生産性向上の切り札なのか!? RPA導入のポイント
総務省の調査によると、2017年には国内ですでに14.1%の企業がRPAを導入しており、市場規模は2017年の31億円から2021年の100億円規模になるとされています。
なぜRPAはこれほどまでに注目されているのでしょうか。その必要性や導入のポイントなどを紹介します。
この記事の目次
【おさらい】デジタルレイバーとして脚光を浴びるRPA
RPA(Robotics Process Automation)とは、ロボットによる自動化のことをいいます。ロボットというと、Pepperのように人型のものや、工場で働く産業用ロボットを思い浮かべますが、RPAはソフトウェアで動作するデジタルロボットを指します。
画面上のオブジェクトを識別し、ルールエンジンにのっとって、今まで担当者が行ってきた検索・データ抽出・入力作業を自動化する機能を備えています。
AI(人工知能)はその進化によって、いずれは人間の知能を超える「シンギュラリティ」に到達するといわれています。広義のRPAはAIも含んでおり、AI・機械学習も含めて認知技術を活用し、将来的には企業経営にかかわる高度な意思決定までも自動化が可能になるとみられています。このようにホワイトカラーの仕事そのものを肩代わりするRPAは、「仮想知的労働者(デジタルレイバー)」と呼ばれます。
とはいえ、現時点ではRPAはあくまで人間の定型的な作業を肩代わりするものとみなされるのが一般的です。かつて、手作業で製品が組み立てられていたものをロボットが組み立てているように、「人間が紙の証憑を読み取り、必要なデータを基幹業務に入力し、入力に間違いがないかを確認する」という一連の作業がRPAで完結するのが当たり前の時代になるでしょう。そして、その先にはその範囲が高度化したものまで広がってくると予測されています。
RPAはツールを使用しますが、パソコン1台でも使えるようになっているため、高額な投資が必要となるプラットフォームの構築は不要です。また、ツールの使用も基本的にノンプログラミングなものが多く、プログラム開発の経験がなくても数十時間の研修を受けるとロボットが作れるようになります。
ロボット作成は在宅での勤務も可能で、最近では子育てなどの理由でいったんは退職した人が、事務経験を活かしてロボット作成や作成のサポートをする「RPA女子」が活躍しています。
【働き方を変える】RPA、なぜ今必要なの?
デジタルレイバーであるRPAがなぜ今必要とされてきているのでしょうか。
1)働き方改革の盛り上がり
最近では「顧客満足より従業員満足」と言われ、従業員の満足度を向上することで結果的に企業経営に良い影響を与える取り組みが盛んになってきています。
その一環となるのが「働き方改革」です。長時間労働をなくし、いかにやりがいのある仕事をしてもらえるかがカギとなっています。
そのためには退屈で労働時間をとられる「単純作業」をいかに自動化して生産性を低下させることなく労働時間を減らす手段としてRPAが注目されています。
実際にRPAでタスク作成を経験すると、自動化させることでの労働時間の短縮に加え、作業の改善の仕方がわかるため、自分自身の仕事の生産性が高まるという効果があるという声も聞かれます。
2)人手不足
日本では1980年代に少子化が始まったのを契機に子どもが減り始め、2010年には全体の人口1億2,806万人をピークに年々減少しています。
定年を70歳に引き上げるなども議論されておりますが、年々人口が減少するなかで、このままの働き方をしていれば、経済が縮小してしまうのは誰の目にも明らかです。
そこで、政府は「新産業構造ビジョン」を策定し、バックオフィス業務を減らして、成長分野への労働移動が必要であると働きかけています。
<画像出典:「経済産業省新産業構造ビジョン」>
今でも人手不足は深刻な問題となっており、従業員に重い負担を強いていることも少なくありません。なるべく少ない人数で効率的に業務を行う必要に迫られています。
3)自動化に費用がかかる作業の増加
