【レポート】PCNW『第一回クライアント管理勉強会(東京)』を開催!!
- 2018/9/27
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PCNW(PC・ネットワークの管理・活用を考える会)が、東京会場における今期最初の勉強会「第一回クライアント管理勉強会」が開催された。
PCNWは、日ごろからシステム管理に悩みを抱えている情シスを対象とした「情報収集・意見交換」の集いであり、「企業のIT部門の人材を成長させる」場である。その活動のひとつとして、「情シスが日々の業務で抱えるさまざまな悩みと課題を共有し、効果の見える解決策やヒントを模索する」勉強会が、「クライアント管理勉強会」だ。テーマは回ごとに異なり、過去には「『攻め』のIT戦略」や「情報セキュリティリテラシーの向上」、「Windows10導入事例」などがある。
そして、今期第一回目となるテーマが「情シス不要論」についてだ。「徹底討論! 情シス必要・不要論〜これまでの情シスと明日からの情シス〜」と題し、熱を帯びたディスカッションと講演が行われた。
この記事の目次
【本音】情シスは今、なにを思う?
副座長を務める吉田壮臣氏の司会進行のもと、はじめに行われたのは、グループディスカッション。情シスとしての各自の思いと、現在の業務への考察を発表するものであり、参加した19名の情シスが4チームに分かれ、ディスカッションを行なった。
<情報システム部門としての思い>
・「事業部門と柔軟にコミュニケーションできる体制を築き、明確なニーズを把握したい。そうして、社員一人ひとりがスムーズに業務にあたれる環境づくりに貢献していきたい。」
・「会社の規模に応じて情シスの業務は縦割りになる傾向がある。私事となるが、社内の情報システムのすべてを担当したくて、現在の会社に入社した。」
・「経営に近いところで利益に貢献する業務を担当していきたい。」
<アウトソーシング含む業務のあり方について>
・「情シスが自社のIT戦略に資するためには、時間の創出が必要である。そのために、キッティングやヘルプデスクなど、一般的な知識で対応できるものはアウトソーシングした方がよい。」
・「アウトソースについて。社員の出入りが激しい場合、どの業務を社内で担当すべきか判断が難しい。個別環境を鑑みた議論が必要である。」
・「リソースがあれば情報システムにかかる業務はすべて内製で行いたい。」
・「業務を精査し、現場をできるだけ省力化していくべき。」
発表されたコメントで印象的なのは、「他部門とのコミュニケーションの必要性や会社への貢献」を、はっきりと意識していることだ。また、キッティングやヘルプデスクをアウトソーシングしたいという声も複数見られたことも印象的だった。
【講演】「情シス“必要論”」の山下光洋氏が登壇!
続いて、第二部は山下光洋氏による講演が行われた。同氏はシステムインテグレーターでのBPソリューション担当、いくつかの会社の情シスを経て、現在IT人材育成事業を行うトレノケート株式会社にてAAI(AWS認定インストラクター)としてご活躍されている。
山下氏が注目を集めるのは、これまでの情シスでの実績はもちろん、2016年開催のAWSのコミュニティ「JAWS-UG」の勉強会で、自身の経験をまとめて発表した「〜情シス不要論にモノ申す〜 情シス必要論 AWSだからこそ出来る情シス革命」にある。勉強会では、上記内容と、山下氏が現在思うことをテーマに講演が行われた。
さて、さっそく不要論とは? から紹介したいところだが、時系列よりも、まず先に終盤で語られたコメントを紹介しておきたい。山下氏はこう語っている。
「情シスは積極的に内製開発に取り組むべきだと感じる。なぜなら、企業知識に長けていて、信頼があって、運用を知り尽くしている。理念や事業への思いも強い。こういった方々がつくったものが、他社のサービスに負けるはずがない。」
では、そこに至るまでの経緯を見ていこう。
なぜ、情シスは不要といわれてきたのか−−
情シス不要論は、以下が主な要因となり生まれたものと山下氏は解説する。
・「自社ビジネスに貢献しない部門である」
事業や現場で起こっていることを知ろうとせず、自分たちの運用業務に固執している。たとえば、事業部門が業務改善のためにシステムやツールの導入を提案すると、“そこまで手が回らない”、または“セキュリティやガバナンスを盾”に断る。
・「ドキュメントと運用が伴っていない」
日々の運用に忙殺されてか、運用業務の改善や運用のフロー化に取り組んでいない。それゆえ、運用がブラックボックス化してしまい、いつも運用から目が話せない状態に陥る。結果、経営層は、情シスが「なんのためになにを」しているのかわからない。
・「システムの中途半端な丸投げ」
丸投げが常態化している。また、「ベンダーとの取次は情シスを介すこと」など、中途半端な丸投げもあり、IT活用のスピードを鈍化させる要因になっている。
