DX時代の情シス基礎知識#01【IT戦略編】
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的な流行もあり、近年、社会情勢は不確実性・複雑性を増しています。
このような状況の中、企業が持続的な成長を実現するために、ITは戦略実行の要として重要性が高まっています。
デジタルトランスフォーメーション(DX)もその一環といえるでしょう。
情報システム部門(情シス)においては、ITの観点から企業が変革を遂げるために必要となる、戦略の策定から実行を支援する体制・プロセスの構築などを総合的に実施する必要があります。
また、これらを実施するにあたり、必要な変革を多面的な角度から推進、組織成長を促すようなことも関連部署を巻き込んで行っていく必要があります。
今回は情報システム部門として、企業にDXが求められている今だからこそやっておくべき「IT戦略」の考え方について紹介します。
IT戦略の目的
現在、様々な分野においてデジタル技術の導入が加速しています。身近なところで言えばスマホがない生活、LINEやTwitterがない生活は今や考えられないのではないでしょうか? このようにデジタル技術は、人々の日々の生活に必要不可欠なものとなり、すでに社会全体を変えています。
企業においても同様です。生産性向上を目指し、顧客からの問い合わせはチャットボットが代行し、オペレーターとの会話は自動的にテキスト化され、タスク管理されます。社内システムにおいても、BCPやコスト削減の観点からオンプレミスからクラウドへ移行が進み、以前のように「基幹システムはスクラッチ開発!」という時代ではなくなりつつあります。
更に新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、”新しい生活様式”、即ちリアルに人と対面しないビジネスモデルが求められ、この実現にはITツールが欠かせません。
このようにIT戦略は、今や事業経営の一部と考えるべき状況にあり、DXもその一つではないでしょうか。
経営層と現場のギャップ
しかしながら、実際のところはどうでしょうか。多くの企業において「情報システム部門が機能していない」という経営層からの声を耳にします。
特にこの傾向は中堅・中小企業の情報システム部門に多いように見受けられます。
その理由は、「ベンダーからの提案を吟味できる人材がいなかった」「ベンダーに丸投げしてしまった」「とりあえず、できるところから着手した」「(内部統制に問題があり)現場主導でシステム導入してしまった」など様々にあるでしょうが、なぜ”機能しない”状況にまで陥ってしまうのでしょうか。
その理由の一つに現場と経営層のギャップがあると考えます。「経営層が情報システム部門に期待していること」と「情シスが実際にやっている作業」にずれがあることが問題なのです。
経営層は”IT戦略”や”システム投資計画”といった『企画』機能を情報システム部門に期待しています。その期待に、情報システム部門が応えられていないことが多いのではないでしょうか。
昨今「DX人材の不足」が叫ばれているように、DXを推し進めることができるような人材にはクラウドやAIなどのIT知識のみならず、事業戦略を考える能力も併せ持つ必要があるといわれています。IT戦略にしても、同等といえるでしょう。
「過去に『企画』経験がないことから実行に移せていない」というのも理由の一つかもしれませんが、その他にも「システムメンテナンスや日々のPC/ネットワークトラブル対応や運用業務に忙殺されて手が回っていない」、「そもそも『企画』業務を求められているとは思っていなかった」などの理由により実現できていないことが考えられます。
企業にとって、情報システムは今やなくてはならない存在です。PCやITを使わずにできる仕事の方が貴重な存在と言えます。それにも関わらず情報システム部門が適切に機能していないとすれば、経営上の大きなハンデにもなってしまいます。
「何が不満なのか」「不満が発生している原因は何なのか」を明らかにすることが、IT戦略検討の第一歩かもしれません。
そんなギャップのない、経営層とのコミュニケーションがとれていることが本当は理想なのですが。
実際にIT戦略を策定するためには
IT戦略の策定においては、自社の事業戦略・経営戦略を理解した上で、背景となる想いや価値観も考慮し、そこにITの最新トレンドも加味しつつ、多角的な角度から将来像を描くことが求められます。そう、まさに自社のITコンサルティングを手掛けることになります。
まずは理想像と現状とのギャップを理解するところから着手し、これを基にテーマ・成功要因を導出、かけられる期間やリソースを考慮、定性・定量的な経済性を明確にしながら、複合的に優先度を判断する必要があります。
これと併行して、トップマネジメントやステークホルダーと対話を行い、経営に最大限資する中長期的な視点でのストラテジー策定となっていることも重要な要素です。故に、情報システムは今や会社の中枢という考え方もできます。
<出典:HiBlead>
文字だけの説明ではわかりにくいと思いますので、実際に手掛ける際にはまずは上図を参考に頭を整理してください。
そして、まずは自分たちがどうありたいのか、”ゴールとなる全体像”を考えてみましょう。これが起点になります。
そして、その実現方法にはいくつか方法があります。
耳にしたことはあると思いますが、ウォーターフォール型開発とアジャイル型開発です。(参考:いまさら聞けない【情シス知識】DevOps~アジャイルとの関係~)
ここでは詳細な説明は割愛しますが、ゴールとなる全体像を一気に作り上げる「ウォーターフォール型開発」は時間もコストも必要になります。
一方で、小さく始められる「アジャイル型開発」であれば、トライ&エラーを繰り返しながら、効果的な部分から少しづつ始めることができます。
しかしながら、アジャイル型開発にも注意が必要です。”木を見て森を見ず”ということわざがありますが、小さく始められるからといって、そこだけの最適解を目指してはいけません。先にも触れましたが、”ゴールとなる全体像”を念頭におきながら取り組まないと、例えばDB選定や言語選定を間違うなど、後々システム連結をした際にちぐはぐすることになります。
自分で取り組むにはハードルがある場合は…
理想とする青写真が会社として描けていて、現状のビジネスも理解している。しかしながら、経験不足ということもあり、その先へなかなか踏み出せないという状況にいる場合は、一度、ITコンサルティング会社に相談してみるのも良いのではないでしょうか。『餅は餅屋』とも言いますし、別の視点から見てもらうことは悪いことではありません。
しかしながら、気になるのは費用面。大手コンサルティングファームともなればブランド料が加算されるかもしれませんが、ITコンサルタントは基本的には月額単価での換算となるので、プロジェクト型で契約社員を契約するのと基本的には変わりません。但し、専門知識をを提供する分、単価が高いところが違いでしょうか。
「情シス コンサルティング 戦略」などのキーワードでネット検索し、その中からいくつか”ビビっ”ときた会社に相談してみることをお勧めします。
名前もないところに仕事の依頼をするのは不安もあるでしょうが、いくつかのITコンサルティング企業と話をすれば、自社に必要なキーワードが見えてきます。
上手にITコンサルティング企業を使い、素早い対応をすることも自社に貢献するという意味では重要です。長々と開発し、導入が遅れれば遅れるだけ、損失になっていると考えることもできますから。
【IT戦略検討のポイント】
- 全社戦略・事業戦略と整合性の取れたIT投資のロードマップの策定
- 複合的な視点からのテーマ策定、実行性・経済性を加味した優先度付けを実施
【執筆:編集Gp ハラダケンジ】