テスト駆動開発(Test Driven Development)とは

  • 2024/7/2
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テスト駆動開発(TDD)とは

こんにちは!今回は「テスト駆動開発(Test Driven Development)」についてまとめてみました。以前こちらの記事をまとめていたときに「テスト駆動開発」という言葉を知り、調べてみました。

TDDはソフトウェア開発の手法のひとつです。この記事では、TDDが何であるか、そのメリットとデメリットなどについて、わかりやすく説明していきます。

1.テスト駆動開発(以下TDD)とは?

テスト駆動開発(Test Driven Development、以下TDD)は、ソフトウェア開発手法のひとつで、テストを開発の中心に据えたテストファーストなプログラムの開発手法です。従来の開発手法とは異なり、コードを書く前にまずテストを書き、そのテストに合格するようにコードの実装とリファクタリングを進めていく手法です。

いわゆる一般的な結合テスト、システムテストの手法ではなく、あくまでも開発手法、開発アプローチのひとつです。

2.TDDの背景

従来の開発手法には、ウォーターフォールモデルやV字モデルがあります。これらのモデルは、ソフトウェア開発を段階的に進める手法です。

ウォーターフォールモデルは、要件定義、設計、実装、テスト、リリースの各段階を順番に進める方法です。このモデルでは、各ステップが完了するまで次のステップに進まないため、プロジェクトの進行がわかりやすい反面、後戻りが難しくなります。例えば、実装段階で要件の誤りが見つかった場合、その修正には多大なコストと時間がかかることがあります。

V字モデルは、ウォーターフォールモデルを拡張したもので、各開発段階に対応するテスト段階が存在します。例えば、要件定義に対応する受け入れテスト、設計に対応するシステムテストといった具合です。このモデルでは、各ステージでの検証が強化されるため、品質が保証されやすくなりますが、やはり後戻りにはコストがかかります。

TDDとアジャイル開発の関係

TDDはアジャイル開発と密接な関係があります。アジャイル開発は、柔軟性と迅速な対応を重視したソフトウェア開発手法であり、短期間での反復的な開発サイクルを特徴とします。TDDはこの反復的な開発サイクルに非常に適しており、以下のような点でアジャイル開発をサポートします。

・迅速なフィードバック
アジャイル開発では、頻繁にリリースを行い、ユーザーからのフィードバックを迅速に取り入れることが重要です。TDDは短いサイクルでテストと実装を繰り返すため、コードの品質を保ちながら迅速なリリースが可能になります。

・適応的な設計
アジャイル開発では、要求の変更に柔軟に対応することが求められます。TDDでは、コードが常にテストで保護されているため、リファクタリングや機能の追加が容易に行え、適応的な設計が可能となります。

・チームの協力
アジャイル開発はチームの協力とコミュニケーションを重視します。TDDのテストコードは、仕様書のような役割を果たし、チームメンバー全員がシステムの動作を理解しやすくなります。

TDDはアジャイル開発の原則を具体的な開発手法に落とし込むものであり、アジャイル開発の効果的な実践に大きく貢献します。

3.TDDのプロセス

TDDの基本的なプロセスは次の3つのステップで構成されています。

①テストを書く

最初に、これから実装しようとしている機能に対するテストを作成します。このテストは、まだ実装されていない機能に対して「失敗する」ことが前提です。例えば、新しい機能が「2つの数字を加算する」場合、まずその機能をテストするコードを書きます。この段階で、当然テストは失敗します。

def test_addition():
    assert add(2, 3) == 5

②コードを書く

次に、このテストが通るように最小限のコードを書きます。この段階では、コードの品質や最適化よりも、テストが通ることが最優先です。上記のテストが通るように、単純な加算機能を実装します。

def add(a, b):
    return a + b

③リファクタリング

コードが動作することを確認したら、コードをリファクタリングします。この段階では、コードの可読性や保守性を向上させるための改善を行います。

def add(a, b):
    # コメントを追加してコードの意図を明確にする
    return a + b

4.TDDのメリット

TDDには多くの利点があります。以下にその主なメリットを挙げます。

・コードの品質向上
TDDを採用することで、コードの品質が向上します。テストを書いてからコードを書くことで、常にテストが通るコードを維持することができます。また、リファクタリングの段階でコードを整理するため、読みやすく保守しやすいコードが自然と書かれるようになります。

・バグの早期発見
テストを先に書くことで、バグを早期に発見することができます。実装中にテストが失敗する場合、その原因をすぐに特定できるため、問題の解決が迅速に行えます。

