厚生労働省【令和3年版】労働経済白書を公表~テレワークの鍵は環境整備にあり?~

厚生労働省は、一般経済や雇用、労働時間などの現状や課題について、統計データを活用して分析する報告書「令和3年版労働経済の分析(労働経済白書)」を公表しています。
今回の白書における分析テーマは「新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響」ですが、テレワークに関しての分析項目もあり、業務上、テレワーク関連の数値が必要になった場合にサンプルの一つとして頭に入れておくと良いのではないでしょうか。

尚、令和2年度は新型コロナウイルス感染症が労働経済に大きな影響を与えたことなどを踏まえて、労働経済白書の作成を見送ったことにより、令和3年版では2019年と2020年の2年間が対象となっています。

 

新型コロナウイルス感染症による雇用/労働への影響

雇用への影響については、様々なメディアで取り上げられていますが、ベースとなる事象であることから簡単に触れておきます。

<出典:厚生労働省「令和3年版 労働経済の分析(骨子)

上図は今回の新型コロナウィルス感染症の感染拡大期とリーマンショック期の産業別雇用者数推移を比較しています。
見ての通り、リアルに人と接する業種である宿泊業・飲食サービス業、生活サービス関連業・娯楽業、卸売業・小売業は大きな影響を受けており、対前年比25万人減(2020年平均)となっています。一方、情報通信業は”出社70%削減”を目指したテレワークの実施やDXなどによる新しい生活様式に対応した事業形態への変革を実現するために増強が必要だったことが伺えます。

では、このレポートからテレワークの定着状況や課題などを見ていくことにしましょう。

 

テレワークを活用して働いた労働者の分析

テレワークの定着度

テレワークの継続状況をテレワークの開始時期別にみると、感染拡大前からテレワークを実施していた企業や労働者の方が、感染拡大下でテレワークを始めた企業や労働者よりも継続割合が高いことがわかります。

<出典:厚生労働省「令和3年版 労働経済の分析(骨子)

テレワークについて労働者に尋ねた指標(オフィスで働く場合を100として0~200の間で回答)をみると、「生産性・効率性」「充実感・満足感」では、指標の平均値はオフィスで働く場合(100)を下回っていますが、感染拡大前からテレワークの活用経験がある労働者の方が、感染拡大下で初めて活用した労働者よりも指標の平均値が高い傾向にありました。

但し、感染拡大期以前からテレワークを活用してきた企業においては、業務の性質や慣れ等によりテレワークに取り組みやすかった結果、生産性や満足感等が高くなっている可能性があることにも一定の留意が必要ではあります。
しかしながら、ワーク・ライフ・バランスの実現度においてはどちらも高い値を示しており、今後、生産性・効率性といった部分でシステムやツールの進化/改善があれば、新たな働き方の一つとして定着することも可能でしょう。

テレワークを実施しない理由

完全テレワークが眠れる労働人口を呼び起こす新しい働き方である一方、テレワークを実施しない企業もあります。
対人でのサービス業などではなかなかに難しいのは実情ですが、なぜ実施しないのかその理由を見ていきましょう。


<出典:厚生労働省「令和3年版 労働経済の分析(骨子)

テレワークを実施しなくなった理由をみると、業務の性質や感染の影響などの他律的な理由を除けば、テレワーク時の仕事の進め方やテレワークのための環境整備といった労務管理上の工夫により対応可能な事項(赤囲み箇所)に関する事項が挙げられています。
特に2020年4~5月の緊急事態宣言下にテレワークを始めた方は、その回答割合が高くなっています。
”とりあえず”で実現したテレワークという働き方がツールを含めて現状の業務プロセスにマッチしないことも考えられます。
業務が一段落した隙を見つけて、一度問題点を洗いなおしてみると良いのではないでしょうか。

企業側としても同様の項目が課題となっています。
「社員がテレワークするための環境整備が難しい」という回答は、うまく運用できている企業とそうでない企業の間に大きな差があります。端末調達や環境整備などの費用面、クラウドやセキュリティシステムを構築する人材面などは、企業の規模や業種による差があることが伺えます。

そうそう、一つ大事なことを忘れていました! 正しい運用だけでなく”経営陣の理解”、これがテレワーク継続には最も必要かもしれません。

テレワーク、その仕事の進め方・環境整備と満足度

最後に仕事の進め方、環境整備とその満足度を見ていくことにしましょう。


<出典:厚生労働省「令和3年版 労働経済の分析(骨子)

仕事の進め方については、テレワークの影響がどの程度あるのかはなかなか判断しにくい状況に見えます。

しかしながら、環境整備については以前から検討していた企業と新型コロナウィルス感染症拡大後に準備した企業では明らかな違いがあります。
前述したように、自社にフィットするテレワークの理想形を一度考えてみることから始めてみてはどうでしょうか。
これがきっかけにある意味社内DXのスタートになるかもしれません。

充実感・満足感のスコアはどう読むか難しいところです。
企業において、業務範囲・期限や仕事の評価基準を明確にすること、業務の裁量をもたせること等のマネジメント上の工夫はテレワーク特有のことではありません。しかしながら、テレワークをする際の環境整備に取り組むことで、テレワークをする際の充実感・満足感が高くなっているというのは”情シスの腕の見せ所”なのかもしれません。

 

【執筆:編集Gp ハラダケンジ】


<参考文献>

◆厚生労働省・令和3年版労働経済の分析(労働経済白書)

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