【総務・人事・経理ワールド2018】見えてきた、働き方改革と情シスの関係

2018/07/17

「総務・人事・経理ワールド2018」が、7月11日(水)〜13日(金)の3日間にわたり東京ビッグサイトで開催された。当展示会は「働き方改革EXPO」や「会計財務EXPO」、「HR EXPO」など、計8カテゴリで構成。850社がそれぞれのブースで出展を行なった。会場には、福利厚生からBCP、省エネ、業務代行、テレワーク支援、業務自動化ツールなど、さまざまなサービスが一堂に介し、とりわけ、国が急ピッチで整備を進める「働き方改革」の製品ラインアップは、多くの来場者の注目を集めていた。
情シス Navi.では、”情シス”視点からピックアップしたユニークなサービスをさまざまに紹介する。

 

先端テクノロジーやセキュア、シームレスなサービスで進む、働き方改革!

【テレワーク/リモートワーク】リテラシーに関係なく最高レベルのセキュリティを提供「VAIO Secure SIM(TM)」−VAIO

サテライトオフィスの設置など、リモートワークも徐々に認知され、今後テレワーク需要も右肩上がりが期待されているが、この動向とともに機運が高まるのがセキュリティである。

社外からの社内ネットワークへのアクセスはこれまで、VPNや閉域網SIMがよく使われてきたが、全てに満足できるものではなく、VPNでは「接続フローが面倒」「未接続時のセキュリティの心配」、閉域網SIMでは「SIMカードの盗難」「通信上限」「海外利用」など、スムーズに使いこなすためにはいくつかの課題があった。それらを解決する次世代リモートアクセスソリューションがVAIOが発表した「VAIO Secure SIM(TM)」だ。

本ソリューションは、SIMカードの安全性に優れた実績のある認証技術(規格)を個体認証に利用して「なりすまし」を防止し、さらにLTE-X社の提供する「LTE over IP」技術を用いることで、公衆インターネット回線であってもLTEと同等の安全性を担保した”仮想閉域通信”を利用者に特別な操作や運用を意識させることなく提供する。フリー無線LANスポット、自宅やホテルのインターネット回線においても、安全なリモートワーク環境を実現できる。

さらに「操作性」ついても魅力は大きい。ネットワーク切り替えは通信コストが考慮され、周辺にフリーWi-Fiなどコストの低い通信網があれば自動で切り替わる。加えて、PCを起動するだけで自動接続エージェントが自動的にセキュリティネットワークを確立するため、ユーザー操作は不要。ユーザーのリテラシーに左右されず安全な環境を実現する。今後のリモートワーク/テレワークの需要を考えれば、この「なにもせずに安全な環境をつくる」メリットは非常に大きいといえる。

 

【グループウェア】フランス発のグループウェア「Magency」−Magency

コラボツールについては多数のサービスがリリースされており、もはや説明も不要だが、パリに本社を構えるMagencyのグループウェア「Magency」とその支援デバイス「Magency Box®」は非常にユニークだ。

カバンに入る大きさのローカルネットワーク機器で、どこでもワーキングセッション環境を構築できる。もちろん、マルチデバイスに対応しインターネットは接続不要。バッテリー付で電源も要らない。Magency Box®さえあれば、手軽にクローズドな環境が整う。グループウェアのクラウド活用のセキュリティ懸念を払拭できるとあり、大手企業の導入実績も多いという。

 

【基幹システム】シームレス&ワンストップの環境を実現した労務管理サービス「Gozal」−BEC

基幹システムは、労務にまつわるだけでも、人事管理、給与管理、勤怠管理とシステムが分散していることが多い。そこに伴う煩雑さを軽減すべくBECが提供するのが「Gozal」だ。

「雇用」「勤怠」「給与」「退職」といった労務業務をひとつのサービスで管理することができ、担当者の業務効率と省人化に寄与する。

BEC代表取締役兼CEOの髙谷元悠氏はこう話す。「労務管理を単純化し無駄な手作業をなくしたいと開発しました。また、ERPという選択肢もあるが、中小企業さまから見れば決まってコスト高になる。導入コストを含め、使い勝手のよさがGozalの強みですね。」

