選ぶならAWSかAzureか? はじめてのクラウドで仕入れておきたい予備知識

様々なサービスが存在するクラウドサービス。用途に応じて使い分けることが成功の鍵とも。しかしながら、クラウドサービスは何を基準に選べばよいのか悩むケースもちらほら。今回は二大パブリッククラウドである「AWSとAzureの違い」について簡単に紹介します。

クラウド選びに悩む、そんなとき

先行するAmazonやMicrosoftに加え、Google(GCP)やアリババ、IBMなど多く企業が参入しているパブリッククラウド。自分の使い勝手に合わせたリージョン選びなど、いろいろ検討できて便利な時代になりました。でも、何を基準に選べばよいのやらと、悩むケースもちらほら。世界5大パブリッククラウドの中でもシェアでいえば「AWS」と「Azure」が頭一つ抜け出している。それぞれに特徴があるが、ならばどちらにすべきなのかと考えている情シスさんも多いはず。さて、実際どちらがよいのでしょうか?

今回は二大パブリッククラウド「AWS」と「Azure」の違いについて比較していきましょう。

サクッとわかる! AWSとAzureの違い

ところで、「AWS(エー・ダブリュー・エス)」、「Azure(アジュール)」って何ですか?

■AWSとは?
Amazon Web Service社が提供するパブリッククラウド。Amazon Web Serviceは、名前からもわかるように、母体はあの通販サイトのアマゾン。アマゾンのこれまで培ってきた、社内ITシステムの構築、運営のノウハウをベースにクラウドサービスを提供していて、同社のAWS はクラウドサービス黎明期よりサービス提供をしているパブリッククラウドのパイオニア的存在です。高いシェアを誇り、全世界に16拠点(リージョン)*と44のアベイラビリティゾーン*を持ちます。提供するサービス数も常に増え続けていて、その数は他のパブリッククラウドを圧倒しています。

■Azureとは?
Microsoft社が提供するパブリッククラウド。全世界に36拠点(リージョン)*を持つほか、Office365との連携機能や、Azureを経由したマイクロソフト製品のPaaSの提供もあります。さらに、近年オープンソースソフトウェア(OSS)との連携にも力を入れていて、Azure上でOSSを導入、利用する事ができます。

*:リージョンやゾーンについては執筆時点

 

ざっくり見ると、どちらでもよさそうな気が・・・

それでは、ふたつのパブリッククラウドの違いをわかりやすくまとめてみましょう。

1.<オープンソースソフトウェア(OSS)への対応>
「AWS」:「EC2インスタンス」上での構築で利用可能。AWSは早い段階からOSS対応を進めているため、設計、構築実績が多く、ノウハウも多数提供されています。また一部PaaSでの提供もあります。
「Azure」:若干、AWSが先行している印象です。しかし、最近は急速にOSS対応を進めていて、IaaSでの構築だけでなく、PaaSサービスも多数提供しています。とくにWebアプリケーションのPaasサービス「Web app」や「AppService Environment」は独自のもので、この分野についてはAWSに追いつきつつあります。

2.<Microsoft製品の利用>
「AWS」:「EC2インスタンス」上で利用可能です。
「Azure」: PaaSでOffice365との連携や、ユーザーIDとアクセス管理を統合できるサービス (Azure ADなど)を提供しています。すべてのマイクロソフト製品に該当するわけではありませんが、AWSに比べ初期構築の手間がかからず利用できます。

3.<専用線接続>
「AWS」: 1回線からの契約が可能。
「Azure」: 2回線から契約が可能。冗長構成での提供が基本なので、契約単位は1セット(2 × N契約)です。同じ回線速度の専用線を引く場合、AWSに比べ最低コストが高くなります。

4.<セキュリティ認証>
「AWS」&「Azure」:法令準拠やセキュリティ認証については、どちらとも充実していて違いはほぼありません。「マイナンバー法」や「ISMS(ISO27001)」、さらにクラウドにおけるセキュリティ認証「ISO27016」,「ISO27017」にも準拠しています。

5.<ディザスタリカバリ対応(DR、データセンターの被災による対応)>
「AWS」:東京リージョン内に4つのアベイラビリティゾーンが用意されています。複数のアベイラビリティゾーンを利用してシステムを構築すれば、耐障害性を向上できます。さらに、2018年2月には大阪リージョン(アベイラビリティゾーンは1つ)が開設し、広域なDR環境の実現可能になりました。
「Azure」:東日本と西日本にリージョンを用意していて、広域でのDR構成が可能です。アベイラビリティゾーンは東日本のリージョンに3つ、西日本のリージョンに2つあり、各リージョンで複数アベイラビリティゾーンを利用することにより対障害性の向上が図れます。またリージョン間のDR構成を支援するストレージサービスなども提供されています。

6.<適用法令>
「AWS」:準拠法は日本法、管轄裁判所は東京地方裁判所。*注意・・・ユーザー側で変更しない限り、準拠法は米ワシントン州法、裁判地は米ワシントン州キング郡の州裁判所または連邦裁判所になる。
「Azure」:準拠法は日本法、管轄裁判所は東京地方裁判所。

7.<利用料金の支払い>
「AWS」:クレジットカード、または請求書払い。*注意・・・販売代理店経由での利用の場合は、原則請求書払いになる。
「Azure」:クレジットカード、または請求書払いに加え、「EA(Enterprise Agreement)」という「Azure利用権の前払い購入」、「CSP(Cloud Service Provider)」との「契約による請求書払い」といった複数の支払い方法があります。
「AWS」&「Azure」:IaaSの利用に限り、同じインスタンスのスペックを継続して使い続ける「リザーブド」という契約を結ぶと、利用料金が安くなります。AWSでは「約30%~35%」Azureの場合「約70%」の値引を受けられます。IaaS利用&インスタンスのスペックを変更しない場合、Azureがとても魅力的です。

 

いざ導入! でも、ちょっと待って

ここまで見てきた通り、AWSとAzureの差はほとんどなくなっています。“結局どちらがよいの?”という人は、次のポイントを参考にしてみてもよいかもしれません。

・「オープンソフトウェアの利用なら、AWS」
・「こだわりのWebアプリケーションなら、AWS」
・「マイクロソフト製品を手軽に利用したいなら、Azure」
・「Webアプリケーションの構築ならPaaSだけで可能な、Azure」

これで、どちらが自社にあっているのかジャッジできるのではないでしょうか。

ただ・・・、最後に気をつけておきたいことがひとつ。それは「AWS、Azureともに常にサービス改善が行われている」ことです。例えばAWSが大阪リージョンを2018年の2月に公開したように、今後もサービス内容が目まぐるしく変わっていく可能性は大いにあります。導入前にはそれぞれの仕様を今一度しっかりと確認しておきましょう。

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】


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