【情シス基礎知識】情シスも知っておきたい「管理会計」

2018/06/20

情シスの現場では「管理会計」というキーワードは、果たしてどのくらい浸透しているのでしょうか。もしかしたら、“畑違いだから”と情シスの間ではあまり知られていないかもしれません。しかし、基幹システムの更新などをきっかけに情シスにとって管理会計にまつわる知識は、重要になる可能性も。管理会計については多くの書籍が発売されていることからも分かるように、企業経営には欠かせないものになっていると思います。その時のための予備知識として、ぜひ概要を把握しておきましょう。

 

【ITだけじゃなく】情シスにはさまざまな知識が必要?

 

情シスに求められる知識は、ITやシステムにまつわるものばかりではありません。

その最たるものが各基幹業務の知識。専門的に突き詰める必要はありませんが、これらはERPなどの基幹システムの導入やクラウドへの移行でも、断然役立ちます。理解を持ってシステムを提案すれば、必要性を具体的に上層部に伝えることができますし、また、新システムによって業務はどう変わるのかを各部署に説明することもできます。

そんな基幹業務の知識のなかで、とりわけ情シスが知っておきたいのが「会計」について。企業活動のベースとなる会計の知識を持つことは、経営戦略にダイレクトに寄与する「攻めの情シス」に転じる一手にもなることでしょう。

ただ、会計知識が重要といっても、広く学ぶのはたいへん。そこで、情シスとつながりの深いERPと密接な関係にある「管理会計」から学んでいきましょう。

 

【そもそも】管理会計とはなんぞや?

 

まず管理会計を知る前に、同じく会計業務である「財務会計」についておさらいしておきます。

財務会計とは、過去の業績を振り返り、「社外のステークホルダーに、企業の営業状況を報告」するための会計です。例えば、企業の資本の運用状況を知りたい株主や返済能力を知りたい銀行。さらに、企業の成長度やビジネスの将来性を知りたい投資家などに向け、1年間の利益や損失をまとめる決算時に「財務諸表」を作成し開示します。

財務諸表は「決算書」とよばれますが、その作成は法律によりルールや形式が設けられています。ルールのもと正確な情報の報告が求められることから、人的ミスを削減し作業を効率化するため、基幹システムやERPの機能を用いた作成が一般的です。

この財務会計とは異なり、「経営トップやマネージャーなど企業の経営管理者にあて、会計情報を報告」するのが「管理会計」です。財務諸表のようにルールがあるわけではなく、報告についても月単位や数ヶ月単位など企業によって違いがあります。

また、財務管理がステークホルダーに「過去の会計情報」を知らせるのに対し、管理会計は 「企業活動の現状」を経営管理者に知らせるためのもの。つまり、「企業活動の“これから”に役立つ情報」の報告であり、「未来会計」ともよばれます。

管理会計は日に日にその重要度を増しています。現代は、ビッグデータ、IoT、AIといったITの急速な進展に伴い、今日トレンドだったものが明日は違う激動の時代。従来の緩やかに変化・成長していくビジネスモデルでは、太刀打ちできなくなっています。この逆境を乗り切るための武器として注目を集めているのが、“企業活動の今”を見つめ、「スピーディな経営判断と戦略立案を可能にする」管理会計なのです。

【知っておこう】管理会計の「意思決定」と「組織管理」

 

それでは、管理管理の概要を見ていきましょう。

図のように、管理会計は「意思決定」と「組織管理」というふたつテーマにわけることができます。

意思決定は、経営判断のベースになる情報で、なかでも「損益分岐点の分析」は重要です。

損益分岐点とは、売上げから変動費を差し引いた「限界利益」が「固定費」と同額で損益ゼロになっている状態。つまり、確保しなければいけない売上げのボーダーラインです。実際の売上げが損益分岐点を下回っていれば赤字となり、「売上げ増加」、「サービス原価の見直し」や「固定費削減」が必須になります。このような分析を適宜行うことで、利益の最大化と今後のビジネス方針を立てやすくなります。

一方の組織管理は、「全社的な予算管理・計画」のための情報です。部署ごとの予算管理では、例えば営業部門の「売上げを増やすために予算がもっと必要」やR &D部門の「よりよいサービスをつくるために予算がもっと必要」など衝突しがち。それぞれの意見を聞いていてはまとまりません。その各部門の売上げやコスト状況、予測利益、業務評価による人件費配分などを俯瞰できるようにして、経営管理者が経営目標に沿った予算計画を立てられるようにしていきます。

 

【管理会計は難しい】管理会計の地盤を固めるERP

 

経営判断と戦略立案を頼もしくサポートする管理会計。実施企業は多い一方で、その効果を実感できない企業も少なくないといいます。一体なぜなのでしょう?

【管理会計の課題①】タイムリーに行う難しさ

管理会計は、財務会計とは異なり、「必要なときに実施」することが重要です。しかし、各部門に分散したデータを集計し、転記しさらに加工して資料を作成するのは、容易ではありません。規模が大きい企業であればあるほど労力も時間も必要。定期的に実施するのは困難ばかりか、実施時点で「情報が古く」なってしまっている場合も考えられます。

【管理会計の課題②】果たしてこのデータは正確か?

経営判断の下地になる管理会計に求められるのが「データの正確さ」です。しかし、基幹システムが各部門で独立している場合、データをまとめるためには多くの人手が必要。集計での計算ミス、転記での入力ミスやコピペミスなど、工数が増えれば触れるほど、ヒューマンエラーの懸念も増え、データの信ぴょう性を担保しづらい環境になります。

上のふたつの課題から、管理会計で成果を上げるのは難しいといわれてきました。この背景には、作成や報告のルールがないことから、財務会計のようにシステム化が進まなかったことが関係しています。

しかし近年、そこに変化が現れました。そのきっかけがERPの普及です。

ERPは「統合基幹業務システム」という名称からわかるように、販売管理や会計管理など、さまざまな基幹業務機能を搭載したパッケージシステムです。そして、ERPの多くには、管理会計機能もあります。つまり、ERP導入から管理会計にかかる作業も大幅に効率化できるようになったのです。最近では、社内に分散したシステム情報をとりまとめ、見える化・分析を行うBIツールとの連携もよく見られるようになり、管理会計をより実践しやすい環境が整えられています。

以上、管理会計の課題とERPについて紹介しましたが、管理会計もERPも目まぐるしく変わるビジネス社会に対応する指標をつくるためのもの。今後もニーズが増えていくのは明らかです。

もし、未導入の企業がERPを導入すれば、運用を受け持つのはもちろん情シスです。そうなれば、今回のような管理会計の知識を存分に活用できるシーンも多々あるはず。より学んでいくと、たくさんの専門用語や数式も覚えなければならず、少しややこしいかもしれませんが、ぜひ知識を深めてみてください。

 

【執筆:編集Gp 坂本 嶺】

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