・ 開発スピードの向上
一見逆説的ですが、TDDは開発スピードの向上にも寄与します。バグの早期発見と修正が容易になるため、後々のデバッグに費やす時間が減ります。また、テストが自動化されるため、手動でのテスト作業が減り、効率的に開発が進められます。

・設計の改善
TDDでは、小さな単位でコードを書いてテストするため、自然とモジュール化された設計が促進されます。これにより、コードの再利用性が高まり、変更に強いシステムを構築することができます。

5.TDDのデメリット

一方で、TDDにもいくつかのデメリットがあります。以下にその主なものを挙げます。

・初期の学習コスト
TDDを初めて導入する際には、学習コストがかかります。テストを書くことに慣れていない開発者にとっては、最初のうちは時間がかかるかもしれません。しかし、慣れることでその効果を実感できるようになります。

・ テストの維持コスト
TDDでは、多くのテストコードが生成されます。システムが変更されるたびに、これらのテストコードも更新する必要があります。テストの維持コストが開発全体のコストに影響を与えることがあります。

・初期開発スピードの低下
TDDを導入すると、最初は開発スピードが遅く感じるかもしれません。テストを書く時間が追加されるためです。しかし、長期的には、前述の通り開発スピードが向上する傾向にあります。

・ 過剰なテストのリスク
すべてのコードに対してテストを書くことが推奨されますが、過剰にテストを書くことで開発が複雑化することがあります。特に、頻繁に変更が加わる部分に対しては、テストが過剰になるリスクがあります。

6.「TDDは死んだ。テスティングよ栄えよ。」by DHH

TDDの議論を語る上で、デビッド・ハイネマイヤー・ハンソン(David Heinemeier Hansson、通称DHH)による「TDDは死んだ。テスティングよ栄えよ。」という発言に触れないわけにはいきません。DHHはRuby on Railsの生みの親として知られ、ソフトウェア開発のコミュニティにおいて影響力のある人物です。

DHHの主張

DHHは、TDDが開発者に対して過度な負担を強いると主張しています。彼の意見では、TDDの実践が過度に形式的であり、実際の開発プロセスにおいて非効率であることが多いとされています。具体的には、以下のような点が問題視されています。

・テスト駆動による設計の硬直化
TDDでは、最初にテストを書いてからコードを書くため、テストがコードの設計を制約することがあります。これにより、設計が硬直化し、柔軟な変更が難しくなることがあります。

・テストのメンテナンスコストの増大
TDDを実践すると、大量のテストコードが生成されます。これらのテストコードはシステムが変更されるたびにメンテナンスが必要となり、そのコストが無視できないほど大きくなることがあります。

・開発者のクリエイティビティの阻害
TDDの形式に従うことが強制されると、開発者の創造性が制約され、自由な発想が抑制されることがあります。DHHは、もっと柔軟で創造的なアプローチが必要であると主張しています。

テスト駆動開発 vs テスト開発

DHHの主張に対する反論も多く存在しますが、彼の意見はTDDの一部の問題点を明確に指摘しています。DHHはTDDを完全に否定するわけではなく、むしろ「テストは重要であるが、TDDの形式主義にとらわれるべきではない」という立場を取っていると思います。彼は、必要に応じてテストを導入し、適切なタイミングで適切なテストを実行することを推奨しています。

7.まとめ

テスト駆動開発(TDD)は、ソフトウェア開発において信頼性の高いコードを作成するための強力な手法です。その基本的なプロセスは、テストを書く、コードを書く、リファクタリングするという3つのステップで構成され、短いサイクルでこれを繰り返します。TDDには「システム・機能がどのように動いているか・動くべきかという」仕様や目的がテストコード内で表現されているという大きな利点がありますが、初期の学習コストやテストの維持コストなどのとにかく工数がかかるというデメリットも存在します。

「TDDは死んだ。テスティングよ栄えよ。」というDHHの主張は、テストそのものの重要性自体を否定するものではないと思います。

個人的には仕様や機能のあるべきふるまいを理解した上でコードを書くことは非常に重要だと思っています。TDDという手法でなくても、仕様を理解した上で実装するという目的のために、「開発する前に、テストコードを書く・テスト設計書を書く」などを取り入れることはできるのではないでしょうか。

TDDはあくまでもひとつの開発手法であるため、TDDの導入に際しては、そのメリットとデメリットを理解し、適切に活用することが重要だと思います。

参考サイト:
https://service.shiftinc.jp/column/4654/
https://zenn.dev/sterashima78/articles/2e5df396a549fb
https://yattom.hatenablog.com/entry/20140424/p1

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