国内企業におけるAI活用の成熟度調査-IDC
IT専門調査会社 IDC Japanは、国内の従業員数500人以上のユーザー企業でAI(Artificial Intelligence:人工知能、以下AIと記載)システムを保有し、AI導入の方針決定に影響力のある回答者を対象とした調査を第1回(2019年11月)の実施に引き続き第2回(2020年11月)を実施。
AIの活用に関する成熟度を第1回実施結果との経年比較を踏まえて定量的に評価、分析を行った結果を発表しています。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行の影響によりユーザー企業の事業変革に対する危機意識は高まっていると言えます。
AIシステム市場は、変革を牽引するDXへの投資が加速することによりAIがその中心的テクノロジーとしての役割を果たしていることから、COVID-19によるユーザー企業のIT投資抑制のマイナス影響を大きく受けることなく継続的に成長しています。
しかし、AIシステムの取り組みにおいて先駆的に進めてきた企業とそうでない企業の間には格差が生じています。
AIの取り組みを先駆的に進めてきたリーダー企業はCOVID-19を商機と捉え、外部環境の変化に対して柔軟にかつ迅速に対応しています。
一方遅れを取ってしまっている企業は、ビジネス機会の時流を掴めずに苦戦している状況です。
IDCでは、国内ユーザー企業がAIを活用し自社の事業を優位に推進するためにAI活用の成熟度をどのような段階を経て高めていくかについて、ユーザー企業は十分な認識を持つ必要があると考えています。
そこでAIの成熟度を客観的に判断する指標をユーザー企業に提供するために「IDC MaturityScape:Artificial Intelligence 1.0」のモデルを開発し、国内ユーザー企業を対象に定量的にAI活用の成熟度を分析した「IDC MaturityScape Benchmark: Artificial Intelligence in Japan, 2021」を発表しています。
IDCではAI活用の成熟度について、以下の5つのステージで評価しています。
- ステージ1:個人依存(Ad Hoc)
- ステージ2:限定的導入(Opportunistic)
- ステージ3:標準基盤化(Repeatable)
- ステージ4:定量的管理(Managed)
- ステージ5:継続的革新(Optimized)
そして今回の調査により、国内ユーザー企業は以下のように分類されました。
- ステージ1:3.5%
- ステージ2:34.0%
- ステージ3:38.0%
- ステージ4:22.9%
- ステージ5:1.7%
前回の調査結果と比較すると国内ユーザー企業の上位ステージ4以上を占める割合が17.0ポイント上昇し、特にステージ4の増加が15.5ポイントと顕著であることがわかりました。しかしながら、ステージ5の割合は前回と大きく変わらず最上位ステージへの移行の難しさを示しています(参照:図1)。
図1:国内AI 成熟度の比較:2019年と2020年(出典:IDC)
また、事業計画とAIの導入戦略を一体化しビジネス価値を獲得し始めているリーダー企業と、そうでないフォロワー企業の成熟度のステージ分布の傾向の差が明確に表れています。
前回の調査結果と比較するとリーダー企業はステージ4以上の割合が2020年は57.9%と前年から43.6ポイント増加しています。
一方でフォロワー企業はステージ3以下の割合が2020年は90.7%と前年から3.8ポイントの減少に留まっています。
国内企業全体の成熟度の傾向としては、リーダー企業の成熟度の上昇の勢いが影響し24.6%が上位ステージ4以上を占める結果につながったとIDCでは推測しています(参照:図2)。
図2:国内AI 成熟度のリーダー企業とフォロワー企業のステージ分布の比較:2019年と2020年(出典:IDC)
IDC Japan ソフトウェア&セキュリティグループのリサーチマネージ ャーである飯坂 暢子氏によれば「COVID-19はAIの成熟度の進展に効果をもたらす触媒の一つになっている。COVID-19を商機と捉えて成熟度をさらに向上する企業とそうでない企業との格差が広がっている。企業はAIの成熟度は一朝一夕には高められないことを認識し、AIの投資戦略を再度評価し長期的な視点と目的を持ちつつ、外部環境に柔軟に即応し改善と実行を繰り返すべきである」と分析しています。
今回の発表はIDCが発行したIDC MaturityScape Benchmark: Japan Artificial Intelligence in Japan, 2021 にその詳細が報告されています。
本レポートでは、国内ユーザー企業が自社の AI分野における成熟度を客観的に評価する基準となる情報を提供するために実施した調査結果を記載。
評価については成熟度の5段階評価に関するに加えて、5つの特性であるビジョン、人材、プロセス、テクノロジー、データレディネス別に考察しています。
この調査結果を利用することで、ユー ザー企業は、自らの組織/企業の成熟度と国内の平均的ユーザー企業の成熟度とを比較できる分析を行っています。
本レポートは、IDC Japan様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
ソース:https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ47528721