【情シスTips】もう怖くない!サービスとして活用するWindows10(第5回)

JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)の情報・産業システム部会 PC・タブレット事業委員会傘下のPC・タブレットユーザサポート専門委員会では、継続的にアップデートされるWindows 10とうまく付き合う方法として、「Windows 10のメリットを活用するためのポイント」をまとめ、移行のためのユーザーの準備を促しています。

そもそもWindows10とはどのようなものなのか? 導入すると何が起きるのかなど、これまでのWindows OSとの違いなどを交えて、シリーズで解説します。

「サービスとしてのWindows:Windows as a Service」の仕組みを把握し、情報システム部門やその役割を担っている方々には、Windows10の正しい理解をしていただき、万全の体制でWindows10の導入をしましょう!

最終回となる第5回は、情シスには欠かせない知識、「Windows 10のサービスオプション」について紹介します。

サービスチャネルの理解

JEITAの文書は基本的に一般ユーザー向けであるため、「チャネル(サービスオプション)」に関する説明が最後になっていますが。企業ユーザーにとっては「チャネル」の概念を理解しておくことは非常に重要です。Windows 10の「チャネル」には次の4つの種類があります。

・Insider Preview(IP)
・Semi-Annual Channel(Targeted)(SAC-T)
・Semi-Annual Channel(SAC)
・Long-Term Servicing Channel(LTSC)

「IP」は、Windows 10の新しいバージョンが正式リリースされる前の評価版のOSです。
「SAC-T」は、Windows 10の新しいバージョンがリリースされたら、ユーザー側ではほぼコントロールできずにバージョンアップが適用される状態のことで、「SAC」はそのバージョンアップの適用タイミングを延期した状態のことです。
Windows 10 Proのバージョン1809では、「設定」→「更新とセキュリティ」→「Windows Update」→「詳細オプション」に「半期チャネル(対象指定)(SAC-T)」と「半期チャネル(SAC)」を切り替える設定項目があったものが、バージョン1903では、その項目が無くなり、365日までの機能更新の延期日数を設定する項目のみになっています。


【バージョン1809】


【バージョン1903】

JEITAの文書では、HomeエディションはSAC-Tに該当する、と記載されていますが、SAC-Tという表現自体が無くなってしまうため、非常にややこしい状態になる(正しい表現が難しくなる)ことに注意してください。

【参考】Windows Update for Business と SAC-T の終了についての更新情報
https://blogs.windows.com/japan/2019/03/05/windows-update-for-business-and-sac-t/

このように、Windows Updateで機能更新の延期などをする機能を「WUfB(Windows Update for Business)」と呼び、Homeエディションには無い機能となります。(参考:使える! 情シス三段用語辞典80「WUfB(Windows Update for Business)」

企業ユーザーで、ProエディションのPCを使用していながら、「更新の延期」の設定を行わずに、Windows 10の新しいバージョンが適用されてしまった、というケースも以前にはありましたが、現在では情シス部門ではこのことを正しく理解されていると思います。

尚、企業ユーザーの場合、「WUfB」ではなく「WSUS(Windows Server Update Services)」を利用して更新プログラムの管理・運用を行うケースも一般的ですが、「WUfB」の設定によってWindows Updateおよび 「WSUS」 の両方から更新プログラムを受け取ってしまう「デュアルスキャン」と呼ばれる動作が発生する場合があることに注意してください。(参考:使える! 情シス三段用語辞典79「WSUS(Windows Server Update Services)」

【参考】Windows 10 の WSUS クライアントが Windows Update から更新プログラムを取得するようになってしまう事象について
https://blogs.technet.microsoft.com/jpwsus/2016/11/15/windows-10-1607-wufb/

「LTSC」は最大で10年間、特定のバージョンに対するサポートが提供される、企業の特定デバイス向けのエディションのことです。(参考:使える! 情シス三段用語辞典81「LTSC(LTSB)」

JEITAの文書には、Homeエディションでのバージョンアップのイメージが掲載されていますが、企業ユーザーでProエディションを使用する場合は、「現行バージョンのサポートが終了する前に次のバージョンに移行する」というイメージになりますので、バージョンアップを示す下向きの矢印が、Homeエディションの場合よりも右にずれる形になります。

Enterpriseエディションを使用している場合は、Proエディションとはサポート期間が異なりますので、この限りではありません。

サービスチャネルに関しては、【情シス基礎知識】~Windows10を学ぶ~サービスチャネルと機能更新の関係にて、詳しく解説しております。

 

Windows Insider Program参加時の注意

「Insider Preview」とは、開発・検証中の次期バージョン以降のWindows 10の評価用OSのことです。Microsoftアカウントで、Windows Insider Programに参加することで、誰でも試用できるようになりますが、一般ユーザーの場合、Insider Previewがどんな位置付けのOSかを正しく理解しないまま適用してしまい、予想外のトラブルに遭ってPCのリカバリからやり直すことを余儀なくされるようなケースもあるようです。Insider Previewはあくまでも評価用のOSですので、メインで使用しているPCには適用すべきではありません。何度インストールし直しても問題無いPCに、それができるノウハウ持っているユーザーが試用するためのOSであることを理解してください。
但し、情シス部門にとっては、Insider Previewを利用して正式リリース前に評価を進めておくことで、その後にやってくるバージョンアップに備えることができる、という大きなメリットがあります。新しいバージョンに対応するために、社内システムに大きな修正が必要となるケースなどを想定すると、少しでも時間的余裕が得られるという意味で、Insider Previewをうまく活用することは重要です。