デジタル化が加速している昨今では、情報システムの周辺作業が増えています。例えば、自社の基幹システムからデータをダウンロードし、データを編集してから外部のWebサイトへアップロードするような作業です。もちろんこういった作業は情報システムで自動化できるものの、開発の費用対効果の問題からやむなく担当者が手作業でやっているという例が多いのではないでしょうか。
前章でご紹介したようにRPAは大掛かりなシステム構築が不要で、ロボットの作成も比較的簡単にできるため、迅速にロボットを作成でき、コストも抑えられます。
【ステップ】RPA導入の手順
RPA導入は、通常どのような手順で行われるのかご紹介しましょう。
1)生産性を改善する業務を抽出する
生産性が低く、RPAにおいて改善が期待できる業務を抽出します。注意するべき点としては、必ずしもその作業をやっている担当者は生産性が低いこと、定型作業であることさえ意識していない場合が多いことです。そのため、改善したい業務を各部門に募ったとしてもなかなかあがってこないということがよく聞かれます。そのため、システムログを解析して、改善するべき業務を洗い出している企業もあるほどです。
もし、あなたが担当者だとしたら、いかにして自分が手を動かさずに仕事ができるようになるのかと、いい意味で“ずぼら”になることを思い浮かべてもいいかもしれません。
また、ひとつの部門内の業務だけが対象ではなく、部門をまたがった業務も対象になりえます。
一方で属人化された作業の場合は、その作業が改善するべきかどうかは管理職や経営層ではわからない部分も多くあります。
そんな場合は、トップダウンでRPA導入を進め、現場担当者をうまく巻き込みながら業務を棚卸し、対象業務を洗い出していく必要があるでしょう。
また、RPA導入の目的として「脱Excel」をあげる企業が増えています。Excelに埋め込まれてブラックボックスになっているマクロ処理を「見える化」し、俗人化を避けるという目的がありますが、RPA製品は多くの場合Excelの列置換といった操作に対応できません。その場合はExcelに特化したツールを選ぶ必要も出てくることに留意しましょう。
2)対象業務を人間の作業とロボットの作業に分ける
RPAを導入したからといって、ある業務が全部自動化されるということはありません。人間の判断が必要な部分は必ずあると考えた方がよいでしょう。
そのため、対象業務を細分化し、人間の作業とロボットの作業に振り分ける必要があります。
こうして業務を見える化することで、業務の無駄がわかるようになるため、自動化だけでなく、業務改善の効果も期待できます。
例えば、端末操作と人間の判断を交互に行っていた作業を、端末操作と人間の判断をそれぞれまとめて行い、夜中にRPAを動かして朝に人間の作業を開始するフローに変更すれば、業務処理の軽減だけでなく、処理時間の短縮化も図れます。
3)ロボットを作成する
作業を行うロボットを作成します。その際には実際の業務を動画で撮影し、その動画を見ながらロボットの作成をしていくケースが多いようです。
RPAで陥りがちな問題として、正常に終了するケースだけを考えてしまうことがあげられます。どんなエラーがあるかを洗い出し、エラー発生の場合にどのような対処をするかを考えておくことも重要な要素です。
【RPA導入の成功には】”脱・人員削減” 付加価値の高い仕事へシフトする
RPAの導入は、労働時間短縮、作業品質向上の面で劇的な効果があることが多く、費用対効果の見えやすいソリューションです。
J-SOX対応なども考慮する必要はありますが、ロボット作成も比較的容易で、製品のお試し利用で自社の業務に適合できるかを見極めやすいなど多くのメリットがあります。
さらに従業員のモチベーションを向上させる効果は無視できません。RPA導入により仕事がなくなるのではと不安視していた従業員が、導入後は業務改善案を積極的に出すようになり、雰囲気が明るくなったという例もあります。
RPAで単なる人員削減という観点ではなく、単純作業から従業員を開放し、付加価値の高い仕事へシフトするという観点がRPA導入には大切になってくるでしょう。
【執筆:編集Gp 山際 貴子】