「バックアップはいかに早く戻せるかの視点で考えるべき」 ヴィーム インタビュー

  • 2016/12/5
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2016/12/05

仮想環境向けのデータ保護ソフトウェアと監視ツールを提供してきたヴィーム・ソフトウェア。同社は、「Availability for Always-On Enterprise」を掲げる。そのスローガンを実現するソリューション「Veeam Availability Suite 9.5」を販売。このソリューションでは仮想環境やストレージ、サーバー上のデータ保護と管理機能を提供し、15分未満のRTPO(目標復旧時間・時点)を達成した。

売上、顧客、市場環境……。どの企業にとって、こうしたデータはビジネスの上で生命線となる。そして、いざという時のためにITでデータを保護するのが「バックアップ」だ。しかし、その真の重要性に気付いている経営者や情報システム担当者は少ないと同社では見ている。

吉田幸春 ヴィーム・ソフトウェア システムズ・エンジニアリング・マネージャー

吉田幸春 ヴィーム・ソフトウェア システムズ・エンジニアリング・マネージャー

そこで今回、2015年7月からプリセールスを担当し、企業などにバックアップの重要性をはじめとする提案活動を行ってきた吉田幸春・システムズ・エンジニアリング・マネージャーに国内外のバックアップ市場やバックアップに対する日本企業の対応、また情シスが知っておくべき知識などについて聞いた。(取材・文:佐保祐大)

――まず、バックアップ分野の市場について、世界の状況について教えてください。

バックアップのニーズは変わっていません。ただ、業界全体が右肩上がりで上がっているわけではなく、どちらかというと縮小しています。なぜかというと、企業のシステムが以前は社内で作るのが一般的だったのが、仮想化のクラウドが出てきたことで、どんどんそちらに移っているからです。ある調査会社の報告では今後3年のうちに半分近くまで移るとさえ言われています。このことからも、世界的なバックアップ市場は少し右肩下がりになっていくと見ています。

――日本はどうでしょう?

日本のニーズもグローバルと大きくは変わりません。しかし、北米(市場)に比べると日本はそこまでクラウドが進んでいない印象は持っています。海外は効率化を求める傾向があるので、仮想化のクラウドに移行が進んだと思います。日本も10年前から(クラウドの活用は)進んではいましたが、北米などに比べると動きが遅かったという印象はぬぐえない。

日本ではSIerがいいものを作るという文化があるので、クラウドに行きづらい事情はあると思います。だからこうした状況を受けて(北米の企業と)データ保護の考えも違っているわけです。

ただ、今後、日本も北米と同じような傾向をたどると思います。具体的には北米のように仮想化クラウドは国内でもニーズが増えていくと見ています。そして、仮想化クラウドに付随する形でバックアップのニーズも高まっていくと思っています。

――バックアップに対する日本企業の意識をどう見ていますか?

私たちは「バックアップ」という単語は使わないようにしているんです。なぜなら、バックアップに対するイメージが人によってそれぞれ違うからです。バックアップの一般的なイメージは、何かあった時に元の状態や前の状態に戻すという「保険」のようなものです。

この考えだとバックアップは「コスト」というイメージが強くなって、社内で予算が最初に削られてしまうんです。さらに「収益に対しては何も貢献していない」というイメージまで持たれています。

例えば、データのバックアップをとっておけば壊れても戻せます安心です。でも一方で「止まっている間はどうするのか?」また「止まっている間にバックアップに払う10万、100万円を超える大きな損失がある」という点は見落とされがちです。

そうならないように「システムのダウンが企業の損失につながらないような仕組み作りが必要なんじゃないですか?」ということを私たちは言いたいのです。それが私たちの掲げる「アベイラビリティ」(=システムの障害や停止が発生しにくく、発生しても速やかに復旧ができること)ということなのです。

私たちがバックアップという単語をやめているのもそこにあります。バックアップというのは「取って戻す」っていうイメージが強いので、そうではなくてよりお客さま全体のビジネスを高めるという意味で「アベイラビリティ」という単語を使うようにしています。

バックアップで「取って戻す」という考え方は、10年、20年も前のものです。今、ITに依存をしてビジネスをしているのであれば、より汎用性の高い基盤を作ることが重要です。ただ、そこまで意識を持たれている方は少ないと感じています。運用担当者が「バックアップ取っておきます」と言ったらそこで完結して、それで終わりと思っている人があまりにも多いんです。

――バックアップは軽く見過ごされがちなのでしょうか?

それはあります。みなさんバックアップに対する必要性っていうのは分かっているんですが、(バックアップは)お金を生まない。だから優先順位は下げられがちです。これはセキュリティと似ています。一回何か起きると気づくんですけど、何も起こらないうちは気付かない。でも「何もしない」ということに対しては不安な人が多くて、みなさん何かしらの対策は行います。ただ、予算に限りがあるので、最低限のことだけやって終わってしまっているのが現状です。

――では、バックアップの必要性はどこにあるのでしょうか?

