調査レポート:取締役向けサーベイ(2022年)-ガートナー

米Gartnerは、取締役の57%がリスク選好を高めた、または2022年にかけて高めるつもりであるとの最新の調査結果を発表している。
企業の取締役は、経済の不確実性 (38%)、競合他社からの破壊的なビジネスモデルの出現 (35%)、供給不足によるコスト上昇 (28%) の上位3項目を、業績に対する最大のリスク要因として挙げている。

Gartnerが実施した2022年の取締役向けサーベイは、米国、欧州、アジア太平洋の地域において、法人の取締役会メンバーを対象として2021年5~6月にオンライン形式で行われ、273人の取締役から回答が寄せられた結果である。

アナリストでディスティングイッシュト バイス プレジデントのパーサ・イェンガー (Partha Iyengar) 氏は次のように述べている。

「パンデミックの間、取締役には立ち止まるという選択肢はなく、リスクの高いビジネス環境での事業運営に慣れる必要があることを認識するようになりました。そのため、『いち早く挑戦し、早い段階で失敗してそこから学習する』というアプローチを採用するようになった取締役は、2022年に向け、不完全な情報に基づいてテクノロジ投資決定を下す、事前に確実なリターンを見通せなくても財務的な賭けに出る、といったリスクを取り続けていくでしょう」

 

デジタル・テクノロジは引き続き最優先課題

取締役は、デジタル・テクノロジ・イニシアティブを引き続き重視しており、調査回答者の58%が最優先すべき戦略的ビジネス課題としてこれを位置付けている。
しかし、この割合は2021年の調査と比べるとやや減少傾向にある (図1参照)。

図1. 取締役会にとっての、2022~2023年における戦略的なビジネス優先課題の上位7項目
<出典:Gartner (2021年11月)>
また、前出のイェンガー氏は次のようにも述べている。

「過去12~18カ月間にデジタル・ビジネスに膨大な投資を行ってきた企業は今、少し立ち止まり、戦略の検証と投資収益率 (ROI) の確認を行っています。取締役会が現在注力しているのは、テクノロジの統合のほか、テクノロジがビジネス全体に浸透してビジネス成果を推進する、より永続的で体系的なデジタル経済アーキテクチャの構築です」

「今回の調査では、回答した取締役の64%は、企業の経済構造をよりデジタル経済中心のアーキテクチャに転換しようとしていることが明らかになりました。これはつまり、デジタル投資を吸収するために、予算配分やガバナンスへのアプローチを変えつつあるということです。例えば、取締役の40%は、デジタル・ビジネス関連予算をテクノロジ/IT予算に集約するのではなく、ビジネス部門に移管しています。また、取締役の3分の1は、デジタル投資のROIを評価するための指標を変更しています」

取締役会の焦点は、ITの範囲を超えたテクノロジの役割へと移りつつあるが、取締役会のデジタル・イニシアティブにおける重要なパートナーとしてCIOが認識されていることに変わりはないといえよう。
取締役の34%は、IT/デジタル/テクノロジ小委員会 (いずれかの名称) を正式に設置しており、そのうちの大多数 (94%) はCIO/CTOが当該小委員会の正式メンバーであると回答している。

 

取締役会の優先課題は、人材に関連する課題と社会問題

人材 (従業員の定着、トレーニング、採用など) に関連する課題を、取締役の52%が最優先すべき戦略的ビジネス課題として挙げており、2021年の調査と比較して86%増加しているという。

更にイェンガーは次のように述べている。

「人材に関連する懸案事項は、テクノロジ・トランスフォーメーションと密接に結び付いています。企業がデジタル・ビジネス・イニシアティブを加速させる中で、ITスキル不足といった問題や、デジタルに対応したアジャイル人材の育成の必要性、組織文化の変革が非常に重視されるようになっています」

また、ESG (環境、社会、ガバナンス)健康持続可能性は、取締役会の優先課題の上位3項目に入り、昨年から100%増加している。

今回の調査から、取締役会の30%は、自社が主要な社会問題または政治問題に公式に関与していると考えており、半数近く (45%) の取締役会が「DEI:ダイバーシティ (多様性)、エクイティ (公平性)、インクルージョン (包摂性)」をすべての会議で、または四半期ごとに議題にしていることが明らかになっている。

 

詳細の内容については、「Roadmap to Renewal: Insights from the 2022 Board of Directors Survey」と題した無料のウェビナーでも確認いただけるので、参考にするのもよいだろう。

 


 

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