使える! 情シス三段用語辞典93「DaaS(Desktop as a Service)」

常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。『情シスNavi.』では数々のIT用語を三段階で説明します。

一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明

取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?

一段目 ITの知識がある人向け「DaaS」の意味

もうすっかり定着したともいえる、「SaaS」や「IaaS」などの「アズ・ア・サービス」。これにより、かつては物理的に企業内で用意していた機器やアプリケーションをクラウド上のサービスとして使用することができます。そして、その中でも今まではそれほど注目されていなかった「DaaS(Desktop as a Service)」が、5Gでより一層普及すると見られています。

「DaaS(Desktop as a Service)」とは、デスクトップ環境をクラウドサービスとして利用できるサービスのことです。ユーザーは、手元の端末からクラウド上のデスクトップ環境にアクセスして、通常のデスクトップ環境と同じようにアプリを起動したり必要な機能をインストールしたりして使うことができます。なお、同じ「DaaS」でも「Device as a Service」という語もあり、こちらは端末そのものをサブスクリプションのサービスとして利用できるというものですので、必要に応じて正しく使い分ける必要があるのでご注意ください。

今回の「DaaS(Desktop as a Service)」は、従来端末内に内蔵されているCPUやメモリなどのリソースとOSの層をクラウドサービス化したものとなります。

端末では入力・表示のみを行い、実際のOSとアプリの処理はクラウド上で行われます。それらが使うリソースもクラウド上で必要なだけ割り当てて使うことができます。

 

<DaaSのメリット>

・端末にしばられずに使うことができる
デスクトップ環境そのものがクラウド上にあることで、アクセスする端末が変わってもいつもと同じ環境を使って仕事をすることができます。従業員一人一人に端末を固有に割り当てる必要はなく、アドレスフリーなオフィスにもマッチします。

・情報漏えい対策
DaaSは社外へのデータ持ち出し対策としても有効です。重要なデータの入った端末を社外へ持ち出す場合、紛失や盗難などのリスクがありますが、DaaSであれば端末側にデータを残さないので、情報漏えいのリスクを下げることができます。

・ユーザー数の増減に対応しやすい
DaaSはクラウドサービスなので、環境数の増減があってもすぐに対応することができます。ユーザーの増減がある場合にはサブスクリプションの契約数を見直せばよいだけでセットアップも簡便です。

・一元管理しやすい
これまで従業員ごと、端末ごとに行っていた資産管理がDaaSであればさらに集約できます。OSバージョンやセキュリティパッチなどをDaaS上で一元管理することが可能です。

 

<DaaSのデメリット>

・通信環境にパフォーマンスが左右される
デスクトップ環境全てをクラウド上で利用するので、端末とサーバーとの通信環境があまり良くない場合は動作に遅延が発生してしまいます。そうした場合、その環境でのすべての操作のパフォーマンスが落ちてしまうのが大きなデメリットです。また、オフラインでは使えません。

 

この大きなデメリットのために、DaaSが登場した2013年頃から今まで、DaaSがSaaS(クラウドサービス)ほどには普及しなかったともいえるでしょう。しかし、2020年にサービス開始予定の5G通信では、大容量・高速の通信が可能となります。この5G環境下ではDaaSでもインストール型のデスクトップ環境と変わらぬパフォーマンスを行えることが見込まれます。

働き方改革の推進により、オフィスの外へ仕事環境を持ち出すことはめずらしいことではなくなってきました。BYOD(私的端末の業務利用のこと)とも相性がよいDaaSは、今後さらに広まることが予想されます。

 

二段目 ITが苦手な経営者向け

とある営業販売会社の社長、さっき終わった会議資料を手に、情シスの須田さんのところへやってきた。

社長:ちょっと、須田さん。聞きたいことがあるんだけどもちょっといいかな?

須田さん:はい。何でしょう?

