中小規模製造業に特化したデジタルトランスフォーメーション(DX)事例-IPA
IPA(独立行政法人情報処理推進機構)は、中小規模の製造業に焦点をあてた事例ヒアリング調査に基づく「中小規模製造業の製造分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)のための事例調査報告書」を公開する。
経済産業省が2018年9月に「DXレポート」を発表して以来、国内企業でもデジタル技術やデータ等の活用で組織の競争力を向上するデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが加速。日本のGDPの約2割を占める基幹産業である製造業において、スマート工場など大企業の取り組みが進む一方で、中小規模の企業では人材やコスト面などの課題からDXへの取り組みは大企業ほど進んでおらず、国内製造業としてみた場合の「DX推進の課題」となっている。
このような状況に対してIPAは、中小規模製造業におけるDX推進の取り組みを加速するため、まず国内外の幅広い製造業企業を対象とする文献調査を行い、特徴的なDX推進の取り組みを実施している国内企業14社を対象に事例ヒアリング調査を実施している。調査対象となる「製造業の製造分野におけるDX」とは、経済産業省のDX推進指標(サマリー)の記載に基づき、製造装置や製造工程の監視・制御(OT)の変革による生産性・品質向上や、製品やサービス、ビジネスモデルの変革の活動と定義している。
2020年1月から3月上旬にかけて実施した事例ヒアリング調査の対象企業は表1に示した14社である。
番号 | 企業名 | 事業所 | 従業員数 | 企業URL | 事例 詳細 |
---|---|---|---|---|---|
事例 1 | 株式会社IBUKI | 山形県 | 約60名 | http://ibki-inc.com/ | ○ |
事例 2 | 株式会社ウチダ | 宮城県 | 約100名 | http://uchida-sendai.co.jp/ | |
事例 3 | 株式会社 ウチダ製作所 | 愛知県 | 約20名 | http://www.uchida-mc.co.jp/ | ○ |
事例 4 | オプテックス株式会社 | 滋賀県 | 約600名 | https://www.optex.co.jp/ | |
事例 5 | 久野金属工業株式会社 | 愛知県 | 約300名 | https://www.kunokin.com/ | |
事例 6 | 株式会社木幡計器製作所 | 大阪府 | 18名 | https://kobata.co.jp/ | ○ |
事例 7 | 株式会社高山プレス製作所 | 福岡県 | 65名 | http://takayama-press.co.jp/ | |
事例 8 | チトセ工業株式会社 | 大阪府 | 約50名 | https://www.chitose-kk.co.jp/ | |
事例 9 | 株式会社東和電機製作所 | 北海道 | 53名 | http://www.towa-denki.co.jp/ | |
事例 10 | 株式会社南部美人 | 岩手県 | 25名 | https://www.nanbubijin.co.jp/ | |
事例 11 | 日進工業株式会社 | 愛知県 | 約350名 | https://www.enissin.com/ | |
事例 12 | 株式会社富士製作所 | 東京都 | 15名 | https://www.kk-fujiseisakusyo.co.jp/ | |
事例 13 | 株式会社プリケン | 埼玉県 | 約100名 | http://www.priken.co.jp/ | |
事例 14 | 碌々産業株式会社 | 静岡県 | 約160名 | http://www.roku-roku.co.jp/ | ○ |
本報告書では、DX推進上の課題を4つに分類し、それらに対する対応例を14社へのヒアリング調査結果を踏まえて紹介しているところが特長である。具体的には、以下のの4つとなる。
- マインドセット・企業文化の変革に関する課題
- 『データ活用』を推進する上での課題
- 企業間連携を推進する上での課題
- 製品・サービス変革を推進する上での課題
課題を克服するための対応策としては、例えば「マインドセット・企業文化の変革」では、まずバーコードを記載した個人カードを作成し、工場で働く人の出退勤をバーコードリーダーで記録するようにしたことで、身近なデジタル化の効果を日々感じられるようになり、デジタルに対する否定的意識の排除に成功した事例を引用している。
製造業、なかでも中小規模の企業では人間力に支えてきた部分も大きいが故に、ITを活用した業務改革をいきなり進めるのではなく、だれもが気にせず実施できるところから着手するという手法は多くの企業で考えてよい内容である。
さらに、「つながる工場への取り組みで遠隔ものづくりを実現」といった特に先進的な4事例を「個別事例」として、変革に取り組んだ動機、取り組みの成果、成功要因などを詳しく紹介している。
まとめでは本年5月にIPAが公開した『DX推進指標 自己診断結果 分析レポート』と今回の調査結果の共通点と相違点も解説。
IPAでは今後、今回の調査から得られた示唆や課題を踏まえ、「中小規模製造業の製造分野におけるDX 推進ガイド(仮称)」を本年中に公開する予定であるという。同ガイドでは、中小規模製造業の製造分野におけるDXで目指す姿を描き、そこに至る具体的なステップや、該当分野の企業がDX推進指標を利用するための手法などを示す予定。自社のDXでお悩みの情報システム部門担当またはDX推進担当の方には興味深い内容である。
新型コロナウイルス感染拡大防止のためリモートワークが急速に拡大するなか、中小規模企業の工場においても今後、テレメータリング(遠隔測定)やテレコントローリング(遠隔集中監視制御)、さらには自動化ロボットなどの導入による社会状況への対応が望まれます。
IPAは、今回紹介した中小規模製造業の事例やそれらに共通する特徴が、これからデジタル化やDXに取り組もうとする企業に参照され、DX推進につながることを期待している。
https://www.ipa.go.jp/files/000084035.pdf
本内容は、IPA様のプレスリリースを元に作成しております。
ソース:https://www.ipa.go.jp/about/press/20200720.html