【情シスTips】もう怖くない!サービスとして活用するWindows10(第4回)
JEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)の情報・産業システム部会 PC・タブレット事業委員会傘下のPC・タブレットユーザサポート専門委員会では、継続的にアップデートされるWindows 10とうまく付き合う方法として、「Windows 10のメリットを活用するためのポイント」をまとめ、移行のためのユーザーの準備を促しています。
そもそもWindows10とはどのようなものなのか? 導入すると何が起きるのかなど、これまでのWindows OSとの違いなどを交えて、シリーズで解説します。
「サービスとしてのWindows:Windows as a Service」の仕組みを把握し、情報システム部門やその役割を担っている方々には、Windows10の正しい理解をしていただき、万全の体制でWindows10の導入をしましょう!
第4回は、ソフトウェア的なトラブルシューティングに活用することを想定した「Windows 10の初期化機能についてです。
最終手段としての”初期化”
Windows 10には、OS標準で初期化する方法が何通りか準備されており、その方法によって、初期化後の状態が少しずつ異なります。
企業ユーザーの場合、エンドユーザー自身に、OS環境の初期化作業を依頼するケースは稀であろうと思います。基本的にJEITAの文書は、一般ユーザーを対象としているため、どうしても解消できないようなソフトウェアトラブルの対策として、OS標準の初期化機能を紹介していますが、企業ユーザーの場合は、誤って初期化を行うことが無いよう、正しく理解しておくことが重要です。
また、ソフトウェア的なトラブルを解消するためのアプローチは、ソフトウェア環境をトラブル発生前の条件に戻したり、OS標準の「トラブルシューティング」の機能を試したり、「タスクマネージャー」や「イベントビューアー」などOS標準のツールを使用したりして、解決策を探すのが一般的です。
JEITAの文書でも「Windows 10のインストールメディアから回復環境を起動する方法」や「Windows 10 でインプレースアップグレードを実行する方法」も紹介されているので、状況に応じて参考にすると良いでしょう。
このような一般的なトラブルシューティングを行ってもトラブルを解消できない場合、他に手段が無い場合の”最終手段”として「初期化」が存在しているという理解しておきましょう。
初期化作業の前にやっておく
Windowsの初期化を実施する前には、元の環境に戻せるように、データのバックアップを行い、セットアップやその後の設定手順を整理しておくことが必要です。
企業ユーザーにおいても、定期的にデータをバックアップしたり、最悪、OS環境をリカバリしてから再構築することを想定した場合の手順を整理しておくことも重要となります。
JEITAの文書では、一般ユーザー向けに、具体的なデータのバックアップの内容や、設定手順として整理しておくべき項目などが例示されていますが、企業ユーザーの場合は、それぞれの社内環境に合わせた準備が必要になるかも知れません。情報システム部門としては、汎用的な形で手順書のような形にまとめておくと良いでしょう。
PCを初期状態に戻す
「設定」→「更新とセキュリティ」→「回復」で「このPCを初期状態に戻す」を実行すると、さらに「個人用ファイルを保持する」か「すべて削除する」のどちらかを選択して初期化を実行します。
「個人用ファイルを保持する」を選択した場合は、作成したファイルなどを保持したままOS環境を初期状態に戻すことができますが、ユーザーが追加したアプリケーションなどは削除されます。
「すべて削除する」を選択した場合は、作成したファイルや追加したアプリケーションなども含めてOS環境が初期状態に戻ります。
ただし、ここで言う「初期状態」とは、「出荷時状態」とは異なります。例えば、Windows 10をバージョンアップした後にこの方法で初期化すると、基本的に、バージョンアップ後の状態で初期化されます。
PC・タブレット製品の機能によって、HDD/SSDのリカバリ領域や、リカバリメディア等を使用して、出荷時の状態に初期化した場合と比べると、「結果が異なる」ということになります。何が目的なのかキチンと確認しておく必要があります。
さらに、企業ユーザーの場合は、「SWマスタ」などと呼ばれるOS環境の初期イメージを保有していて、それを使用して初期化する方法も一般的です。
企業ユーザーの場合は、トラブル現象を解消することが目的ではなく、トラブルの再現条件を特定することが目的となるケースもありますので、目的に応じてどの方向で初期化すべきかを検討してください。
新たに開始する
Windows 10 バージョン1703以降であれば、「Windowsセキュリティ(Windows Defenderセキュリティセンター)」→「デバイスのパフォーマンスと正常性」の「新たに開始」で初期化を行うこともできます。
これは、ユーザーが追加したアプリケーションのみでなく、OS標準以外のアプリケーション類(Microsoft Officeなども含む)も削除し、クリーンインストールした場合に近い状態に初期化する機能です。PCメーカーでプレインストールしたアプリケーションやそのインストールモジュールなども削除されます。
この方法も、情報システム部門で実際的に活用するケースは少ないと思いますが、クリーンインストールしたシンプルなOS環境で試したいが、追加のドライバーをインストールするのが面倒、という場合などには、使えると思います。
例えば、「マイクロソフトコミュニティ」にもたくさんの問合せが書き込まれていますが、SW環境が不正になったことによって発生しているトラブルの場合は、大半が初期化かクリーンインストールをすることで解消できると考えられます。
【参考】マイクロソフトコミュニティ
https://answers.microsoft.com/ja-jp/windows/forum/windows_10
トラブルシューティングのポイント!
