Gartner, Inc. (以下Gartner) は、2021年の世界の製造業に影響を与えるビジネス・トレンドのトップ5を発表しています。
これらのトレンドは、製造業にビジネス・ディスラプション (破壊) を促し、チャンスを広げるものです。
参考|ディスラプションとは?
ディスラプション(disruption)とは、直接的には破裂や崩壊を意味する言葉ですが、ビジネスにおいては、デジタルと組み合わせた「デジタル・ディスラプション」という言葉として使われることが多い。
PayPal創業者のピーター・ティール著『Zero to One』での記載によれば、ディスラプションとは、シリコンバレー発祥の造語であり、「企業が新しいテクノロジーを使用してローエンド製品(低性能・低価格な製品)を開発/改良した結果、既存のハイエンド製品(高性能・高価格な製品)にとって替わる製品を生み出す現象」を表す言葉として使われたのが始まりのようである。
ガートナーのアナリストでバイス プレジデントでもあるミシェル・デュアスト (Michelle Duerst) は次のように述べています。「多くの製造業にとって、世界的なパンデミックに対する最初の対応は、可能な限り早く業務をデジタル化することでした。デジタル化は正しい道筋ですが、それだけでは十分ではありません。製造業のCIOが長期的に見て将来の同様のディスラプションに備え、顧客との接点の欠如、新しい市場や製品ラインへの参入、財務的な苦境などの課題を改善することが求められますが、今回Gartnerが明らかにしたビジネス・トレンドは注目に値します。」
CIOは、以下の5つの戦略的ビジネス・トレンドを利用して、より良いエクスペリエンスを提供し、トップラインの成長を向上させることができます。
ガートナーの示す5つの戦略的ビジネス・トレンドとは
トレンド1:デジタル+プロダクト・エクスペリエンス
デジタル+プロダクト・エクスペリエンスは、B2Bの顧客や消費者にユニークな製品 (プロダクト) を提供するために物理的なプロダクトとデジタル・サービスを組み合わせたものを指します。今回のパンデミックでは、世界的に厳しいロックダウン規制が敷かれたため、顧客との接点が限定されてしまいました。
デジタルとプロダクトの組み合わせは、消費者の期待に応える魅力的なプラットフォームを提供するという課題に取り組むことを目的としています。
これは、単なるサービスの追加ではなく、他の顧客、先進的なユーザーと自社ブランド、さらにブランド・エキスパートとのつながりを深め、メーカーがプロダクトの販売を超えて消費者とのつながりを維持できる、新しいデジタル・ビジネスモデルを意味します。
Gartnerは、「2025年までに、消費財メーカーのトップ50社が、プロダクトに組み込まれたテクノロジ、デジタル資産としての動画、またはITおよびR&Dチームとの統合イノベーションによる人工知能 (AI) を活用したブランド・アプリに投資する」との仮説を立てています。
トレンド2:トータル・エクスペリエンス
トータル・エクスペリエンスとは、CIOが顧客と従業員の両方を強化し、力を与え、勇気付けて、生涯価値を向上させるために、テクノロジやインタラクションをどのように使うかに関することです。このアプローチでは、CIOは顧客、パートナー、従業員を結び付ける適切なプラットフォームを特定することができます。従業員がブランド・エキスパートとして、あるいは消費者に対する顧客サービス・エージェントとして、質問に回答するなどです。
Gartnerは、「2024年までに、トータル・エクスペリエンスを提供する企業は、競合他社を25%上回るカスタマー・エクスペリエンスおよび従業員エクスペリエンスの満足度評価指標を達成する」との仮説を立てています。
トレンド3:エコシステム・パートナーシップ
グローバル企業は、成熟した市場だけでなく新興市場においても、成長する機会としてエコシステム・パートナーシップを活用することができます。
製造業では、エコシステム・パートナーシップを活用することで、地球に優しいパッケージング、開発途上地域やサービスが行き届いていない地域への支援、リモートワークによるCO2排出削減など、あらゆる種類の取り組みが可能になります。
Gartnerは、「2024年までに、世界の消費財メーカー上位20社のうち75%が、成長と持続可能性の目標に貢献するエコシステム・パートナーシップに参加する」との仮説を立てています。
トレンド4:データ・マネタイゼーション (収益化)