・「自社のITだけに詳しく、世の中の動向を読めていない」
運用に関するマニアックな技術には詳しい一方、クラウドに代表される世の中のニーズには疎い。それゆえ、事業部門から利用を打診されても、“わからないから”と断ってしまう。
・「自分の業務に依存する」
ハードウェアの管理・運用が不要など、クラウド化によりアウトソーシングされる部分は多々ある。そこから、自分の現在の業務が失われてしまうのではと危惧している。それゆえ、情シス、事業部門で対立が生じる。
情シスの存在を問うのではなく、「必要とされる」情シスになるべき−−
続けて、システムインテグレーター時代の情シスとのやり取り、また自らが情シスとなり積んだ研鑽から、山下氏はこう話す。
「情報システム部門が必要か不要かと議論する前に、『必要とされる』部門になるべきだと思います。昨今『第2のIT部門』または『デジタルイノベーション部門』の設立に注目が集まっています。これらは総じて、ITを活用して会社に変革をもたらす部門ですが、少し視点を変えれば、それらの役目は情シスが適任であると考えています。なぜなら、情シスは会社のいち部門としてITを担当してきた部隊であり、会社の情報システム、データをすでに把握している。他部門との面識もあり信頼も築きやすい。だからこそ、スムーズにIT戦略部隊に進化できる可能性がある。」
「必要とされる」情シスになるためには、「まず受け入れる」こと−−
そして、上記をめざすための方法論として以下を挙げた。
・「受け入れ、考える」
事業部の打診を無下に断るのではなく一旦すべて受け入れる。そうして、それを実現するためには何が必要かを考える。
・「情シスの“見せる化”」
事業部門に、または経営層にも自分たちが「なにをしているのか」を知ってもらえる工夫をする。コミュニケーションを活性化させていくことで、情シスへの興味、信頼が生まれる。重要なのは「頼られる環境」をつくること。
・「徹底的に自社の事業を知ること」
クラウド時代にはアウトソースの活用が基本になる、しかし他人任せにするのではなく、SIerよりも徹底的に自社の事業に詳しくなる。
・「スピーディな提案」
事業部と情シスはベクトルが異なるため、ニーズの解釈にも違いが生じやすい。そのため、言葉でビジョンを共有していくよりも、素早くプロトタイプを提示して検討してもらう。
・「コア業務のために手を空けておく」
運用で手一杯になっている情シスが、IT戦略まで担うことは難しい。それゆえ、運用業務で可能な部分は自動化やアウトソース化し、手を空けておく。
そうして、山下氏はAWSを活用した数々の事例を紹介。冒頭で記載したコメント「情シスは積極的に内製開発に〜」に至った。
情シスにはIT戦略部隊となるべき素養がある。そして、意識を変え業務と向き合えれば、必要とされる情シスになれる。それがありありと感じられた力強い講演だった。
【総括】今後、情シスとしてどうしていきたいか?
講演が終わり、クライアント管理勉強会はラストを迎えた。第1部の「現状の確認」、第2部の「具体的な進化への方法論」を受け、「今後、情シスとしてどうすべきだと考えるか」をテーマとしたグループディスカッションが行われた。
・「今まで開発は担当せず、『他社との差別化』意識し業務にあたったことはなかった。だが、今後はそのような視点を持って臨んでいきたい。」
・「 “見せる化”という内容に共感を覚えた。『なにをやっているのか』を認知してもらうこと、つまりコミュニケーションの活性化は今後取り組むべき大きな課題だと感じる。」
・「運用業務然り、今まで築いてきた情シスの文化を変えていく必要がある。また、そのためにスキルの“棚卸し”は必須だと感じる。」
・「『顧客が持っている問題を解決すること』、これはマーケティングの基礎からの引用だが、これからの情シスにはこのような“血の通った業務に取り組む意識”が求められると感じた。我々もそのような態度で臨みたい。」
各グループからはこのようなコメントが出揃った。総じて、「自らなにかを行う」という前向きな内容である。
グループディスカッションが終わり、最後に山下氏への質問タイムが設けられ、多数のメンバーから具体的な質問が数々寄せられた。詳細は割愛するが、それらの一つひとつにも「現状を変えていく」という強い意識が感じられた。
そうして、盛大な拍手とともに、幕を閉じた第一回クライアント勉強会。聞くところによれば、ひとり情シスの参加も複数名だったという。情シスはその環境から悩みを抱え込みやすいと聞く。しかし、この勉強会は知識・経験を持ち寄り、皆で課題解決の知恵を得ていく場である。ぜひ、悩みの解決やあらたなステップを求める情シスに参加していただきたい集まりである。
【執筆:編集Gp 坂本 嶺】
第一回ITトレンド勉強会 2018年10月18日(木)
RPAに情シスはどう関わるべき?RPA導入前の業務プロセス改善
http://www.pcnw.gr.jp/pcnw2018/sg/ITTrend_20181018.html