トラブルシューティングで重要となるのは、まず基本情報の確認です。
情報システム部門の場合は、PCメーカーやPCの購入ルート、アプリケーションのベンダーなどにトラブルの問合せを行うケースがあると思いますが、Windows 10の場合は、「バージョン」「OSビルド」「エディション」「32ビットか64ビットか」「プレインストールベースかもしくはクリーンインストールや初期化をしているか」は最低限の基本情報となることを理解してください。
「バージョン」「OSビルド」「エディション」「32ビットか64ビットか」は、第1回「Windows10のバージョンとアップデート」でも紹介した、「設定」→「システム」→「バージョン情報」で確認することができます。
さらに、同じバージョンであっても、そこに至る経緯が異なるとOSの環境条件も異なりますので、できるだけシンプルなOS環境条件で、トラブルの再現確認を行うことが重要です。
また、OSの条件のみでなく、「BIOSモード」や「セキュアブートの状態」などの確認も重要です。これは、「Windows 管理ツール」の下の「システム情報」で確認することができます。「BIOSモード」には「UEFI(Unified Extensible Firmware Interface)」という新しいモードと「レガシ」というWindows 7などとの互換性を持ったモードがあります。「BIOSモード」が「UEFI」の場合のみ、「セキュアブート」の「有効」「無効」を切り替えることができます。
Windows 10の場合、「BIOSモード」は「UEFI」、「セキュアブート」は「有効」が標準なので、「BIOSモード」が「レガシ」であれば、Windows 7からアップグレードしていることが想定できたり、「BIOSモード」が「UEFI」なのに「セキュアブート」が「無効」であれば、何らかの理由で設定を変更していることが想定できたりする訳です。
トラブル発生の要因を特定したい場合は、できるだけシンプルなOS環境をベースとして、それに対してどんな操作(アプリケーションの追加や設定変更など)を加えるとそのトラブルが発生するようになるかの条件を絞り込むことが重要となります。
第3回「Windows 10環境の構築・メンテナンスの重要機能」で解説したように、Windows 10はクリーンインストールが容易であるため、トラブル発生要因の絞り込みのためにも有効に活用できます。
クリーンインストールしてWindows Updateを実行しただけの環境でもトラブルが発生するのであれば、OSの基本機能と対象機種の組合せに要因がある可能性が高いと言えるでしょう。アプリケーションの追加によって発生する場合は、アプリケーションとの組合せに要因がある可能性が高くなります。
さらに、バージョンを変更してクリーンインストールすることも容易です。いくつかのパターンで試して「バージョン1809でのみ発生する」などの絞り込みができれば、解決のための有用な情報になり得ます。
PCメーカーやアプリケーションメーカーに問合せをする場合でも、OSの基本機能に依存した問題なのか、アプリケーションとの組合せの問題なのか、さらには、特定のWindows 10バージョンでのみ発生する問題なのか等、ある程度の条件の明示ができれば、その後の調査もかなりスムースになるでしょう。何の絞り込み確認もせず、「こんなエラーが出ます」と問合せる場合とでは、雲泥の差が生じる訳です。
トラブルシューティングのために、このようなアプローチ方法を習得しておくことは、情報システム部門にとって、従来のWindowsに比べてより重要になっていくと考えられます。
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本記事はJEITA様の協力により、「Windows 10のメリットを活用するためのポイント (Ver.2.0)」を基に作成しております。
「PC・タブレット事業委員会」とは
NECパーソナルコンピュータ、エプソンダイレクト、Dynabook、パナソニック、富士通クライアントコンピューティングの5社で構成され、PCおよびタブレット市場等の持続的発展のため、業界共通の諸課題対応を図るとともに、業界意見を取りまとめて関係省庁・団体等に具申し、政府および関連業界の施策への反映に努めている。
https://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=1&ca2=528
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【執筆:編集Gp ハラダケンジ】