 

【社内活性】ブロックチェーン活用の社内通貨「Joy」−オルトプラス

他で取り上げているサービスとは少し毛色が異なるが、ブロックチェーン技術に興味がある筆者の目にとまったユニークなサービスが「Joy」である。

ソーシャルゲームを手がけるオルトプラスが開発した「グッドアクションを習慣化するエンゲージメントツール」であり、一言で表せば社員の行動にインセンティブ”Joy”を付与することができる仕組みである。
「定時出勤」「残業ゼロ」「企業ブログ担当」「課題解決」など、評価基準の設定は自在。社員が受け取った”Joy”は、ジュースやお菓子など社内購買などで利用できる。
ここまでであれば、社内ポイント制度として既に実施している他サービスもあるが、この”Joy”が面白いのは「ブロックチェーン技術」を活用した仮想通貨であることだ。
「JOY Cashier」という決済デバイスも用意されており、「JOY参加店舗での活用」も可能と、社内完結だけでなく、独自の”仮想通貨”経済圏を構築できることにある。

サービスモデルとしては、企業や労働団体、自治体などが発行する地域通貨に先例があるが、ブロックチェーンという注目技術を活用し、且つ、モバイルデバイスで手軽に使えるところに大きな特徴を持つ。
オルトプラス開発部オルトプラスラボ フェローの島田大輔氏によれば、「Joyは、ゲーム会社ならではかもしれないが、朝の苦手な社員が多く、定時出勤の風土をつくるために開発した」という。なんともユニークな開発経緯だが、今後の多くの可能性を秘めたサービスではないだろうか。

 

活況のRPA! 多彩なラインアップが一堂に

今や、RPAの名を聞かない日はない。「働き方を変える」を合い言葉に、数多くのRPA製品/サービスが紹介されていた。

 

「HeartCore Robo Desktop」−ハートコア

ハートコアのRPA「HeartCore Robo Desktop」は、「マルチOS」「マルチブラウザ」対応のRPAツール。社内環境にとらわれることなく導入できるのが魅力だ。また、システム要件についてもjavaベースでJREとOCRモジュールのインストールのみで実行環境を整備できる。加えて、インターフェースやマニュアル、保守サポートも日本語対応と扱いやすい。

また、大きな特徴として「OCR」と「高度な画像認識」がある。OCP標準搭載により、RPAとOCPをそれぞれ導入する必要がなく、イニシャルコストを削減できる。画像認識では、「イメージ検知」「色検知」「文字コレクション」など、計多様な動作方式でロボットのチューニングを行え、「止まらないロボット」の運用ができる。

詳細はこちら:http://www.heartcorerobo.com/hcrobodesktop.html

 

「Robo-Pat」−FCEプロセス&テクノロジー

“誰でも使える”RPAをテーマにしているのが、FCEプロセス&テクノロジーの「Robo-Pat」だ。事業部門が自分の仕事の流れを直感的に登録できるインターフェースが用意されており、プログラミング知識がなくても定型業務の自動化や設定変更が行える。PC上で操作するあらゆるアプリに加え、自社システムやAS400等からも操作できるのも魅力。

また、リテラシーに依存しない環境ゆえ、事業部門と情シスの情報共有もスムーズに行え、両部門のコミュニケーションの齟齬からロボット運用に支障をきたしにくい。

詳細はこちら:http://fce-pat.co.jp/

 

「RPA on DaaS connect」−インフォテリア/ハイマックス

純国産RPAとして知られるNTTアドバンスドテクノロジの「WinActor」とASTERIAのデータ連携ツール「ASTERIA WARP Core」を連携させた, 「リモートRPAサービス」がインフォテリア/ハイマックスの「RPA on DaaS connect」だ。

