AI Vol:03「えっ、AIって6歳以下で、研究がめざす究極はココロの再現?」

ワタシは子どもなのか大人なのか・・・

人工知能の魅力を語り続けるのもひとつですが、冷静な視点でその進化を見つめることも必要です。そういえば、2017年10月には、こんなニュースもありました。

参考:毎日jp 『6歳以下!? 55.5 グーグル「47.28」 知能向上は顕著 中国の調査研究結果』

アルファ碁の活躍や自動運転の基盤技術、さらに続々と登場する魅力的なAIサービス。日々、目にするこれらのトピックとのギャップに少々戸惑いますが、なんとAIのIQは6歳以下とのこと。

タイムリーではないので概要を簡単に説明すると、これはチャイナテクノロジーの総本山「中国科学院」ほか、複数の大学の研究者が共同で行なった「AIの知能指数に関する調査」での結果。人間(6歳〜18歳)と、「Siri」「Google」「Bing」「Baidu」「Xiaobing」など7種類のアシスタントAIとのIQ比較が行われました。

同調査では、「外部からあたらしい知識を得る力」「あたらしい知識を既存の知識に取り込む力」「発見力や想像力」「知識のアウトプット」の4点を基準にIQを測定したそうです。その結果がこちら。

参考:https://arxiv.org/pdf/1709.10242.pdf

どうでしょう。トップのGoogleでも6歳の子どもにかなわない。研究者たちがどのように受け止めたのかはさておき、これまでのAIの功績を考えればやはり意外な印象を受けます。

ただ、この調査をまとめた論文にはほかにも興味深い記載がありました。2014年に行われた同じ内容の調査では55.5のIQを持つ6歳児に対して、googleは「26.5」。本調査は2016年とあるので、2年で1.8倍にスコアを伸ばしたことになります。一尾方、6歳児から12歳児のIQの伸び率を見てみると、「55.5〜84.5」なので、6年で1.5倍。もちろん、同じ子どもさんでなく、かつGoogleのIQを人間年齢に置き変えた平均値、伸び率は不明なので、正確な推測はできませんが・・・、AIはこの先も人間より早いスピードでIQを向上させていくのかもしれません。

ワタシたちには、強いAIと弱いAIがいます

さて、AIのIQの今を知ったところで、次は種類のお話。

AIには「強いAI」と「弱いAI」というカテゴリがあります。強いと聞くと、真っ先に「アルファ碁」やアルファ碁の進化系の「マスター」を思い浮かべますが、そうではなく、「人間との差異がわからないような思考能力を持ち、物事の認識・理解を経て意思決定を行う機械(プログラム)」です。つまり、人がもはやAIと意識できないレベルのAIといってもよいかもしれません。対して、弱いAIは「人間の指示を思考、または実行しているようにふるまう機械(プログラム)」とされています。

強いAIはまだ実現していないといいます。また、現在の研究はほとんどが弱いAIについてであり、先述したアシスタントAIや、ディープラーニングのアルファ碁も同様なのだとか。これも意外な印象を受けますが、では強いAIの研究がめざすものは何か? というと、上記の概要を支えるもの、つまり「心の再現」なのだそうです。そう聞くと、なるほどと思いますが・・・、さらに疑問も一層深まります。一体、人の心ってなんでしょう?

 

ココロとその在り処、それはまだ誰にもわかりません

確かにあると誰もが思いながら、その正体は未だ掴めない心。脳にあるのか、体にあるのか、それもまた考えるほどにわからなくなります。

心を扱う哲学を見てみても、“心と体が合わさり人は成り立っている”という「心身一元論」、いやいや“心と体はまったく別もの”だという「心身二元論」。さらに、アリストテレスは「心臓」に心がある、ヒポクラテスは「脳」にある、デカルトは「心と体は脳の松果体(しょうかたい)」でつながっているとさまざま。

科学的なアプローチでは、現代脳科学は一元論をベースに、心は脳にあるとの仮説から研究が行われてきたそうです。これを考えれば、AIは脳(知能)を摸したプログラムであり、心の再現を強いAIが目指すのも、さもありなんといえます。

心はやっぱり脳か? ただ、少々ひっかかります。

というのも、2017年9月に『シリーズ人材〜神秘の巨大ネットワーク』という番組がNHKで放映されました。観たという人も多いでしょう。そのなかに出てきた「脳と体(臓器)の関係」、「従来まで医学界では『脳以外の臓器は、脳の指令に従う』と考えられていた。だが、最新科学によって『体中の臓器が連携し、お互いが直接情報交換・共有をするからこそ体が成り立っている』ことが明らかになった」というくだりについて。

これは、脳は独立した特別な存在ではないということ、そして人の体は中央集権的ではなく、分散ネットワークにより形成されているという証明です。ここから一元論をベースに上で考えれば、「心もどこか特定の場所で発生するのではなく、脳を含めた身体ネットワークの総体として発生する」ものだといえなくもありません。そして、逆にいえば、身体ネットワークがあるからこそ、心はつくられる、とも。もし、そうであるならば、仮に人工的に脳を再現できたとしても、心をつくるのは極めて困難ではないか、とも思えるのです。

霧のように掴めない心の存在と、その心の再現をめざす強いAI。このふたつの距離が今後どう縮まっていくのか興味は尽きません。研究が進むことで、心の正体が解明される可能性だってあるのですから。

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