enterpriseではなく、Windows 10 Enterprise LTSCのパッケージやライセンスを購入する必要があります。

 

また、ここでWindows 10 Enterprise LTSCのライフサイクルポリシーについても触れておきましょう。LTSCはWindows 10の他エディションと異なり、機能更新プログラムは適用されません。よって、固定ライフサイクルポリシーが適用されます。

エディション 提供日 メインストリーム サポートの終了日 延長サポートの終了日
Enterprise LTSC 2019 2018年11月13日 2024年1月9日 2029年1月9日
Enterprise 2016 LTSB 2016年8月2日 2021年10月21日 2026年10月13日
Enterprise 2015 LTSB 2015年7月29日 2020年10月13日 2025年10月14日

 

ではここで、通常のWindows 10エディションと比較したLTSCのメリット・デメリットを考えます。

LTSCのメリット:

1.今までの運用方法をそのまま使える
LTSCの品質更新プログラムは10年間リリースされ続けるため、これまでWindows7や8.1などで行ってきた運用方法をそのまま使うことができます。

2.外部から遮断されたネットワークでも長くサポート
外部からネットワーク接続を遮断された環境においても、余計なアップデート作業が発生しないので、運用が比較的容易です。

3.導入に必要なライセンス費用を節約できる
LTSCは機能更新プログラムを適用せず、SAライセンスが不要なので費用を節約できます。

 

LTSCのデメリット:

1.Windows 10の新機能を評価できない
LTSCはWindowsのストアからの新プログラムダウンロードができません。効率的な業務改善の機会を逃してしまうこともあります。

2.プロセッサのサポートを考慮しなければならない
LTSCについては「リリース時の最新プロセッサまでしかサポートしない」というポリシーが存在します。10年の間にサポート対象プロセッサを搭載するパソコンの在庫がなくなった場合、最新バージョンLTSCへのアップデート対応が必須です。

 

LTSCはWindowsの新機能を利用できなかったり、サポート対象プロセッサを搭載するパソコンの在庫状況に制限を受けたりと、デメリットもあります。LTSCの使用は特定業務向けシステムに限定した方が合理的でしょう。

 

二段目 ITが苦手な経営者向け

とある製造会社の社長さんが、情シスの十文字さんと話しています。

社長: 十文字さん、導入した製造工程管理システムのパソコンは問題ないかな?

十文字さん:特に問題はないですね。Windows 10になってから機能更新プログラムの適用が6ヶ月ごとになってしまいましたが、機能更新によってシステムの動作不具合が起こると業務に支障が出てしまうこともあるので、今回、製造工程管理システムのパソコンだけは、機能更新プログラムを適用しないLTSCを導入しています。これにして正解でしたね。

社長:そうだったのか。LTSCはMicrosoftから10年間サポートされるようだから、しばらくアップデートの必要もなく、検証作業の頻度も減りそうだね。

十文字さん:いやいや、そう簡単にはいかないのですよ。実はパソコンに使われているプロセッサのサポートという問題もありまして…。LTSCだとリリース時の最新のプロセッサしかサポートしないというポリシーがあります。なので、サポート対象プロセッサを搭載したパソコンの在庫がなくなると、LTSCは運用できなくなってしまいます。パソコンの寿命を考えると確実に10年よりも早いタイミングで、LTSCをアップデートする必要があるかもしれません。同じパソコンが売られている間に交換用にあと10台、買っておいてもいいですかね?

社長:うむむ。そう甘くはないということか。引き続きパソコンの管理作業をよろしく頼むね。

 

三段目 小学生向け

今回のテーマは「LTSC(Long-Time Servicing Channel)/LTSB(Long Term Service Branch)」。OSの更新プログラムを変えなくてすむお話です。Windowsは「OS」と呼ばれるプログラムで、きっと皆さんも使ったことがあるでしょう。

Windows10より前のWindowsでは、プログラムを変えるかどうかは選べましたが、Windows10になってから、Microsoftから命令があった場合にWindows10のプログラムを必ず新しいものに変えるという仕組みになりました。

プログラムが新しくなるならいいじゃないか、と思う人もいることでしょう。しかし、その新しいプログラムが自分たちが使う環境にとって、絶対に良いものかというと、そうではありません。

ここで、あなたの靴を思い浮かべてみてください。靴ひもをよくのびるゴムに変えてください、と言われたら変えたいですか?

よくのびるゴムに変えてしまったら、靴がずるずるとぬげやすくなってしまいますよね。靴がぬげるだけならまだいいのですが、歩いたり走ったりしにくくもなってしまいますよね。

前までは、靴ひもを変えるかどうか選べたのですが、今は変えろと言われたら必ず変えなくてはならないのです。

例えば、あなたがかけっこの選手だったとしましょう。靴ひもを変えてしまったら転ぶのがこわいので、ぜったいに靴ひもは変えたくないですよね?

Windows10でも、同じようにプログラムを変えたくないという人がいます。そんな人のために、プログラムを変えなくてもすむWindows10の「LTSB(Long Term Service Branch)/LTSC(Long-Time Servicing Channel)」が新しくできたのです。

 

 

さて、皆様のご理解は深まったでしょうか?

 

【執筆:安藤 隼人】

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