使える! 情シス三段用語辞典63「X-Tech」
常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。『情シスNavi.』では数々のIT用語を三段階で説明します。
一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明
取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?
一段目 ITの知識がある人向け「X-Tech」の意味
未知なるものを示す“X”とIT技術を意味する“Tech”を組み合わせた造語であるが、先進的なITを活用して、いままでにない価値や仕組みを創出することをいう。
X-Techの代表格には「Fintech(フィンテック)」がある。金融機関だけでなく新規参入者も含め、ITを活用して利用者に新しい金融サービスを提供する取り組みが活発化している。
例えば、複数の銀行口座・証券口座を串刺しで管理するサービスや、個人間で送金するサービス、資産運用をロボットが代わりに行うサービスなどがそれにあたる。
既存の金融機関だけでは生まれなかった斬新なアイデアにより、利用者に利便性を提供し、業界を活性化させている。
2017年に改正銀行法により金融機関に対し、API提供の努力義務を課した。これにより金融機関の持つ膨大な勘定データに外部の事業者がAPIで簡単に取得することができるようになった。それだけ、Fintechによる経済活性化が期待されている表れだろう。
他のX-Techには例として以下のものがある。
・AdTech(インターネット広告の配信・流通)
・EdTech(オンライン講義、知育アプリなど)
・AgriTech(水田の温度管理、ハウスの空調自動制御など)
・HealthTech(遠隔診察、健康記録アプリなど)
・HRTech(入社手続きの自動化、タレントマネジメントシステムなど)
一般の人々がスマートフォンに親しみ、インターネットに気軽にアクセスできるようになり、あらゆるITを活用したサービスのニーズが増えた。また、クラウドの普及で、新しいサービスのシステムを構築するのがより簡単になり、効果がなければすみやかに撤退することも可能になった。
二段目 ITが苦手な経営者向け
休憩室でバッタリ会った情シスの内田さんと社長の会話—
社長:おう、内田君。元気かい?
内田さん:おかげさまで楽しくやってますよ。でも社長は元気ないんじゃないですか。
社長:わかるか。今悩んでるんだよ。知っての通り、わが社の主力製品である農業機器の販売額は頭打ちになりつつある。
内田さん:ウチの農業機器は品質がいいから、なかなか故障せず、買い替え需要も少ないんですよね。
社長:他の分野の製品開発も考えたが、やはりわが社のコア事業は農業機器だ。圧倒的なシェアがあるし、ノウハウも蓄積されている。これに関連したビジネスができないかと考えてるんだ。
内田さん:それなら、AgriTechとかいけそうですね。
社長:アグリテック?アグリはもしかして農業の意味かい?
内田さん:さすが、社長!農業とITを組み合わせたサービスを提供することです。いまX-Techが流行ってるんですよ。いろいろな業務とITを組み合わせたサービスを創出するから、Xって言い方をするんです。
社長:そういわれても、ピンとこんなあ…。
内田さん:例えば、農家さんって水田を見回るのが大変じゃないですか。水田にセンサーを取り付けて、家で監視できれば、見回る労力を削減できます。
社長:ふ~ん。それをウチに当てはめるとしたら、農業機器を遠隔操作できるようにするとか…?
内田さん:いいじゃないですか!全国の農家さんからデータを集めて、栽培する農作物に適した農業機器の設定値をアドバイスする機能なんていうのもいいですね。他社の農業機器にも対応できれば、自社製品を使用していない農家さんも取り込むことができるし。
社長:でも、コストがな~。この前新しいシステムを作ろうとしたら、5,000万円の見積が出てきたじゃないか。あんなのウチでは払えんよ。そもそも失敗したらどうするんだ。
内田さん:最近はクラウドで構築できるから、やりようによってはコストを抑えられると思いますよ。クラウドは月額課金だから、いつでもやめられるし。
社長:そうか。わかった、いっちょ検討してみるか!
内田さん:そうそう、その勢いです、社長!
三段目 小学生向け
みんな、おこづかいはもらってる?
じつはあと3年もしたら、パパやママからもらうおこづかいは、スマートフォンでうけとることになるかもしれないよ。
いま、おこづかいは五百円玉でもらっているかもしれないけど、なくしちゃったことはないかい?お金を使ったら「おこづかい帳」に書いておくようにってパパやママに言われてるけど、うっかりわすれちゃうこともあるよね。
でも、スマートフォンにおこづかいを入れておけば、お金をなくすこともない。スマートフォンをなくしてもだいじょうぶ。実はお金そのものはスマートフォンの外にあって、スマートフォンとインターネットでつながっているだけなんだ。だから、スマートフォンをなくしてもお金はなくならないんだよ。
スマートフォンがあれば、お店でお金をはらうこともできる。そうすれば、いつ、どこで、なににおかねを使ったのか?すぐにわかるようになるから、おこづかい帳に書かなくてもいいんだ。
お金をテクノロジーの力でもっとべんりに使えるようになるサービスが、つぎつぎと生まれている。お金だけじゃない。一日にどれだけ歩いたかをスマートフォンにきろくして、もっとうんどうするように心がけたり、スマートフォンでじゅくの先生のじゅぎょうをうけたりできる。
お金とか、うんどうとか、じゅぎょうとか、「いろいろなコト」をえいごでは「X」と呼ぶことがある。いろいろなコトをテクノロジー(Tech)の力でべんりにすることを「X-Tech」と呼ぶんだ。
20年前は、スマートフォンもなかったから、インターネットを使える人は少なかった。でも今はみんなもスマートフォンを持っている子は多いよね。みんながインターネットでつながっているからこそ、いろいろなコトがべんりになって、よりよい暮らしになることがきたいされているんだ。
ご理解が深まったでしょうか?
【執筆:編集Gp 山際 貴子】