使える! 情シス三段用語辞典80「WUfB(Windows Update for Business)」

常に新しい用語が生まれてくる情報システム部門は、全ての用語を正しく理解するのも一苦労。ましてや他人に伝えるとなると更に難しくなります。『情シスNavi.』では数々のIT用語を三段階で説明します。

一段目 ITの知識がある人向けの説明
二段目 ITが苦手な経営者に理解してもらえる説明
三段目 小学生にもわかる説明

取り上げる用語を“知らない”と思った人は、小学生にもわかる説明から読んでみると、理解が深まるかもしれません!?

一段目 ITの知識がある人向け「WUfB(Windows Update for Business)」の意味

最近は社有PCにMacを採用する企業も増えた印象があるが、それでも企業で最も多く使用されているデスクトップOSといえばWindowsである。NetApplicationsの2018年7月の調査ではWindowsシェアは88.4%という結果であった。そして、Windows使用の中でもWindows 7(Win7)を使っている割合は40%を超えているが、そんなWin7のサポートは2020年1月に終了する。


<データ出典:Net Applications報告・2018年7月デスクトップOSバージョン別シェア>

大多数の企業では、パソコンの乗り換え先はWindows 10(Win10)であろう。しかしながら、Win10では従来のアップデートとは異なる手法が採用され、これが情シスを悩ます存在になっている。メジャーアップデートは半年に一度、脆弱性などのマイナーアップデートは毎月行われることになる。情報システム部門としては、この頻度で社内端末のOS更新が行われることは非常に頭が痛い。社内システムの動作テストを行わずにWindowsアップデートで自動的に機能が追加されてしまえば、既存システムが使えなくなるなど不具合に直結してしまう恐れがあるからだ。
その為、多くの企業がイントラネット内部にWindows Serverで動作する「Windows Server Update Service:WSUS」(関連記事:使える!情シス三段用語辞典79「WSUS」)などを用意してWindowsの更新をコントロールしていることであろう。しかしながら、WSUSを使うにはActive Directoryサーバーが必要で、運用コストも管理スキルも必要となる。そのため、中小企業には導入のハードルが少々高い。

このような問題を解決するためにMicrosoftが提供するWindows更新サービスの一つが「WUfB(Windows Update for Business)」であり、Win10から利用可能になった(Homeエディションは除く)、Win10の“新しい更新オプション”である。WUfBとは自動的に更新を行うことができるWindowsアップデートの拡張機能で、Windowsの機能更新の一括管理と、更新を一時的に延期する機能などを備えている。WUfBを使えば、管理者は社内システムなどの動作検証期間を設けるために一時的にWindowsアップデートを抑止することができるようになるのだ。

メジャーバージョンアップによる更新の延期も最大で365日まで設定でき、マイナーバージョンアップの更新は1か月まで延期できる。

この機能はWin10の標準仕様として提供され、Windows Pro、Enterprise、Pro Education、および といった企業・組織向け端末で利用できる。またWUfBはMicrosoft Intune(端末の資産管理・セキュリティ管理のクラウド型サービス)との連携、Active Directoryでのグループポリシーでの管理も可能である。

標準仕様なので無料で利用することができ、グループポリシーを適用しての管理もできることが大きなメリットといえるであろう。

これまで企業でよく使われていたWindowsアップデートの機能「WSUS(Windows Server Update Services)」より、WUfBは構成面また機能面でも若干単純にできている。WUfBはWSUSのようにサーバー構成などの設備が不要で、対応エディションのWindows端末さえあれば利用ができる。WUfBのアップデートの延期機能は単純な期間設定による延期となり、WSUSのようにスケジュール設定ができず、更新プログラムの取捨選択はできないなどのデメリットもあるので注意が必要だ。

WUfBはWSUSを導入していない中小規模の企業向けのツールとされており、WSUSの構築までは手が回らないが更新前の検証を行いたいという企業がより手軽に取り入れることのできる選択肢となっている。

 

二段目 ITが苦手な経営者向け

とある企業の会議室で、情シス部門の打ち合わせが行われていた。情シス窓野さんがホワイトボードの前に歩み寄った時、珍客がやってきた・・・。

窓野さん:本日はWindowsアップデートの方式についての検討会です。来年度のWindows10導入に向けて・・

社長:やってるねえ。ちょっとお邪魔しますよ。いいから続けて。

窓野さん:社長!・・・えっと、Windows10の更新方式ですが、大きく選択肢は4つほどありまして、Windows Update、WUfB、WSUS、SCCM(System Center Configuration Manager)となります。
(窓野さん、ホワイトボードにWU、WUfB、WSUS、SCCMの4つを書く。)

社長:ちょっと質問いいですか?窓野さんの一番お勧めの案はどれなの?

