これからは情シスの時代!? 「デジタル時代の創造的破壊」とは?

2015/12/03

アディダスが3Dプリンターで作った特殊なランニングシューズ用ミッドソール「Futurecraft 3D」の画像

アディダスが3Dプリンターで作った特殊なランニングシューズ用ミッドソール「Futurecraft 3D」

マイナンバー制度も始まり、あらゆるものがデジタル化される昨今、企業における情シスの重要性が高まっているのをご存じでしょうか?

去る11月12日、「CDOカンファレンス 2015 ~デジタルビジネス時代を切り開く~」(一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアム主催)と題してCDO(Chief Data Officer)についての日本で初めてのカンファレンスが開催されました。日本で聞き慣れないCDOという役割ですが、アメリカにおいては、企業内に蓄積されたデータをどのように経営に活かすのかを全社横断的、かつ経営の立場から推進する存在です。
今回は「50万社のビジネスで見えたデジタル・ディスラプション時代の収益戦略」と題してカンファレンスで登壇されたトレードシフトジャパン株式会社ゼネラルマネジャーの菊池孝明氏のプレゼン内容をもとに、「なぜ情シスが経営の要になるのか?」を示すキーワード「デジタル時代の創造的破壊」(デジタル・ディスラプション)について見ていきましょう。

既存の産業が破壊されるほどのイノベーション

デジタル時代においては、顧客のニーズをより早く、的確に捉えて提供するというプロセスが加速しています。消費者の立場から見ればどんどん便利になりますが、企業側からすれば、手放しで喜んでもいられません。なぜなら、自分たちの会社のみならず、産業自体が淘汰されてしまうこともあり得るからです。

もう少し具体的に説明するために、従来型のイノベーションをカメラを例に説明してみましょう。約150年前に発明されてから一貫して写真を撮影する機械として緩やかな進化を遂げてきたフィルムカメラですが、“撮ってすぐ見られる”デジタルカメラの登場により、老若男女問わずカメラを持つようになりました。カメラ全体の市場規模は3倍に伸びましたが、フィルムカメラの市場規模は縮小。しかし、そんな破竹の勢いで成長したデジカメ市場も、スマートフォンにカメラが内蔵されたことで、わずか4年で全盛期のフィルムカメラの台数を下回ることになりました。

まったく違う“モノ”の登場によってカメラ産業が破壊されたわけです。
既存産業が駆逐されるほどの破壊的イノベーションが起こる。それを従来型の「ディスラプション」(破壊的創造)と言います。

では、デジタル・ディスラプションは従来のディスラプションと何が違うのでしょうか?

従来のディスラプションは「モノ」から「モノ」へのイノベーションです。
いわゆる「モノ」を直接的に代替するのは「モノ」であり、カメラがスマートフォンに代替されたとしても、やはり「モノ」に変わりはありません。その「モノ」を開発するには、製造工場や商品・部品を運ぶサプライチェーン等々、物理的資産が必要でコストも工数もかかります。ですから、参入障壁が高く、それほど頻繁に起こるものではありません。

しかし、デジタル・ディスラプションは、「モノ」が満たす「ニーズ」を抽出し、「ニーズをデジタル化」することによるイノベーションと言えます。そして、このデジタル・ディスラプションを起こす企業や人、つまりデジタル・ディスラプター(創造的破壊者)たちが、今急激に成長し、既存産業に破壊的なインパクトをもたらしています。

急成長するデジタル・ディスラプター(創造的破壊者)たち

サンフランシスコに本社を置くトレードシフトはアメリカのThe Circulars が主催した「Award for Circular Economy Digital Disruptor」で、2015年のデジタル・ディスラプター賞を受賞した企業です。同社の提供する「BtoBのFacebook」と呼ばれるソーシャルプラットフォームは、請求書や見積書などすべての帳票をデジタル化し、プラットフォーム上でやり取りしながら、利用企業を直接検索して新たにビジネスをスタートすることができます。登録やトランザクションの費用は無料。有料アプリの開発、販売によって収益を得るモデルです。また、開発環境をオープンにし、参加企業が独自でアプリを開発し販売することも可能。2010年の創業からわずか5年で世界190カ国50万社以上が利用しており、自社のみならず、デジタル・ディスラプターたちを生み出すプラットフォームを標榜しています。

トレードシフトジャパン株式会社 ゼネラルマネージャーの菊池孝明氏

トレードシフトジャパン株式会社 ゼネラルマネージャーの菊池孝明氏(http://tradeshift.jp/)

デジタル・ディスラプターの最先端をいくトレードシフトの菊池氏が、デジタル・ディスラプションの最新事例として挙げたのが「Uber(ウーバー)」です。Uberとはスマホアプリを使ったタクシーの配車を行うサービスで、 配車から決済までがアプリ側で行われるのが特長です。 しかしその真骨頂は、「uber X」と呼ばれるサービスにあります。事前に登録した一般ドライバーが、タクシードライバーとして既存のタクシーより安い料金で運んでくれるのです。日本では白タクとして違法行為になりますが、アメリカの多くの州ではすでに簡単な登録だけで誰もがタクシードライバーとしての収益を挙げられるようになっています。

こうした“誰もが思いつかなかった革新的な仕組み”によって、創業してからわずか6年でUberの企業の時価総額は約6兆円を超えるまでに。しかしながら、市場に与えるインパクトはそれにとどまらないと菊池氏。それは……

 

Uberが普及する

タクシーに乗らなくなる

公共交通機関に乗らなくなる(uberXは通常タクシーの半額なので、日本に置き換えれば350円)

そもそも車に乗らなくなる(ので、車を買わなくなる)

といった具合。「風が吹けば桶屋が儲かる」ではありませんが、デジタルがもたらす革新的な仕組みが社会へ連鎖式に影響を与えていくことが分かります。

市場へのインパクトの説明図

デジタル・ディスラプションは、「ニーズ」を「モノを介さず直接満たす」ため、結果として、従来「ニーズ」を満たしていた唯一の手段である「モノ」が売れなくなります。さらにスマートフォンや3Dプリンターといった革新的なデバイスの出現により、コストをかけずにアイデアだけで新規参入でき、かつそれが顧客ニーズにマッチしていれば瞬く間に広がります。

つまり、参入障壁がこれまでの1/10となり、参入コストも同じく1/10。保守的に見積もってもこれまでの100倍のインパクトを市場にもたらすのです。

大企業もデジタル・ビジネスにシフト

2015年10月にシカゴで開催された「GeekWire Summit 2015」に登壇したナイキのCOOは、なんと靴のデザインデータをデジタルで販売することを考えていると発言。デザインをWebからダウンロードし、家の3Dプリンターで靴を作るという時代もそう遠くない未来かもしれません。その1週間後、アディダスが3Dプリンターで作ったデジタルソールの動画をYouTubeに公開しています。

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