情シスの集い「PCNW」2018・東京大会レポート

2018/07/13

今年も年に一度のPCNW大会がスタート

「PC・ネットワークの管理・活用を考える会(PCNW)」は情シスの「情報収集・意見交換」の集いである。今年で23年目を迎えた同会の大会が7月6日(金)にグランドアーク半蔵門で開催された。

200名に迫る情報システム管理者が集い、会場は大きな熱気に包まれていた。PCNW事務局長・クオリティソフト株式会社執行役員の小椋量友紀氏の挨拶で大会は幕を開けた。

<PCNW事務局長のクオリティソフト小椋量友紀執行役員>

基調講演はフジテック友岡CIOによるクラウドネイティブの存在とめざすべき情シス像


基調講演では、フジテック株式会社の常務執行役員 情報システム部長を務める友岡賢二氏が登壇。「クラウド化する世界で僕たちは現場に溶ける」と題し、クラウドネイティブの存在と情報システム管理がめざすべき情シス像の解説を行なった。

友岡氏は前説として、「アラブの春」では人々が武器の代わりにSNSで民主化運動を行い、海外の学生は端末・ネットワークを問わずクラウドで宿題を行っている。グローバルでいかにクラウドが浸透しているかを紹介した。



<基調講演を行うフジテック友岡CIO>

本題に入り、企業のクラウド化においては、秒刻みの利用が可能な時間課金制から「コスト見直しと最適化が自在であること」と、AWS然りAlibaba Cloud然り「イニシャル/ランニングコストの大幅な削減が可能であること」、「スムーズに導入からインスタンス立てまで行えること」をメリットとし、クラウドによるサーバーレスは今後のスタンダードになっていくと話した。

一方、現在のクラウド推進の課題として、社内の意識変革が必須であることをあげた。明らかなメリットを望めるといっても、導入に免疫のない企業とってクラウドは、“突然、ゴジラが現れるような驚異”だと話す。そこから反発を起こさないためには、「モスラを見つけ倒すこと」とした。モスラとは、「クラウドで解決できる問題」。成果を実際に見せることで、「クラウドは驚異ではなく、企業を助けるスーパーマンとして受け入れられる」という。また、「クラウドで解決すべき問題」では、「すぐに着手、結果を出せるわかりやすい問題」と話し、実際に取り組んだ「コラボツールやBYOD導入事例」を紹介した。

続けて、友岡氏が解説したのは、クラウド時代に情シスが持つべきマインドセットについて。大切なのは「引き算よりも足し算」だとし、「あたらしいものの導入により、古いものを禁止するのではなく、共存させ、ユーザーに選ばせる」ことも重要だと言う。また、新サービス導入は「すべてのユーザーのことを考えるのではなく、2-6-2の法則から2割のアーリーアダプターに向けたサービスを検討する」「導入後は、キャズム理論から16%の普及率をめざす」とも話した。

さらに、現場が真に活用できるツールを把握するためには、「現場を見る」ことが重要だとする。ユーザーから課題をヒアリングするのではなく、「情シス自らが現場に赴き、課題を探る」ことが大切だとし、実際の事例を紹介した。

最後に、「若いエンジニアへ送ることば」として、松下電器の情報部門、ファーストリテイリングを経てフジテックCIOに至った自らのキャリアをなぞり、若い情シスには、ぜひ「自分にしかできないことを見つけ実行する力」「プライドよりもブランドをつくるために努力する力」「自身が確信を持って提案できる提案力」を身につけてもらいたいとして、講演を終えた。

軽妙な語り口調のなかで、ときおり繰り出される辛辣な言葉。ユーモラスかつ熱気のこもったスピーチに、多くの情シスが大きな拍手を送っていた。

 

事例講演は豊田通商内野ITガバナンスグループリーダーによる、3つのセキュリティ課題


続けて、豊田通商株式会社のIT戦略部 ITガバナンスグループ グループリーダー 内野慎一氏が登壇。「企業グループとしてのITガバナンスとエンドポイントセキュリティ強化の取り組み」と題し、これまでの取り組みを話した。


<事例講演を行う豊田通商内野ITガバナンスグループグループリーダー>

内野氏は、国内外に約300社のグループ企業を持つ豊田通商の情報セキュリティ強化において、「具体的なセキュリティ指針が整えられていない」「各社のIT基盤整備が個別最適で標準化が進んでいない」「グローバルでガバナンス活動を推進させる体制が整えられていない」といった3つの課題があると説明。これに対し、全グループ企業が最低限守るべきルール「セキュリティガイドライン」を策定し、各事業会社の機密性評価と改善通達を行ってきた。また、「ITガバナンス実務規定」策定により、システム運用保守に関わる基本ルールを設け、社内規定化を通達した。さらに、統制管理をエリアの中核拠点が品質管理を担当する仕組みを設けたという。