窓野さん:正直、WUfBかなと思っています。Windows10からはアップデートが頻繁になります。これまでより小さな変更になるとはいえ都度案件管理システムの検証は必須です。そのため、アップデートを一時停止しておける機能が必要ですが、Windows Update機能での更新管理は個々の手動管理になるのでバツです。
(窓野さん、WUに×をつける。)

社長:他の3つはまとめて管理できるのだね。

窓野さん:はい。WSUSはWSUSサーバーを用意してActive Directoryを・・・。

社長:細かい説明はいいので、それぞれのメリット/デメリットを教えてくれないかな。

窓野さん:WUfBは他の2つよりコストがかかりません。SCCMは有償機能で機能も豊富ですが、弊社の環境では、そこまで高機能な管理は必要ありません。これは大企業や細かい機能が必要なIT企業向けかと思います。なので、これも×です。WSUSは無償機能でSCCMよりも手軽に使えます。でも別途WSUS用のサーバーが必要になるので、初期費用と運用コストがかかります。可用性の担保やネットワーク構築の諸々の費用がかかりますから。

社長:WUfBはどうなの?

窓野さん:WUfBは無償で、Windowsの標準機能です。サーバー追加などの大きな追加費用は発生しません。もちろん、更新ごとのシステム検証には検証コストがかかりますが、これはアップデートの方式に関係なく必要となるコストです。
(窓野さん、WSUSに△、WUfBに〇をつける。)

社長:機能面で不足はないのかな。

窓野さん:WSUSとWUfBで機能を比べますと、WSUSの方は更新プログラムの承認・拒否の選別ができます。WUfBは更新プログラムの拒否はできません。でも、昨年入れたばかりの案件管理システムは複雑なシステムではありませんしパートナー社のサポート体制もあるので、検証期間を取れれば十分対応できると思います。
(窓野さん、WSUSに〇、WUfBにも〇をつける。)

社長:わかった。WUfBで機能面も十分だということだね。

窓野さん:はい。運用面でも、WSUSよりWUfBの方が運用負荷が低いです。
(窓野さん、WUfBにもう一つ〇をつける。)
社長:よくわかった。異論はないよ、ご説明ありがとう。じゃ、お邪魔したね。

 

三段目 小学生向け

今回のテーマはWUfBという、前回に続いてWindows OSのアップデートについてのお話です。

さて、WSUS(関連記事:使える!情シス三段用語辞典XX「WSUS」)の回で、専用タンクから自動で水そうの水を入れかえる装置を発明したメダカ係のサトシ君。サトシ君の自動水入れかえ機はその後商品化されて大ヒットし、数年後には日本中で自動水入れかえ機付きの水そうが売られるようになりました。ある学童教室で、自動水入れかえ機付きの水そうを新しく買って、生き物が大好きなカズミちゃんが水そうのおきかえをすることになりました。カズミちゃんの学童教室にはカメを飼っている水そうがあります。しかし学校ほど広くない学童では、水入れかえ用のタンクが大きくじゃまになってしまいました。

「大きなタンクは置けないなあ。でも冬は水温調節もしたいからどうしよう。あっそうだ!」

カズミちゃんは大きなタンクを取り外して、水そうにじゃぐちをホースで直接つなぐやり方で水入れかえ機をセットしました。そして、水入れかえの調節用に小さい水そうを置き、そこにタイマーとヒーターをつけました。

「このヒーターをたいて、タイマーで30分たったらここの水を使って入れかえできるようにしておこう!」

カズミちゃんは、こうしてタイマーをセットしておけば水がしばらく小さい水そうにとどまって温度調整ができる装置を作り上げたのです。これで、タンクを使わなくても水入れかえの調節ができるようになりました。最後に、手洗い場所の左のはじっこのじゃぐちを水入れかえ機用に決めて、わかりやすいようにプラカードを下げました。“水そうアップデート用じゃぐち 係の人以外はさわらないこと!”

さてWindows OSでも、「WUfB」といってこれと同じような仕組みでOSアップデートを管理することができます。WSUSのようにタンクとなるサーバーを置くことができない、少し小さい会社でのOSの管理に向いています。個々のパソコン(ここでいう水そうです)にOSのアップデートプログラムを入れる前に、タイマーで少し入れかえを延期することができます。その間に、テスト用のパソコン(ここでいう小さな水そうです)でアプリやシステム(カメです)に影響がないか確かめるテストをすることができます。WUfBは、いくつかのパソコンを1か所でまとめて管理できるようにもなっているので、手間を少なくすませたい会社にうってつけのアップデート方法なのです。

 

さて、皆様のご理解は深まったでしょうか?

 

【執筆:編集Gp 星野 美緒】


https://josysnavi.jp/josys-words079_wsus_windowsserverupdateservices

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