WinActorをDaaSで提供するとともに、RPA単体では煩雑になりがちだったデータ加工や連携・クラウド連携を、プログラミング不要でスムーズに行える。また、クラウド活用ができるのが肝で、テレワークなど新しい業務環境下に対応したRPAとなっている。

詳細はこちら:https://www.infoteria.com/jp/news/press/2018/05/07_01.php

 

RPA拡張サービスも—

「AI Capture Platform」−PFU

RPAとOCRは相性がよく、会場でもRPA×OCR製品を多く見かけた。なかでも目を引いたのがPFUの「AI Capture Platform」だ。

OCR×AI×クラウドのキャプチャーサービスで、PC、モバイル、スキャナ、コピー複合機と端末を問わない帳票データのアップロードと出力が可能。「特定帳票」「汎用帳票」「手書き」と各帳票に合わせOCRエンジンを自動選択し結果を出力してくれる。RPAと連携することで、帳票のアップロードから業務システムへの入力の自動化も可能で、業務効率化と省人化に寄与する。

詳細はこちら:http://www.pfu.fujitsu.com/news/2018/new180411.html

 

「紙帳票の自動取込」−インフォコム

インフォコムは、グローバルで実績のあるERP「GRANRIT®」の紹介とともに、オプションとして「紙帳票の自動取込サービス」を紹介。
OCR×AIがスキャナや複合機の請求書画像を請求データ化する。RPAと連携すれば、請求データと基幹システムに登録されている仕入れデータとの付き合わせ処理を自動化。業務効率化と省人化に寄与する。

 

 

上述のPFU然り、「OCR×AI」は完全なるシステム化(デジタルデータ化)までには、更なるニーズが高まりそうである。

 

RPA活用ソリューションも—

「Robo Roid HIT.s」−キューアンドエーワークス

RPA製品をさまざまに触れ気づいたのが「RPA導入支援」を紹介していた企業が多いことだった。

「定型業務の自動化」ばかりが注目を集めるRPAだが、そもそも「なにを自動化するか?」が課題になる企業が多いと聞く。大塚商会ブースに出展していたキューアンドエーワークスの「Robo Roid HIT.s」はまさにそのソリューションだ。
専用ツールにより社内業務の棚卸しや可視化を行えるBPR支援ツールで、「どこにRPAを導入させるか」を明確にすることができる。また、「チャートによる無駄な業務の見直し」や「RPA導入前後による作業工数比較」「人による作業が好ましい業務とRPAによる自動化が好ましい業務の線引き」も可能で、自社に最適なRPA導入・運用計画を練ることができる。

詳細はこちら:https://roboroid.jp/20180412_roboroid-hits/

 

情シスと業務部門双方が納得するBIツール見参!!

【BIツール】業務部門が使えるBIツール「軽技Web」−富士電機

一般的にBIツールは経営者が扱うことが多い。それゆえ、操作性のよいツールがよろこばれる。業務部門でも簡単扱えるBIを—、このニーズを満たすのが富士電機の“セルフサービスBI”「軽技Web」だ。現場担当者でも簡単にデータ検索や活用ができる非常にシンプルなインターフェースながら、「Oracle」「SQL Server」「Postgre SQL」「Amazon Redshift」などさまざまなDBを検索可能で、専用DBを設計する必要もない。

さらに魅力的なのが、「Excelテンプレート機能」だ。従来のExcelデータを軽技Webにそのまま登録することができ、複数の検索結果をワンクリックで指定したセルへの貼り付けが可能。また、自動グラフ表示やスケジュール登録機能もあり、 “準備なしで”朝一から会議を行える。

ここから明らだが、ニーズとしては「情シス以外にも扱える」ところにメリットがある。だが、富士電機営業本部社会ソリューション第二統括部営業第一部営業第一課課長補佐・長尾正裕氏によれば、「情報システム部門にも好評」を得ているという。軽技Webには「SQLダイレクト実行機能」が備わっており、情シスでなくても、既存ツール機能などの複雑なクエリに対応することができ、多くの情シスが業務効率化を実感しているそうだ。

詳細はこちら:https://www.karuwaza.com/

 

激動の世の中で活躍する、確かな人材を育む育成サービスもぞくぞく!!