後半では、自社のエンドポイントセキュリティについて紹介。セキュリティに対する意識がグループ企業ごとに異なり、かつセキュリティ状況も見えないなかで、いかに「各社が負担なく運用かつ継続できる、グローバルなセキュア環境」を築いていくかを重視し取り組んできたという。そこから、「環境に依存しないインターネット型サービスであること」「マルチテナントであるか」「各社で運用するための支援機能の有無」「自動脆弱性診断の有無」などの観点で製品評価を行い、要件に合致した「ISM CloudONE」を採用した。目下グローバルで展開を進めているが、「見える化」をメリットに感じているという。「OS」「セキュリティパッチ」のバージョン、や「Javaなどのサポート切れサービス」を確認できるようになったことで、説得力のあるセキュリティ強化の提案が可能になったと話した。

 

活動報告&パネルディスカッション

基調講演後、キヤノンITソリューションズ株式会社 管理本部 情報システム部 ITインフラ課 課長 下原隆徳氏、アイレット株式会社 KDDIRET事業部 システムエンジニア 大石英氏により、「攻めの情シス」「Windows10導入状況や課題事例」、「マルウェア対策やクラウド化のセキュリティ」など、PCNW開催の「クライアント管理勉強会」「ITトレンド勉強会」の活動報告が紹介された。

 

「これからの情シスのあるべき姿〜クラウド時代に求められるIT戦略〜」と題されたパネルディスカッションでは、モデレーターを務めるPCNW幹事長兼TERRANET代表寺嶋一郎氏の問題提起により、現代における企業のデジタル化の課題、情シスのあり方などを、下原氏、大石氏、友岡氏、内野氏4名が語った。

寺嶋氏は「情シスの地位が低迷している」とし、その理由を「システムをベンダーへ丸投げし、保守管理のみに徹してきた背景にある」と説明。加えて、「企業のデジタル化を情シス以外の部が行っていることは、広義にシャドーITといえる」「IT化の推進は情シスが率先して行わなければいけない」と話し、「ではどうすればよいか」と問いを投げかけた。


<豊田通商株式会社 IT戦略部 ITガバナンスグループ グループリーダー 内野 慎一 氏>

 


<フジテック株式会社 常務執行役員 情報システム部長 友岡 賢二 氏>

 


<アイレット株式会社 KDDIRET事業部 システムエンジニア 大石 英 氏>

 


<キヤノンITソリューションズ株式会社 管理本部 情報システム部 ITインフラ課 課長 下原 隆徳 氏>

 

「当社では、デジタル推進課を立ち上げ、営業部門のなかに入りデジタル化を進めている。」(内野氏)

「情シスとしての存在感を誇示するのではなく、事業部門と並走し、ともにビジネスを推進させていく意識を持つべき。」(友岡氏)

「失敗してはいけないというマインドセットから、萎縮しやすい風土がIT部門にはある。それが足枷となっていると感じる。」(大石氏)

「システムの安定運用ではなく、ITをどうビジネスに生かすかを真剣に考えるべき。今度はそれが情シスのスタンダードになっていく。」(下原氏)

 

クオリティソフトによる3つのソリューション紹介


パネルディスカッションが終わり、クオリティソフト によるソリューション紹介が行われた。「Windows10のアップデート対策」、「オンプレ、クラウド、多様化するPC活用シーンといったマルチ環境時代のネットワーク管理」「グローバル展開での海外端末管理」といった3つのテーマに対するソリューションが紹介された。

 

懇親会

3時間半におよんだプログラムがすべて終了し、懇親会が開催された。経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課長 中野剛志氏が登壇し、「IoT税制」とよばれる「コネックテッド・インダストリーズ税制」について解説。企業のレガシーシステムの刷新をめざしたい、そのためには情報システム部の人々の協力が欠かせないと話した。

<経済産業省 商務情報政策局 情報技術利用促進課長 中野 剛志 氏>

 

懇親会には多くの情シスが参加。会食の穏やかな雰囲気のなかで、業種を横断した情シスが交流を深めていた。

なかなか横のつながりを作る機会が少ない”情シス”にとっては、貴重な場であると言える。

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】

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