システムには常に「リスク」が付きものだと思います。システムトラブルはハードでもソフトでもヒューマンエラーでもどんなことからでも起こりえます。何か起きてしまった時に、今あるものがなくなると困ることは多々あります。

なかでも一番怖いのはヒューマンエラーです。例えば「間違えて消してしまった」「上書きしてしまった」ということです。こうしたことが起きた時に影響範囲が分かればよいのですが、分からないことも多い。そのためにバックアップは全てのデータを保護して、なくさないために必須のものだと思っています。

――その重要性を情報システム担当者はどのくらい認識していると見ていますか?

私がお話をしてきたほとんどの方は認識していると思います。私がよくお話をするのはパートナーやSIerだったりしますが、そうした方々はバックアップの重要性をよく理解している。一方でSIerの先にいるエンドユーザーの企業は意識している人は多くはないと思っています。付け加えると、さきほどもお話ししたように、バックアップにかける予算には限りがある。バックアップに大金をかける気はないという企業がほとんどなのです。

――そのことをどう感じでいますか?

「最低限守られているという意味ではいいかもしれませんが、ただ何かあった時のビジネスへの影響は想定以上に大きくなっていると思います。年間100億円以上を稼ぐ会社のシステムが壊れて2週間止まってしまうと、単純にそれだけで何億円もの損失を出すことになります。だから、ただ元に戻すのではなく、「いかに早く戻せるか」ということまで考えるかが重要だと思っています。

――バックアップはどのくらいの頻度・領域まで必要でしょうか?

これはシステムや人によって変わるので明確なことは言えないのですが、私たちは以前、「何かあった時に、どのくらいの早さでデータを戻せたらいいですか?」というアンケートを取ったことがあるんです。そのときに9割ぐらいの方が1時間以内って答えたんです。その答えから、1日に何回かバックアップは取っておいた方がいいでしょう。そうはいっても、現実には夜中に1回だけというところが多いと思います。

――バックアップのベストな使い方はありますか?

理想としては物理に近い仮想の共通基盤を作って全部バックアップを取ることです。そうすることで、ダウンしても数分でもとに戻せる環境を作ることができる。加えてシステムにひもづいていた個別のデータも共通化して共通基盤にあわせて全部バックアップすることです。これが一番楽ですし、業界全体としても今そういう方向に進んでいます。

――バックアップについて情シスはどんな知識が必要ですか?

まずは技術的な知識の前に運用しているシステムがあった時にどういったことが起きるのかなどのリスクに対する社内確認と認識が必要です。そして、そのなかで会社が必要とするバックアップのニーズを知り、妥協できるポイントを見つけることです。

例えば、今あるシステムが止まった時に1日前の状態に戻りたいとします。その場合には1日1回のバックアップを取れば十分です。しかし「1時間前でないと厳しい。でもおカネはそこまでかけられない」というのであれば「2時間に1回」や「半日に1回」で戻せる仕組み作りを考えることが重要です。

次に本番運用する仕組みを共通の仮想化基盤に持っていける知識を持つこと。その上で時代が変わって社内でのニーズが変わった時でも対応できるような基盤を今のうちに作ることが必要です。

最後に「どういったデータ保護の仕組みがあるのか」「どういったアプローチがあるのか」「どうすればコストをかけずに済むのか」「どうすれば短時間でもとに戻せるのか」ということも知っておく方が大切です。

――では、バックアップ市場でヴィームの強みは何ですか?

私たちは会社ができて10年の新興ベンダーです。この10年は仮想化が出てきてからの10年でもあります。だから私たちは仮想化を前提としたビジネスをずっと行ってきました。そのため、他社よりも仮想化に対するメリットを活かせる機能を多く持っています。

仮想化で求められる「標準化」「仮想化」「自動化(大規模なシステムなどを一括で構築できる仕組み)」のなかで、標準化はとても重要です。標準化というのはただデータを戻すのではなく、よりダウンタイム(システムなどが停止している時間)を短くする仕組みや本番環境へ影響を少なくする仕組みが最初から入っていることです。この標準化の機能が優れていることがヴィームの強みだと思っています。

――日本でどう販売を拡大していく計画ですか?

ヴィーム単体で何かをやることはありません。海外と同じやり方になるのですが、有力なディストリビューターやリセラーと協業しながらSIerを開拓していく。これが1つの考えです。ここではディストリビューターやリセラーがより提案しやすい仕組みをほかのベンダーと一緒に開発していきます。ほかにもグローバルでソフトやハードを作っているベンダーさんと協業していいソリューションを作っていきたいとも思っています。そうやって日本企業を開拓していくつもりです。

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