量子コンピューティングに関する調査結果 2021-IDC
IT専門調査会社 IDC Japanは、量子コンピューティングに関する調査結果を発表している。
最新の調査結果によると、量子コンピューティングへの投資は今後24か月間で増加する見通しであるという。この技術に年間IT予算の17%以上を投入する企業の割合は、2021年の7%から、2023年には19%に増加すると予測されている。
量子コンピューティング技術の利用によるAI機能の強化、セキュリティの向上、アルゴリズムの最適化を通じて、ビジネスプロセスを改善・加速し、競争優位性を確立したい企業が、投資の牽引役となる。
量子コンピューティングに投資し検証を進める企業が増加
最新の調査結果によると、2021年初頭、量子コンピューティング技術に関心のある企業のうち5分の1がこの技術を現在使用していると回答し、3分の2が今後18~24か月以内に検証を開始する予定だと回答している。
このような変化は、量子コンピューティング用のハードウェアおよびソフトウェアへのアクセスを提供するインフラへのグローバルなクラウドサービスプロバイダーの投資、量子計算のスペシャリストの雇用や開発者の育成、新しいビジネスソリューションの開発を目的とする量子コンピューティングベンダーとの協業によってもたらされる。
しかしながら、テクノロジーの複雑性、スキルセットの制約、利用可能なリソースの不足、コストの問題により、量子コンピューティング技術への投資に踏み切れない企業もある。
こうした懸念を解消するため、量子コンピューティングベンダー、一部のクラウドサービスプロバイダー、および独立系ソフトウェアベンダーは、この技術を検証できるクラウドベースの量子コンピューティングソリューションを企業向けに提供している。
そして、これらの組み合わせによる新たな”as a Servise”も登場している。
Quantum Computing Infrastructure as a Service(QCIaaS)、Quantum Computing Platform as a Service(QCPaaS)、Quantum Computing Software as a Service(QCSaaS)は、量子コンピューティングを利用するために必要な量子コンピューティング技術、アプリケーション、テクニカルサポート、その他のリソースへのアクセスを企業に提供するものである。
当然ながら、これらに関連するテクニカル/ビジネスコンサルティングサービスも普及が進んできている。
これらサービスは、量子コンピューティング技術の採用によってクライアントにもたらされる価値の明確化、量子アルゴリズムの開発とテスト、量子コンピューター時代における回復力の強化に役立つのである。
「量子コンピューティングは未来の産業であり、大量のデータ、AI、機械学習を利用してリアルタイムのビジネスインテリジェンスを加速させ、製品開発にイノベーションを起こすことを望んでいる企業にとって、破壊的な変化をもたらすインフラストラクチャです。さまざまな業種のさまざまな企業が、今後の競争優位性を獲得するために、現在すでに量子コンピューティングの可能性を探るため検証を進めています」と、米国IDC Infrastructure Systems, Platforms, and Technology シニアリサーチアナリストのヘザー・ウェストは述べている。また、「量子コンピューティングに関心のある企業は、この技術への投資に躊躇すべきではありません。量子コンピューティングは業界に破壊的な変化を起こす可能性があります」とも述べている。
「量子コンピューティングはまだ初期段階ですが、ヨーロッパでは企業の関心も高く、その取り組みが着実に増え続けています。最も革新的な企業はいかなる業種においても、量子コンピューティングのビジネスユースケースの確立と開発にただちに着手すべきだと認識しています」と、IDC European Quantum Computing Launchpad co-lead でシニアリサーチアナリストのステファノ・ペリニはいいます。また、「こうした動きによって、年ごとに成長しつつあるヨーロッパの量子コンピューティング市場が漸進的に発展しています」と述べている。
Enterprise IT Infrastructure Survey, 1Q21: Insights on End-User 2021 IT Compute Infrastructure Priorities and Adoption of Quantum Computing (IDC #US47687021)では、IDCが実施したコンピューティングに関するエンタープライズITインフラストラクチャ調査の結果が紹介されている。
2021年4月に完了したこの調査では、エンドユーザーが2021年に計画しているサーバーITインフラストラクチャとその用途、採用や配備の動向、アクセラレーテッドコンピューティング、ITインフラの自動化について考察している。
その他の調査トピックとしては、モデリングとシミュレーション、AI、ビッグデータアナリティクスのワークロードに加え、量子コンピューティング技術がある。
今回紹介した調査レポートは、IDC’s Performance Intensive Computing CISを通じて入手可能なIDCの量子コンピューティング調査の一部である。
この調査には、エンドユーザーによる採用のトレンド、ベンダーの知見と戦略、および量子コンピューティングのユースケースに焦点を当てた定性的調査および定量的調査が含まれている。IDCの量子コンピューティング調査は、クラウドベースの量子コンピューティングの需要サイドについて、優先的に選ばれるテクノロジー、エンドユーザーの投資、実装、採用戦略、ベンダーに関する知見、量子コンピューティングのユースケースも含めて分析している。
量子コンピューティング市場の定義に関する詳しい情報は、IDC’s Worldwide Quantum Computing Taxonomy, 2021に掲載している。
※本内容は2021年5月19日の米国IDCによる発表の日本語訳をベースにIDC Japanが編集したものである。
本レポートは、IDC Japan様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
ソース:https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ48122721