今回のブースでは人材育成サービスも多数展示されていた。なかでも非常に目を引いたのがENGEEDとギブリー二社のサービスだった。

【能力開発】「AI・ロボットに奪われない力」−ENAGEED

同サービスは「AI・ロボットに奪われない力を育てる」をテーマにした研修×育成ツールであり、「言われたことだけやる人」から「提案を実行に写し周りに価値をもたらす人」へ人材を育成する。AI・ロボットの普及がもたらす「人の価値への問いかけ」に応じたサービスで、AI時代に価値のある人材を育むのが狙い。同サービスは直接的には情シスの文脈ではないが、ENGEEDのSolution DIV兼アカウントプランナー・志賀司氏によれば、「対象は設けていない」という。攻めへの転換を求められる情シスの今後を考えれば、ニーズの高まりも予想される。

詳細はこちら:https://enageed.jp/

 

【人材評価】プログラミングスキルを可視化「track」−ギブリー

新卒・中途を問わず、近年採用は熾烈をきわめる。そこには人材不足はもとより、「戦力になる人材」のジャッジが欠かせないからだ。しかし、採用段階で個々人のスキルを判定するのは非常に難しい。エンジニアのスキルに詳しい人事担当は多くなく、現場のエンジニアも業務を兼任しながらでは的確なスキル判定を下しがたい。そのソリューションとして、東京大学や会津大学の方々と連携しギブリーが提供しているのが「track」だ。

エンジニアに特化した“オンライン・スキルチェッカー”であり、「テスト作成」から「配信」「受験環境の用意」「テスト問題の配信」「採点」「解答データの蓄積」「解答データの分析・評価」をワンストップで実現可能。テストカテゴリもセキュリティやIoT・AI・ブロックチェーンなどの「先端技術」、ソフトウェアデザイン・テストDevOps・プロダクトマネジメント・アジャイル/スクラム・データベースなどの「ソフトウェア開発」、プログラミング言語基礎・数学・アルゴリズムなどの「計算機科学」と充実。さらに、知識だけではなく、日常業務と変わらない「解答・採点方式」を用意しており、ユーザー企業に応じた「オリジナル問題」の提供もある。

ギブリー執行役員兼HR Tech事業部兼セールス統括・山根淳平氏はこう話す。「採用について、人事部がオーナーシップを取れるソリューションであるほか、trackは優秀な人材を自然に社内育成できるツールだと考えています。テストの解答データは蓄積・分析・評価を行えるので、採用だけではなく要所要所でエンジニアのスキルを評価できる。また、このような環境があることで、各エンジニアのモチベーション向上にもつなげられる。絶えず進化するテクノロジーの動向を見れば明らかですが、私たちはエンジニアに求められるものは“自立自走”だと考えています。trackで、トップダウンではなく、ボトムアップでスキルを磨き続けられるよりよいエンジニア環境の醸成に貢献していきたい。」

詳細はこちら:https://tracks.run/

 

 

働き方を変えるのはサービスと人の両輪

今回の総務・人事・経理ワールドにおいても、さまざまな製品・サービスが並んだが、RPAやBIにしろ、「誰もが扱えるサービス」に着目したものが多い印象を受けた。今後「情シス」と「業務部門」の線引きはますます曖昧になっていくのかもしれない。

また、ギブリーの「track」のようにテストだけではなく「モチベーションにも寄与し続けるサービス」が登場したのは新鮮だ。ここからすれば、ベンダーからのトップダウンではなく、「現場の細部までしっかりと寄り添うサービス」がこれからのデファクトになっていくのではないだろうか。

サービスと人、その両輪で働き方が変わっていく。その片鱗を確かに感じさせてくれた展示会だった。

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】

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