製造業のCIOは、データ・マネタイゼーションにより、プロダクトやサービスのデジタル化から収益を得ることができます。製造業の組織内での急速なデジタル化は、大量のデータを生み出します。
CIOはこのデータをエコシステム全体で共有し、マネタイズすることができます。このアプローチを用いることで、CIOは情報を資産として活用し、新たなサービスを生み出したり、新たなビジネスモデルに参入したりすることが可能になります。
これにより、サプライチェーンの課題や人材不足などの外的要因によって事業が中断された場合でも、継続的な収益の確保が可能になります。
Gartnerは、「2024年末までに、世界の半数の重工メーカーがデータ・マネタイゼーションに成功する」との仮説を立てています。
トレンド5:サービスとしての機器 (EaaS:Equipment as a Service)
サービスとしての機器 (EaaS) とは、企業が機器を購入するのではなく、運用資産に対して定期的な運用料金を支払う商取引モデルです。このモデルでは、CIOは一般的なIoT (モノのインターネット) デザイン・パターンや業界のフレームワークを活用した組み込み型IoTのテクノロジを使用して資産の有効性を確保し、有効に稼働していない資産に対する解決策を見つけます。
Gartnerは、「2023年までに産業機器メーカーの20%が、産業用IoTのリモート機能を備えたEaaSをサポートするようになる」との仮説を立てています (現在はほぼ0%)。
さらに詳しい情報を知りたい方は「Top 5 Strategic Business Trends in Manufacturing Industries for 2021」からご覧いただくことが可能です。
CIOをはじめとするITエグゼクティブにとって世界で最も重要なコンファレンスである「Gartner IT Symposium/Xpo 2021 」では、CIOがどのように逆境に対処するか、また事業を継続していくためのデジタル・ビジネス戦略立案ツールやテクニックをどのように見つけていくかについて、さらなる分析を紹介します。ITエグゼクティブは、このコンファレンスに参加することにより、ビジネス課題の解決とオペレーションの効率化を目的としたIT活用法についての知見を得ることができます。
「Gartner IT Symposium/Xpo」(一部はバーチャル開催) の開催日時と地域は以下のとおりです。
10月18~21日:米国フロリダ州オーランド
10月25~27日:豪州、シドニー
11月8~11日:スペイン、バルセロナ
11月16~18日:日本、東京
11月30~12月2日:インド (バーチャル開催)
Gartner ITプラクティスについて
Gartner ITプラクティスは、CIOをはじめとするITリーダー向けに、組織がデジタル・トランスフォーメーションの推進を通じてビジネス成長をリードするための知見やツールを提供しています。詳細については、https://www.gartner.com/en/information-technology をご参照ください。
Gartnerについて
Gartner, Inc. (NYSE: IT、S&P 500) は、世界有数のリサーチ&アドバイザリ企業である。ビジネス・リーダーが今日のミッション・クリティカルなビジネス課題の解決を実現し、将来にわたって成功する組織を築くために欠かせない知見、アドバイス、ツールを提供している。
Gartnerのリサーチは、エキスパート主導かつ、実務担当者からの情報に基づき、データを重視したもので、この比類なきサービスにより、お客様が重要な課題に対して正しい判断を下せるよう導く。業界や企業規模を問わず、ほとんどすべての職務領域にわたり、Gartnerは信頼されるアドバイザーならびに客観性を備えたリソースとして、国内のみならず世界100カ国以上、1万4,000社を超える企業に支持されている。
本レポートは、ガートナージャパン様のプレスリリースの内容を元に作成しております。
ソース:https://www.gartner.co.jp/ja/newsroom/press-releases/pr-20210729
【海外発プレスリリース】
元となっている資料は、Gartnerが海外で発信したプレスリリースの内容を一部編集し、和訳したものです。原文を含めGartnerが英文で発表したリリースは、以下よりご覧いただけます。
https://www.gartner.com/en/newsroom/