使える! 情シス三段用語辞典85「Windows AutoPilot」
常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。『情シスNavi.』では数々のIT用語を三段階で説明します。
一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明
取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?
一段目 ITの知識がある人向け 「Windows AutoPilot」の意味
2020年1月14日、Windows 7がサポート終了を迎えます。その為、企業ではOSの更新に伴い、新規購入をされたか、まさに準備中のことと思います。当然ながら、これから導入する端末はWindows 10であると思いますが、Windows 10ではそのOSバージョンアップの頻度の高さから、社員数が多く、数多くの端末を用意する必要のある企業では、従来手法によるキッティング作業の負担が大きくなることが課題となっています。Windows 10への移行は避けられない為、今後のキッティング方法を模索している情シスの方もいるでしょう。そうした大量セットアップを従来よりもっと簡単にすることを目的として、MicrosoftがWindows 10から提供する機能が「Windows AutoPilot」です。Windows AutoPilotとは、大量の端末にWindows 10を展開できるクラウドベースの初期構成ツールになります。
前提として、Windows AutoPilotはAzure Active Directory(Azure AD)、IntuneやMicrosoft Store for BusinessまたはMicrosoft 365 Businessを利用している環境で使うことのできる機能になります。Azure ADとは、サーバーのアクセス管理を行うActive Directoryのクラウド版の機能です。そしてIntuneとは、クラウドで使用できるデバイス管理(MDM)サービス、Microsoft Store for BusinessとMicrosoft 365 Business はクラウドベースの企業向けMicrosoftツールセットです。Windows AutoPilotはこれらのMicrosoftのクラウドベースの管理ツールと連携して、デバイスのセットアップを行います。
Windows AutoPilotを使うと、クラウドを介してユーザー企業ごとの端末設定が自動で配られます。端末のユーザーが、購入して手元に届いた端末の電源を入れ、事前にクラウドに登録してある企業向け ID でログインするだけで、初期設定を自動的に展開し端末をAzure ADに自動で登録することができるのです。情シスが行うのは、事前に端末の固有IDとユーザーのアカウント情報をクラウドに登録しておくこと、どのような設定にするかをWindows AutoPilotプロファイルとして作成しておくこと、端末がネットワーク接続できるようにすることだけです。
Windows AutoPilotは、デバイスをIntune などの MDMサービスへの登録 (但し、これにはAzure AD Premium サブスクリプションが必要)、OOBE(Out-Of-Box Experience:ユーザーが製品を箱から取り出して使えるようにするまでの体験)のカスタマイズ、管理者アカウントの制限、デバイスのプロファイルから構成グループの作成と割り当てを行うことができます。
Windows AutoPilot自体にはキッティングとして企業で必要なOS設定やアプリを入れたりするなどの機能はなく、そうした作業は連携するIntuneなど管理ツール側の機能を利用して行います。こうした機能連携を行えば、端末のWindows 10への移行、各種設定の適用、Office 365や業務アプリケーションの自動インストールなどを行うことを可能にします。
Windows AutoPilotを使用できるエディションは、Pro、Pro Education、Pro for Workstations、Enterprise、Education、Enterprise 2019 LTSCです。有償機能のIntuneなどをもともと使っているような大量の端末を使用する企業向けの機能ですが、プロビジョニング機能との併用もでき、更新頻度が高いことで運用が煩雑になりがちなWindows 10において情シスの手間を改善すると期待されています。
二段目 ITが苦手な経営者向け
とある販売企業の社長、出張から帰社してカフェコーナーで休憩中。そこへ情シスの大戸さんがやってきました。
社長:いやあ、我が社初の関西支店の準備も本格化してきたから、情シスも準備が大変だろ。大戸さんもお疲れ様。
大戸さん:社長、お疲れ様です。情シスも着々と準備を進めていますよ。
社長:情シスはネットワークとかシステムとかの整備でさぞかし大変だろう。みんな出張続きじゃないのか。
大戸さん:そうですね、でも関西支店にはシステム本体を置くわけではないので、向こうではセキュリティとネットワークを整備して新しいパソコンを注文しておけばいいんですよ。しかも、うちはWindows AutoPilotを使っていますから、パソコンの初期設定の整備も割と簡単なんです。
社長:Windows AutoPilot?なんだねそれは。自動運転!?
大戸さん:Windows AutoPilotというのは、パソコンの初期セッティングを簡単にできる機能なんです。ほら、去年Windows 10に変えたじゃないですか、Windows 10で使える新機能なんですよ。うちは従業員の端末をクラウド管理していますから、そのクラウドを通してセッティングができるんです。
社長:へえ!離れていてもパソコンの設定ができるのかい?
大戸さん:クラウド上にうちの会社で使う設定を登録しておいて、それを自動で社員のパソコンにダウンロードできるんです。Windows AutoPilotを使えば端末管理システムにも自動登録できます。最初は実際関西に行ってやりますが、支店が立ち上がってからは関西で新しい端末を買ってもわざわざ僕たちが出張したりしなくていいんですよ。パソコンの固有IDをベンダーからもらって、アカウントをクラウドに登録しておけば、あとは社員にアカウント情報を連絡するだけなんです。社員がアカウント情報を入力したらあとはもう自動で設定してくれるんですよ!
社長:便利じゃないか。さすが情シス、最新の機能を駆使してやっているねえ。
三段目 小学生向け
春は、何か新しいことにチャレンジする季節です。この春、例えばクラブチームに新しく参加した人、または所属しているクラブチームに新入生が来たという人も多いかもしれませんね!
サッカーのクラブチームに新入生が来たら、はじめに行われるのはチームの説明会です。このチームにはどんなメンバーがいて、コーチは誰で、何曜日に練習が何時からあるか、持ち物や用意するべき物などをレクチャーしないといけないですよね。そうしたチームの内容や決まりをしっかり理解したらセットアップ完了で、新メンバーもチームメンバーとして正式に加わるのです!
さて今回は、「Windows AutoPilot」といい、パソコンの新入生、つまり新しいパソコンを買ったときに行うセットアップのお話です。
パソコンを買ったら、買ったときのままの状態で使うのではなく、自分が使いやすい設定に変えたいですよね。特に会社で使うパソコンであれば、なおさらいろいろな設定のルールがあり、それらの設定ルールを全て新しいパソコンに設定しなければなりません。
さきほどのサッカークラブの話で、パソコンを新入生と考えてみましょう。これまでは新入生に説明会に来てもらってルールを説明するように、パソコンを持ってきて一つずつポチポチと設定作業をする必要がありました。
しかしWindows AutoPilotとは、レクチャーを新入生一人一人に説明するのではなく、”天の声”が一人一人の脳内に直接ルールを語りかけて覚えさせるようなものなのです。これならいちいち新入生説明会なんてしなくてもいいですよね。
そんなの無理でしょ!と思うかもしれませんが、パソコンはインターネットにつながっていれば自動的にプログラムをダウンロードしたりすることができるので、そうした自動設定が可能なのです。
これは会社向けのWindows 10(Pro以上)で新しくできた機能です。Windows 10のパソコンをインターネットを通して管理している(このインターネットを使っていることを「クラウド」といいます)会社では、そのインターネットを使って、決められた設定を自動で新しいパソコンにインストールすることができます。Windows 10とクラウドを活用した新サービスなのです。
もちろん人間の新入生ではそんなことはできませんよ!
さて、皆様のご理解は深まったでしょうか?
【執筆:編集Gp 星野 美緒】