社長:さっきの会議で出た「DaaS」についてなんだけど、実はよくわからなかったんだ。もう少し説明してもらえる?他のみんなはわかってたみたいだから、こっそり教えてほしいんだ……。

須田さん:ああ、「DaaS」ですね。「SaaS」と同じだから説明をちょっと省いちゃったんです。社長、ここのパソコンを開くと、デスクトップ画面がありますよね。このデスクトップは、パソコンの中にOSがインストールされていて、それが用意してくれているものなんです。

社長:それくらいはわかるんだけど。

須田さん:DaaSは、OS自体がこのパソコンの中じゃなくて、インターネットの上にあるんです。どこかのデータセンターのサーバーに入っていて、デスクトップを使うにはインターネットを経由して、そのサーバーにアクセスするってことなんです。

社長:ふーむ。でも、デスクトップ画面が出てもいないのにそもそもインターネットができるの?

須田さん:はい。DaaSでは、その接続のためのクライアントアプリケーションが用意されていますから大丈夫です。

社長:なるほど。このDaaSが、パソコン運用のコストを下げるって言ってたよね。

須田さん:今まで社員一人一人に端末を用意して、必要な場合にはスペックのいい高い端末を買っていました。でもDaaSにすると、端末は全部一緒の安価なものでいいんです。アプリの処理はサーバー側がやってくれるので。もし端末が壊れたとしても、余っている端末でログインすればすぐに仕事が続けられます。それにサーバー上にデスクトップごとまとめて置いてあるので、管理の面でも、誰がどういう使い方をしているのか管理がしやすいんです。

社長:そういうことか。だから、次回のPC更改に合わせてDaaSにしたいって、会議で提案してくれたんだね。

須田さん:はい。ただDaaSだと心配なのが通信環境です。インターネットが遅いと快適に使えないので。そのへんを踏まえて、DaaSを扱っているベンダーに見積もりをとりますよ。

社長:わかった。ありがとう。まずはDaaSのベンダーか。ダース・ベンダー、ダース・ベイダー……おっと、寒かったかな。

須田さん:外は猛暑なのに社長の周りだけ涼しいですね。苦笑

 

三段目 小学生向け

この夏休み、皆さんは水族館へ行きましたか?水族館のみりょくはなんといっても水の中に住む魚や生き物たちのおもしろさ、きれいさですよね! ゆらゆら泳ぐクラゲやカラフルな熱帯魚たち、大きなサメやマグロ、イワシの大群などの迫力には大人も子どもも目がくぎづけになってしまいます。

街の中でも、熱帯魚の水そうくらいなら見ることがあります。こういう水そうのことをアクアリウムといいます。病院の受付フロアやビルのエントランスホールに置いてあったりして、お父さんやお母さんが用事をすませている間に「ちょっと見てくる!」なんて見に行ったこともあるでしょう。でもたまに、本物の水そうじゃなくて画面に熱帯魚の映像が映し出されていた、なんてことがあったりしませんか?

映像だともしかしたら皆さんはちょっとがっかりするかもしれませんが、本物の魚の泳ぎを間近で見られるということには変わりありません。それにアクアリウムを置いている人からすれば魚の世話も水そうのそうじもしなくていいしとても楽なのです。

パソコンでも、こういう映像アクアリウムのような技術があります。今回のテーマは「DaaS」といって、パソコンのデスクトップを映像で手軽に使える技術です。水そうの枠はパソコン、その中にある水や魚たちはパソコンに入っているアプリやいろいろな機能だと考えてみましょう。そして、映像アクアリウムでも、DVDではなくて本物の海の映像をカメラでとって生中継していると考えてみてください。

本来ならばパソコンの中にインストールされて入っているデスクトップ環境。水そうでいえば、本物の水そうに水を入れて魚たちを飼っている状況です。これがDaaSになると、パソコンを開いて出てくるデスクトップ環境は生中継されている映像です。もちろん映像とはいっても実際に操作ができ、ふつうのパソコンと同じように使えます。では中継元のデスクトップの本体はどこにあるのか、というと、インターネットを通してアクセスできるコンピューターに入っているのです。DaaSを使うと、インターネットにつなげばどこからでもパソコンを使うことができるということなのです。

DaaSのよいところは、管理が楽なところ、また、持ち運びがカンタンにできるところです。大きくて重たいパソコンを持ち運ばなくても、他の小さなパソコンやタブレットなどでも同じデスクトップにアクセスできるので便利なのです。

 

さて、皆様のご理解は深まったでしょうか?

 

 

【執筆:編集Gp 星野 美緒】

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