 

Insider Previewの効用

上述の通り、Insider Previewを活用することで、次期バージョンでの評価を効率的に進められるだけでなく、Windows 10に関する経験と知識をより深めることができるメリットがあります。
例えば、「フィードバックHub」は、Insider Programに参加しているMicrosoftアカウントでサインインした場合と、そうでないアカウントでサインインした場合とでは、参照できる情報が全く異なります。「フィードバックHub」は、Insider Preview参加者用と、一般ユーザー用に分かれている、ということです。当然、前者の方が、より詳しい情報が得られます。
また、「フィードバックHub」は、Microsoft社にユーザーの要望を直接伝えるために最も有効な方法である、と言われています。多くのユーザーが同じ要望を持っている、ということをMicrosoft社に直接伝えることで、より良いOSになることを信じて、面倒がらずにフィードバックすることをお勧めします。
JEITAの文書には、「「Windows 10のダウンロード」でひとつ前のバージョンも入手可能とすべき」というフィードバックの例(スクリーンショット)が掲載されていますが、スマートフォンなどのWindows以外のOSで「Windows 10のダウンロード」のページにアクセスすると、「エディションの選択」でひとつ前のバージョンが選択できるようになっていることが判ります。フィードバックされた要望が反映されたケースです。
このように、Insider Previewは非常に有用な仕組みですので、正しく理解して利用するようにしましょう。

 

Windows 10 Proエディションの選択

JEITAの文書では、一般ユーザーであっても、Windows 10 HomeエディションとProエディションの機能の差を正しく理解して、エディションを選択すべきてあることが説明されています。
つまり、Proエディションには、上述の「WUfB」というHomeエディションには無い機能がある点が重要だということなのですが、一般ユーザーがこれを理解して、Windows 10のPCを選択しているかどうかは、多いに疑問です。
企業ユーザーの場合は、ドメイン参加やグループポリシー設定の必要性の観点から、Homeエディションを選択することはまず無いと思いますが、エンドユーザー自身は「WUfB」の機能のことを正しく理解しているとは限らないと思います。
家庭用のPCを購入する場合や、知り合いなどがPCを購入する場合のアドバイスとして、この機能の差について教えてあげると良いでしょう。
HomeエディションのPCを購入してから、Proエディションにアップグレードすることも可能ですが、Windows 10のエディションをアップグレードした場合は、一般にPCメーカーのサポート対象外となる点には注意が必要です。

 

まとめ

5回に分けてJEITAの文書を紹介、補足説明をしてきましたが、Windows 10には「Windows as a Service(サービスとしてのWindows)」という新しい概念があり、新しいバージョンが継続的に提供される一方で、旧バージョンに対してはサポートが順次終了していくため、ユーザーは継続的に新しいバージョンにバージョンアップする必要がある、ということを全てのユーザーが正しく理解することが重要です。
また、従来のWindowsに比べて、最新の環境へのバージョンアップや環境の再構築、トラブルシューティングがやり易いという特長があるため、情シス部門では、これらの特長をうまく活用することで、より効率的にPCの運用ができるようになります。

Windows 10のバージョンアップによって、動作しなくなったり使用できなくなったりするデバイスや機能が出てくる可能性もありますし、機能変更が発生して戸惑うようなケースもあるでしょうが、Windows 10のメリットを活用して、Windows 10(サービスとしてのWindows)とうまく付き合っていくことをお勧めします。

特に、まだWindows 7をお使いになっている企業の情シス部門の方は、本連載で紹介した内容を理解し、計画的にWindows 10への移行を進めてください。Windows 7の延長サポート終了直前になると、駆け込みで移行するユーザーが増え、PCの供給やサポートの提供など、いろいろな面でリソースが逼迫することも想定しておかなければなりません。

JEITAでも、あらためてWindows 7の延長サポート終了に関する注意喚起を行っています。

Windows 10のメリットを活用するための ポイント(Ver.2.0)」のご紹介」には、JEITAの文書のコンセプトや活用方法等も紹介されていますので、併せて読んでみてください。この文書を利用して、エンドユーザーのITリテラシーを高めることもできると思います。

すでにWindows 10に移行済みの企業の方だけでなく、移行中やこれからという企業の方にも、Windows 10のメリットを正しく理解し、「楽するPC管理」のお役に立てば幸いです。

 

最後に本連載の執筆にあたりご協力いただきました、長瀬様及びPC・タブレットユーザサポート専門委員会の方をはじめ、PC・タブレット事業委員会の皆様には感謝致します。

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本記事はJEITA様の協力により、「Windows 10のメリットを活用するためのポイント (Ver.2.0)」を基に作成しております。

「PC・タブレット事業委員会」とは
NECパーソナルコンピュータ、エプソンダイレクト、Dynabook、パナソニック、富士通クライアントコンピューティングの5社で構成され、PCおよびタブレット市場等の持続的発展のため、業界共通の諸課題対応を図るとともに、業界意見を取りまとめて関係省庁・団体等に具申し、政府および関連業界の施策への反映に努めている。

https://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=1&ca2=528
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【執筆:編集Gp ハラダケンジ】

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