使える! 情シス三段用語辞典127「ITIL」
常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。『情シスNavi.』では数々のIT用語を三段階で説明します。
一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明
取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?
この記事の目次
一段目 ITの知識がある人向け「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」の意味
ITサービスを支援するためにまとめられた成功事例集、「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」について説明します。
ITSM(ITサービスマネジメント)とは?
利用者がいつでも快適にITサービスを利用するために行う活動を、「ITSM(IT Service Management:ITサービスマネジメント)」と言います。
そして、ITSMにおける利用者とITサービスは、次のように広範囲に及びます。
- 利用者:社員・顧客・ビジネスパートナーなど
- ITサービス:利用者に提供するすべてのハードウェア・ソフトウェア・コンピューティングリソース
イギリス発の成功事例集「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」
ITサービスの支援といっても、上述のとおり、その管理対象は膨大なため、効率的に行うことが非常に困難です。
1980年代後半の英国。当時の英国政府も同様で、ITサービスの運用効率化が進まないことに頭を抱えていました。
そこで、英国政府が主導でITSMの成功事例を文書としてまとめたガイドライン、「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」が発行されました。
ITILの構成要素
ITILの最新版が2019年リリースのv4です。ITIL 4では、次の5つの概念を取り入れています。
- サービスバリューシステム(SVS):次項で説明します。
- サービスバリューチェーン(SVC): ITサービスを通じて機会や需要を価値に変換するためのモデル
- サービスマネジメントの4つの側面:「組織と人材」・「情報と技術」・「パートナーとサプライヤ」・「バリューストリームとプロセス」という4つの側面
- プラクティス:業務の遂行や特定の目的を達成するために設計された、一連の組織リソース
- バリューストリーム:各組織の状況に合わせた具体的な活動を整理
このように、ITILで述べられているのは、即効性がある技術などではなく概念ですが、汎用性が広く、ITに関係しない業務に従事する人も知っておいて損はない理論です。
また、ITILで述べられている理論すべてを実行する必要はなく、企業のITSMプログラムに合わせて、必要な理論・事例のみを参照します。
ITILの重要概念「サービスバリューシステム(SVS)」
ITILは長大な文書ですが、中でも重要な概念としているのが、次の5要素から構成される「サービスバリューシステム(SVS)」になります。これら5つが1つのエコシステムとして機能することで、サービスの価値が創造されるとしています。
- 指針となる原則:全ての企業に適用できる普遍的な原則
- ガバナンス:評価や方向づけなど、ITマネジメントに関する組織レベルの意思決定機能
- サービスバリューチェーン:価値あるサービスを提供するための、組織活動群
- プラクティス:特定の目的を達成するために設計された組織のリソース群
- 継続的改善:ユーザの要求を継続的に満たすための組織活動
二段目 ITが苦手な経営者向け
とある部品メーカーでの昼下がり。情シス課長の阿久津さんの元へ社長がやってきました。
社長:阿久津さん、阿久津さん。知り合いの社長から「ITSM(ITサービスマネジメント)」って言葉を聞いたんだ。なんでも、ITの立場からビジネスを理解してビジネスの発展に貢献するという視点なんだそうだ。さらに、社員だけではなく顧客やビジネスパートナーなどに対し、全てのITサービスを最適に提供・・って・・。社長の僕でも、全部のマネジメントなんて無理!
阿久津:いや、僕も同感です。僕の力で全てを最適に管理なんて無理ですね!
社長:何かお手本みたいなものがあれば、真似できるんだけどね。習うときは先人の真似をしろってよく言うし。
阿久津:ありますよ。ITSMの成功事例や法則をまとめた、「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」というドキュメントがあります。
社長:ほう。
阿久津:これを読めばITSMが実現するといった具体的な技術が書かれているものではありませんが、ITSMを実現する上で、知っておくべき理論が包括的に網羅されていますよ。
社長:ITILは指南書に当たるわけだな。
阿久津:そうですね。迷ったときに必要な項目だけを参照しながら、参考にできる教科書のひとつがITILです。
三段目 小学生向け
はなまる小学校では毎年3月に、卒業生が謝恩会を企画・運営して、先生方や保護者を招待しています。
A君「そろそろ謝恩会の企画したほうが良さそうだね。」
Bさん「謝恩会って、どこでやるんだっけ?」
C君「誰を呼ぶのかとか、招待状をどうやって作るのかとか、考えることがありすぎて分からないよ。」
Dさん「招待しただけじゃだめで、来場者が車で来るのか徒歩なのかとか、学校の外での段取りも考えないと」
A君「困ったね・・去年の6年生はどうしてたんだろう」
Bさん「毎年謝恩会しているんだから、成功したことだけノートにまとめておいてくれれば良かったのに・・」
インターネットを使う仕事の場面でも、はなまる小学校と同じことが起こっています。
ITサービスを提供するという仕事の量が膨大過ぎて、管理できないという問題が発生していました。そこで、過去に成功したことだけをまとめた、「ITIL(Information Technology Infrastructure Library)」という参考書を作った人がいました。
ITILでは、はなまる小学校の謝恩会をどうやって企画するかについての答えは書いていませんが、さんかく小学校でもしかく小学校でも使える方法が書いてあります。
「先人の知恵から学ぶ」このことは、謝恩会の企画でもITサービスの世界でも変わらないということですね。
さて、皆様のご理解は深まったでしょうか?
【執筆:編集Gp コンドウマリ】