BC Vol:08「トークンとICOってなに?」
暗号通貨界隈でよく耳にする「トークン」というキーワード。少し愛嬌のある語感ですが、内容は結構複雑。でも、“Amazonがトークンを発行するかも?”など興味深い噂もちらほら。また、ブロックチェーン自体には必須ではないものの、ブロックチェーンがなければ生成できないのがトークン。そこで今回は、トークンについて触れてみることにしましょう。
トークンは、ブロックチェーンで表現する代用貨幣です
トークンとは、ビットコイン・ブロックチェーンを使って表現できる、「大切ななにか」。いわば、ブロックチェーンの副産物です。
ビットコイン・ブロックチェーンにはもともと、「データの余白」があります。そして、「OP_RETURN」という「送金目的以外の取引データ」を追加できる機能も備わっています。これが以前から“送金以外のシステムとして使えるのでは?”と考えられてきた理由です。そして、その実現のためにつくられたのが「オープンアセット・プロコトル」という決まりごと。これにより、独自通貨、証券や不動産、金、サービスのポイントなどさまざまな資産の取引ができるようになり、それらの資産を総じて「トークン」とよぶようになりました。
ただ、実際は少し複雑です。現在では、イーサリムやリップルなど、さまざまなブロックチェーンが登場。これらのブロックチェーンでもトークンは生成できます。なので、トークンは、「あらゆるブロックチェーン上で発行する“あたらしい通貨”や資産」とイメージしておくとよいでしょう。
さらに付け加えると、ビットコイン・ブロックチェーンからさまざまなトークンを生成するプロジェクトを「カラードコイン」、生成するトークンを「独自トークン(主に独自通貨)」とよびます。
独自トークンの目的はどこにありますか?
現在、「カウンターパーティ」や「オムニ」など、カラードコインを促進するビットコイン・ブロックチェーン・プラットフォームは複数あり、各々で独自トークンが多数誕生しています。イーサリアム やリップルのブロックチェーンでも同様です。ではなぜ、人々は独自トークンを発行するのでしょうか?
それは、「あたらしい資金調達」の方法として注目されているから。
例えば、会社Aが独自トークンを発行したとします。Aの事業に興味がある人々はそのトークンを暗号通貨で購入しました。Aの事業はきわめて好調で購入者は日に日に増加。独自トークンの価値も上昇していきました。
このようにトークンは資金的な価値を付与することが可能です。例としてわかりやすいのが「VULU」でしょう。個人向けのサービスですが、VULUはビットコイン・ブロックチェーンとオープンアセット・プロコトルの仕組みを使って構築されています。
ICOという資金調達方法が注目を集めています
会社が資金調達を行うレガシーな方法が上場や金融機関からの融資です。しかし、スタートアップに上場は程遠く、金融機関もまずお金を貸してくれません。しかし、上述したトークンを使えば起業したてでも、サービスをリリースしていなくても資金を調達することができます。この「ブロックチェーン上の資金調達」を「ICO」といいます。
その仕組みをわかりやすく説明していきましょう。
まず、ICOにはプラットフォームが存在します。海外では「Waves」や「Token Market」、「CoinList」。日本では、和製ブロックチェーンmijinで知られるテックビューロが「COMSA」というプラットフォームをローンチしています。ICOはこれらを活用して行われます。
実際の流れは、「ホワイトペーパーの開示」→「既存暗号通貨で投資を募る」→「独自トークン発行」→「事業スタート」です。
企業はまず自分たちの事業を明確にした資料をプラットフォーム上に公開します。その内容を見た投資家たちは、将来性があるかどうかをジャッジし、暗号通貨を投資していきます。そうして、企業は、集まった暗号通貨に相当する独自トークンを投資家に分配、または暗号通貨取引所で独自トークンを販売し事業をスタートさせます。独自トークンは取引所で既存暗号通貨に換金できるので、トークンの価値が上がれば投資家は売却益を得ることができます。
ICOはリスクがある一方、巨額の資金を生み出します
ICOはよくIPOに例えられますが、大きく異なるのは「証券会社などの仲介役が不在」であり、「投資判断の材料はホワイトペーパーのみ」であること。つまり、大きな注目を集める一方で不正の温床になる可能性を秘めているのです。事実、海外のプラットフォームでは、「ホワイトペーパーのみで事業がスタートしない」「独自トークンを発行しない」など「資金集めのみのICO案件」が発生し、逮捕者も出ています。
その一方で、まだ多くはありませんが、多額の資金調達に成功し、事業をスタートさせている例もあるのも事実。
イーサリアムの発案者ヴィタリック・ブリテン氏のブロックチェーン・決済サービス「OmiseGO(調達額=25億円)」や、JavaScriptの考案者ブレンドン・アイクが立ち上げたウェブ開発ベンチャー「Brave(調達額=38億円)」。日本でも知名度が高まりつつあるSNS「Telegram」はICOを2度実施しおよそ1700億円という桁違いの資金を調達しました。このほか、日本の企業の成功事例もあり、「サンタルヌー」や「ALIS」、上述したICOプラットフォーム「COMSA」もICOから資金調達を行いました。
その巨額の資金調達額もおどろきですが、もっとおどろくのが、大体のICOが「数日間」で行われていること。つまり、ものすごい速さで巨額の資金が集まっているのです。
世界的に規制が進むICOですが、スタートアップや投資家にとっては、まだまだ魅力的な環境であることは間違いないといえるでしょう。
【執筆:編集Gp 坂本 嶺】